セキュリティ企業のマカフィーは、「AI音声詐欺」についての情報を公開しました。AI音声詐欺とは、音声データを元に特定の人物の声を学習させ、その知り合いに電話をかけてだます手口です。例えば、高齢者を標的としたオレオレ詐欺で、子どもや孫の声でお願いされてしまえば、だまされてしまう人も出てくることでしょう。
マカフィーがグローバルで実施したAI音声詐欺に関する調査によると、10人に1人がAI音声詐欺のメッセージを受け取り、そのうちの77%はお金を失ったことが分かりました。被害金額は報告のうち7%は5000ドルから15000ドルと大金を奪われています。
詐欺師はどうやって対象の音声を入手しているのでしょうか。マカフィーはグローバルの事例だけでなく、国ごとに調査結果を出しています。以下、日本に関する分析結果を紹介します。
日本でもオンライン音声通信が増加傾向にあり、成人の28%が週に1回以上、26%は週に10回以上、音声データを共有しているそうです。たしかに筆者も、週に5~6回はWeb会議に参加しています。同調査によると、詐欺師がAI音声をクローンするのに必要なデータはたった3秒とのこと。これだけで、オリジナルの音声と85%一致するクローンを作成できたそうです。テストをした成人の82%がクローン化された音声を本物と区別できる自信がないと回答しています。
回答者の36%は、お金を必要とする友人や恋人からのボイスメールやボイスメモに返信すると答えており、特に配偶者からの場合は45%が返信すると回答しています。
詐欺師は相手をだます際、「交通事故にあった」(43%)、「強盗にあった」(36%)、「携帯や財布をなくした」(33%)、「海外旅行中に助けが必要」(33%)などと説明することが多いようです。では、このAI音声詐欺からどうしたら身を守ることができるのでしょうか。レポートでは4つの対策について紹介されています。
1つ目が「合言葉」です。子供や家族、親しい友人たち全員で合言葉を作り、共有しておきます。特に、シニアの方は家族が電話、メール、メッセージで助けを求めてきたら、必ず合言葉を聞くようにしましょう。
2つ目が「発信元を疑う」です。登録している電話番号からかかってくるのであれば信頼できますが、知らない番号の場合は疑ってかかってください。スマホが壊れた、盗まれた、今は違うところにいるなど、いろいろな言い分を述べてきますが、まずは落ち着いて、「今手が離せないから数分後にまた連絡して」と電話を切りましょう。そして、本人にこちらから電話をしたり、家族に相談するなどして情報を確認することが重要です。
3つ目が「音声データのシェアは慎重に」です。SNSで音声(動画)を公開する際、つながっている人が多いほど、音声を共有するリスクが高まります。
4つ目が、「個人情報保護サービス」です。個人情報がダークウェブに流れた場合に通知するサービスなどを利用し、サイバー犯罪者によるなりすましを防ぐために活用するものです。
すでに無料で音声を学習させるツールは公開されています。AI音声詐欺はまずは英語圏から広まり、日本には少し遅れて上陸すると考えられます。その前に、ぜひ事例情報を共有してください。一般的なオレオレ詐欺の手口は読者のみなさんも知っていることと思います。そこに加えて、本人の声に偽装する手口が広がっている、ということをシニアのご両親などに伝えてください。子どもの声だとしても本人であるとは限らない、ということを把握するだけで警戒レベルが下がるのを回避できるかもしれません。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
「被害事例に学ぶ、高齢者のためのデジタルリテラシー」の注目記事
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと