「今日のパリの天気は雨ときどきプラスチック汚染」、初のプラスチック予報でパリには1日50kgのマイクロプラスチックが降下するとの予測

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オーストラリアの慈善団体であるミンデルー財団が初の「プラスチック汚染予報」を発表し、フランスの首都・パリにはプラスチック粒子が24時間で40~48kgも降り注ぐと警告しました。

The Plastic Forecast | No Plastic Waste | The Minderoo Foundation
https://www.minderoo.org/no-plastic-waste/the-plastic-forecast/

1st Plastics Pollution Weather Forecast Predicts 88 Pounds of Microplastic Over Paris : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/1st-plastics-pollution-weather-forecast-predicts-88-pounds-of-microplastic-over-paris

2023年5月29日から6月2日にかけてパリで開催される「プラスチック汚染対策に関する条約策定に向けた政府間交渉委員会第2回会合(INC-2)」では、世界中の政府の代表者が集まって、国際的なプラスチック汚染対策やそのための条約について協議します。この条約の重要性をアピールする取り組みとして、ミンデルー財団が特設サイトを開設して「プラスチック汚染予報」を発表しました。

Plastic Forecast
https://plasticforecast.com/?dl=en


予測によると、パリには24時間で40~48kgのプラスチック粒子が降下するとのこと。さらに、天気が大雨の場合における「プラスチック降下量」は、最大で10倍に達すると推定されています。

ミンデルー財団のマーカス・ゴーバー氏は「この事実は交渉担当者のやる気を高めるはずです。プラスチック粒子は環境中で細かく分解され、最終的に有毒物質のカクテルが私たちの体に到達し、健康に想像を絶するダメージを与えます」と話しました。

プラスチックが環境や人間の健康に与える影響について懸念は、プラスチックに関する研究が増えるに伴って急激に高まりつつあります。直径5ミリ以下のプラスチックは、北極付近の氷や海底に住む深海魚の体内からも見つかっており、国連は「プラスチックの破片が毎年100万羽の海鳥と10万頭の海洋哺乳類の命を奪っている」との推計を発表しました。

プラスチックの脅威にさらされているのは、人間も同じです。過去の研究により、人間の血液や母乳、胎盤からもマイクロプラスチックが検出されました。マイクロプラスチックが人体に与える影響についてはまだ確認できていませんが、動物実験ではマイクロプラスチックに含まれる化学物質が、がんや生殖器の問題、DNAの変異のリスクを高めることが示されています。

体内のマイクロプラスチックがおなかの中の胎児に達する可能性が浮上 – GIGAZINE


ミンデルー財団の研究者で小児科医でもあるクリストス・シンメオニデス氏は、「最も心配なのは10ナノメートルから1マイクロメートルのプラスチックでしょう。これらは、血液脳関門を含めた生体膜を通過して組織に侵入する可能性が最も高い物質です」と話します。

今回のパリのプラスチック汚染予報は、50マイクロメートルと比較的大きいサイズの粒子のみを対象としたものです。2015年からパリで実施されている、年間を通して複数の地点からサンプルを採集してふるいにかける研究により、パリの2500平方キロメートルの範囲に落ちているプラスチック粒子のほとんどは衣類由来と推定されるナイロンとポリエステルだということが分かりました。他には、車がブレーキをかけたときにタイヤから剥落する破片も見つかっています。こうしたプラスチック粒子を合わせると、年間で最大10トンのマイクロプラスチック繊維がパリに降るだろうと、研究者らは見積もっています。


こうしたプラスチックへの懸念に対応するため、世界175カ国が参加した2022年の第1回会合では、2024年末までにプラチック汚染を抑制するための法的拘束力のある条約を締結することが決まりました。今回パリで開かれた第2回会合では、主に使い捨てプラスチック製品の世界的な禁止や、汚染者負担制度、新しく生産される「バージンプラスチック」に対する課税などが議論されます。

ミンデルー財団は声明の中で、「プラスチックは国境を気にせず、簡単に分解されることもありません。だからこそ、この問題に取り組むために193の国連加盟国が協力する必要があります。協議中のプラスチック汚染対策条約は、プラスチック汚染の害のない未来を創造するため、そして人類と私たちの世界がこのグローバルな問題への取り組みを調和させるための、またとない機会を提供するものです」と述べました。

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