まったく新しいBing。
ChatGPTを筆頭にAI旋風が止まりませんが、 マイクロソフトの対話型AI「Bing AI」のことを忘れてはいけません。ChatGPTと同じくらいの賢さを持ちながら、検索エンジンBingの技術も持ち合わせたヤバい奴。Bing AIの何がヤバいのか、ChatGPTとどう違うのかをまとめました。
Bing AIって何?
Bingはマイクロソフトが提供する検索エンジン。このBingに新しく搭載された「AIとのチャット機能」がBing AIです。AIと会話ができるだけでなく、ウェブ上にある最新情報を人間の代わりにAIが検索しながら質問に答えてくれるのが特徴です。
例えば、「20万円台のゲーミングPCのおすすめ」を聞くと、最新のパーツの値段や在庫状況からおすすめを提案してもらうことができます。
Bing AIはどうやって使うの?(5月29日更新)
Bing AIはマイクロソフトが提供するアプリのほか、グーグルが提供するPC版Chromeブラウザでも使うことができます。
● スマホアプリ「Microsoft Bing 検索」(iOS、Android)
● パソコン用ブラウザ「Edge」(Windows、macOS)
●パソコン用ブラウザ「Chrome」(Windows、macOS)
※5月29日時点で、macOS版SafariやiOS版Safari、iOS版Chromeなどのブラウザでは使用することができません。
また、利用にはMicrosoftアカウントでのログインが必要です。アカウントの新規作成はこちらから。
iOSのBingアプリを例に使い方を見ていきましょう。
アプリを開いて、中央真ん中のアイコンをタップします。あとはチャット画面に質問を入力するだけです。ChatGPTと同じようにAIによる回答がテキストで返ってきます。
回答には情報ソースとなるリンクが含まれています。Bing AIはウェブの最新の情報を収集して答えてくれます。リンクに飛ぶと、その情報の出典元のウェブサイトにアクセスすることができるんです。
また、Bing AIは会話のスタイルを「独創性」「バランス」「厳密」の3種類から選ぶことができます。
それぞれ回答の雰囲気が少しずつ違います。「独創性」は関連しそうな情報を気を利かせて補足してくれているのに対して、「厳密」は聞いた情報だけをコンパクトに答えてくれる感じ。「バランス」はその中間ですね。
また、5月4日のアップデートで質問に対して画像や動画を使って情報を伝えてくれるようになりました。
Bing AIで画像を生成する方法は?(4月28日更新)
Bing AIではチャットに送信したテキストから画像を生成できる「Bing Image Creator」が使用できます。4月28日に日本語でも使えるようになりました。
Bing Image CreatorのページにアクセスしてMicrosoftアカウントでログイン、テキスト欄に生成したい画像の内容を指示します。数十秒でいくつかの画像が自動生成されます。
またMicrosoftのブラウザ「Edge」にも画像生成の機能が埋め込まれました。
EdgeのサイドバーのアイコンをクリックするとBing Image Creatorの画面がポップアップし、そこで直接画像を作ることができます。
サイドバーにアイコンがない場合は、
・Edgeのサイドバーにある「+」ボタンをクリック
・「Image Creator」のスイッチをオンに切り替える
上記の方法で追加できます。
Bing AIは誰でも使えるの?
Bing AIはMicrosoftアカウントがあれば誰でも使用できます。Bing AIは5月4日に限定プレビューからオープンプレビューへと移行し、順番待ちがなくなりました。
Bing AIは無料?
無料で利用できます。今のところ課金プランはありません。
Bing AIは日本語で使えるの?
日本語でも利用が可能です。というか、実はBing AIは日本のユーザーがとても多いんです。
日本マイクロソフトが開催したメディア向け説明会での発表によると、プレビュー時の登録者100万人のうち、日本の登録者は10万人、一人当たりの検索数は日本がトップだったとのことです。
Bing AIの画像生成ツール「Bing Image Creator」も日本語に対応しています。
Bing AIの仕組みは?
AIとのチャットといえばChatGPTが有名ですが、ChatGPTを提供しているOpenAI社とマイクロソフトはパートナー関係にあります。
そのためBing AIにはChatGPTと同じGPT-4という大規模言語モデル(LLM)が使われています。GPT-4は大量のテキストデータに加えて、画像や音楽や動画など様々な種類のデータを学習済み。これによって人間と同じ言語を使った会話や文章の編集、データ分析や推論、プログラム生成に加えて、画像や動画や音楽の生成も可能だと言われています。
Bing AIはこのGPT-4とBingの検索技術をかけ合わせることで、チャットの回答時にウェブの情報を検索し、最新の情報を踏まえた回答をすることが可能です。マイクロソフトはこの技術を「Microsoft Prometheus(マイクロソフトプロメテウス)モデル」と呼んでいます。
Bing AIは「ChatGPTとBing検索のいいとこ取りサービス」とも言えますね。
Bing AIはChatGPTとどう違うの?(5月29日更新)
同じGPT-4を採用しているChatGPTとBing AIですが、どんな時にどちらを使えばいいのでしょうか? それぞれの強みと弱みをまとめました。
Bing AI
強み
- ● GPT-4が無料で使える
- ● テキストから画像を生成できる(4月28日更新)
- ●無料で画像や動画を使って答えてくれる(5月8日更新)
- ● Edgeブラウザとの連携機能が豊富
弱み
- ● 1つのトピックに対して、20回までしか回答できない制限がある
- ●有料版ChatGPTのような「プラグイン」機能はない
ChatGPT
強み
- ●有料プランなら「食べログ」などの外部サービスと連携できる「プラグイン」に対応
- ● 回答の回数に制限はなく、長時間同じトピックでやり取りをすることが可能
弱み
- ● 有料プラン「ChatGPT Plus(月額約2,600円)」に課金しないとGPT-4が使えない(無料プランはGPT-3.5-turboまで)
- ●画像や動画を使って回答する機能はまだない
Bing AIは検索エンジンBingの進化系というだけあって、ブラウザ上での検索や最新情報の収集に特化していました。しかし、ChatGPTもBing検索によるウェブブラウジング機能が実装され、無料版ユーザーにも提供を始めました。これにより、単なるチャットAIアプリとしてのBingの優位性は薄まっています。今後、ChatGPTとBing AIは違う方向性で進化していくのかもしれません。
まず、MicrosoftはBing AIをWindows 11に組み込むことを発表しています。オフィス製品にAIを搭載した「Microsoft 365 Copilot」も発表されていて、普段使いのパソコンやアプリと親和性の高いAIになっていくことが予想されます。
いっぽうChatGPTは「プラグイン機能」で外部サービスとの連携も可能になるなど、ChatGPT自体がプラットフォームとして進化をはじめています。
GPT-4が無料で使えるのはBing AIだけ
ChatGPTでは毎月約2,700円の課金が必要なGPT-4ですが、Bing AIなら無料で使えます。いっぽうChatGPTは課金さえしてしまえば、GPT-4との会話の数に制限がないことから、長時間AIを使って取り組みたいことがある場合はChatGPTを使うのがベターでしょう。
また、5月4日のBing AIのリリースでこれから追加される機能が明らかになりました。ChatGPTに実装が予告されているマルチモーダル機能については、Bing AIにも実装されることが発表されています。また、ChatGPTのプラグイン機能のようにサードパーティのサービスと連携する「Bing Actions」が搭載予定で、Bingがプラットフォームとして機能するようになります。
Bing AIにこれから一般公開される機能
- ●サードパーティのサービスがAIに情報を提供し、連携するBing Actions機能
- ●画像や動画など、テキスト以外のファイル入力を認識する機能
ChatGPTにこれから一般公開される機能
Bing AIは間違えないの?
そんなことはありません。
Bing AIはウェブの情報を回答に織り込む性質上、質問によっては検索で上位表示されるウェブページの内容を正として回答する場合があります。しかしインターネット上に存在する情報はすべてが正しいわけではありませんし、検索で一番上にくるページの情報が必ずしもユーザーにとって有益だとは限りません。
AIが検索してくれるぶん自分の作業量は減りますが、現時点ではBing AIが回答する内容を精査したり、自分が求める情報に近づくように質問を工夫する能力は必要だと言えるでしょう。
Bing AIの問題点は?
基本的にはChatGPTと同じ仕組みで動いていることから、ChatGPTと同じ懸念が挙げられます。
また、Bing AIは検索という行為を過去のものにしてしまう可能性がありますが、AIの情報ソースとなるメディアやWebサイトが還元を受けられる仕組みは今のところありません。(僕たちどうなっちゃうんでしょうか?)
Bing AIはこれからどうなる?(5月29日更新)
Bing AIはすでにチャットの枠を飛び越えて、Edgeブラウザ上でメールの作成を手伝ったり、PDFやWebサイトを要約したりすることができます。マイクロソフトはBing AIを単なる検索AIではなく、あらゆるアプリやサービスのCopilot(=副操縦士)として採用しようとしています。
マイクロソフトは3月17日、ワードやエクセルなどお馴染みのお仕事アプリにGPT-4を組み込んだ「Microsoft 365 Copilot」を発表しました。これにより、ふだん使うマイクロソフト製品にもBingのようなチャット画面が埋め込まれ、スライド作成やデータ分析を手伝ってくれるようになります。
また、開発者向けには、GPT-4がプログラム開発を手伝ってくれる「GitHub Copilot X」もリリースされています。マイクロソフトのクラウドサービス「Azure(アジュール)」では、GPTの技術を自分のアプリに組み込むためのAPIも提供されています。
5月23日には、Windows 11にBing AIを統合し、「Windows Copilot」として提供されることが発表されました。タスクバーからBing AIが使えるだけでなく、ユーザーの設定変更、アプリ起動、音楽プレイリストの選択などが可能です。Microsoft 365 Copilotに加入していれば、さらに連携が密になることが予想されます。
2023年4月11日 更新: 画像生成機能「Bing Image Creator」について追記しました
2023年4月28日 更新: 画像生成機能「Bing Image Creator」の日本語対応にあたり内容を修正しました。
2023年5月8日 更新: 5月4日のアップデートで実装・予告された機能について追記しました。
2023年5月29日 更新: ChatGPTのブラウジング機能実装に伴い、内容を修正しました。