「今度大阪に来るときに取材してくれへん? 急でごめんやけど宜しく!」と元芸人の村越周司さんから連絡が来た。村越さんといえばケンコバの元相方で、ピン芸人として活動していたのだが、2022年夏に芸人を引退。「良きギャガー人生でした」と活動を振り返っていた。
引退直後にYouTubeチャンネルを開設。しかしその内容というのが「松ちゃんは終わっている」「さんまは引退した方がいい」など信じられないほどネガティブかつ過激だったため、正直あまり取材はしたくなかったが……やはり覚悟を決めて会ってみることにした。
・ダークサイドに堕ちた男
ジャニーズ事務所の元所属タレントによる告発が世間を賑わせている中、私は元芸人の告白を聞くために梅田の串カツ屋を訪問。数年ぶりに会う村越さんは元気そうだ。ただ、リラックスをしているからなのか、それとも悪口を言い過ぎたからなのか、完全に目は死んでいた。
「家族に無視されてんねん」
どうやらYouTubeチャンネル『村越周司のお笑いネタディスりチャンネル』の評判が良くないらしい。経緯を聞くと、50歳になって本当にやりたいことをやろうと考え抜いた末に「お笑いディスり家」になることを決意したそうだ。発想が無敵過ぎる。
キングオブコント、M-1グランプリ、その他ネタ番組などの中から「おもんない」と思うネタを忖度なしでディスりまくるという内容……結果的に、芸人時代に仲の良かった会社社長や、頻繁にLINEのやり取りをしていた芸人仲間も離れてしまったという。
最近はAmazonプライム『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』が全世界に配信されていることに対して「日本の恥」と言い放ったことが話題となり、国内の様々なメディアで取り上げられていた。ちなみに動画のラストではなんと……
「もうしんどいよ、このコンテンツは。分かったかな〜人志くん」と大先輩に呼びかけている。どうしちゃったのか、怖くはないのか。しかし「お笑いディスり家」として無理やり悪口を言っているわけではなく、芸人時代から思っていた本音を語っているだけらしい。
「今が人生で一番楽しいからな」
しかし動画のコメント欄は「恥ずかしいからやめや」「嫉妬心すごいな」「結果出してない奴が何を言っても響かんよ」「そもそも誰?」などなど見事に燃えている。
一方で、たまに売れない若手芸人からは「よくぞ言ってくれました!」「さすがです!」「応援しています!」などとメッセージがくるそうだ。
・売れなかった芸人の成れ果ての姿か
人気芸人のネタを見て「何がおもろいねん」と思っていた当時の感情をそのまま吐き出し続ける……これはひょっとすると、50まで売れなかった芸人の成れ果ての姿と言えるかもしれない。これほど見事にダークサイドに堕ちた芸人もなかなかいないのではなかろうか。
しかし、それでもYouTubeという世界で一発逆転を狙っているところに、やはり芸人としての魂を感じる。
・ラストチャンス
本人曰く「これが最後のチャンス」だという。売れなくて世間からバカにされ、家族から無視され(ちなみにですが、奥さんも息子さんもめっちゃいい人です)、仲の良かった芸人仲間も離れてしまい……それでも家族を食べさせるためにダークヒーローとして立ち上がったのだ。
「ま、家族に胸を張れる仕事ではないけどな」
いや、応援されるかどうかは置いといて、そういうスタイルで活動する元芸人がいてもいいだろう。芸人の世界で生きようともがいた50代の男の姿に共感を覚える方もきっといるはずだ。
タブーに切り込み続ける元芸人の行く末とは……少しでも気になる方はYouTubeチャンネル『村越周司のお笑いネタディスりチャンネル』をチェックしてみてほしい。何はともあれ、串カツは美味しかったです。さすが大阪。
というわけで村越さん、活動内容はさておきこれからも応援しています。あと、ロケットニュースだけはディスらないでください。勘弁してください。
参考リンク:YouTube『村越周司のお笑いネタディスりチャンネル』
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.