Twitter Blue に価値はあるのか? 有色人種クリエイターからは疑問の声

DIGIDAY

イーロン・マスク氏による2022年10月の買収完了以来、Twitterは大揺れし、一部のユーザーにとって好ましくない変更が相次いだ。

その一例がアカウントの認証方法で、以前は企業や著名人のアカウントに対し、一定の審査を経て「本人確認済み/公式」の意味で認証バッジを付与していたものが、変更後はTwitter Blueに加入すれば、誰でも認証バッジ(青いチェックマーク)を取得してプロフィールに表示できるようになった

新制度は有料サブスクリプションに基づくアカウント認証を採用し、米国では一般ユーザー向けに月額8ドル(約1040円)のTwitter Blue、企業・ブランド向けには月額1000ドル(約13万円)のTwitter Goldというプランが導入された。

Twitter Blueは「民主化したインターネット」を奪う?

しかし、この認証サービスの変更を受け入れがたいと感じる人々もいる。とくに、黒人など有色人種のコンテンツクリエイターの多くが、Twitterの今後について懸念を抱いているようだ。たとえばBlack Twitterなど、黒人を中心とするコミュニティで自らを表現する場がなくなるのではないか、投稿したコンテンツが一般ユーザーに閲覧されなくなるのではないかといった懸念だ。

ソーシャルメディアのアカウント「@JoyOfodu」で知られるジョイ・オフォドゥ氏は、ポッドキャストのホスト、コンテンツクリエイター、声優として活動している。2009年にTwitterのアカウントを開設し、2010年中盤以来、人々に笑顔を届けようと、コメディや癒し系のユーモアに焦点を当てたコンテンツを投稿してきた。

同氏は現在、Twitter Blueに登録しておらず、今後も登録する意思はない。その理由は、クリエイターやインフルエンサーより事業収益を優先するTwitterが、Twitter Blueによって「民主化したインターネット」の神話を奪い、無料ソーシャルメディアへのアクセスを阻もうとしているからだという。

「マスク氏はTwitterの買収後、Black Twitterに対し急に、あからさまで意図的な攻撃をしかけてきた」とオフォドゥ氏は言い、ソーシャルメディア大手の行動全般についても、「クリエイターが大事だという言葉とは裏腹に、クリエイター向けのツールやセキュリティを取り上げ、認証制度や専用プログラムを廃止している」と指摘する。

Twitter Blueはユーザー間の公平を期すためのプログラムとされるが、ユーザーの反応はいまひとつだ。広告主離れを解消しようというTwitterの努力にもかかわらず、Twitter Blueからの収入は広告事業の損失を補うまでには至っていない

認証バッジの有無で変わるもの

独立系メディアのビッグゴールドベルト・メディア(Big Gold Belt Media:@BigGoldBelt)を所有するコンテンツクリエイターであるナジャー・チェンバーズ氏、Twitchのライブストリーマーとして活動するデヴィッド・チェリー氏(@DataDaveTV)は、10年近くTwitterを利用しており、Twitter Blueの導入直後にサブスクリプション登録した。なお、2人ともマスク氏のTwitter買収前は認証バッジを付与されていなかった。

Twitter Blueは次のようなメリットを確約している。プラットフォームのアルゴリズムにより、認証済みメンバーのツイートは一般ユーザーに比べ返信・検索・通知で優先表示される。また、公式アカウントとなりすましアカウントの区別がつきやすくなるため、ユーザー体験が向上する。

しかし、チェンバーズ氏とチェリー氏によると、Twitter Blue加入後も状況は以前と変わらないという。クリエイターとしては、仕事に必要な録画装置やカメラ、サブスクリプションサービスなどほかの諸経費もかかるだけに、Twitterの公式マーク取得のために料金を支払う価値があるか、疑問に思うかもしれない(米DIGIDAYのコメント要請に対し、Twitterからは回答がなかった)。

チェンバーズ氏はTwitter Blueの認証バッジを取得した理由について、現状のままでは、メディア・エンターテインメント分野における自身の実績と貢献が映画・テレビ制作スタジオに認められるチャンスがないと感じたためだと説明する。制作スタジオが注目するのは、認証済みのほかメディアで公開されたコンテンツが中心だからだ。

「独立系のメディアで活動している自分の場合、Twitter Blue導入以前は認証バッジ取得が難しく、申請してもほかメディアからの認証資格証明がないとして却下されてばかりいた。だからTwitter Blueは、複雑な手続きを省ける裏技として有効だった」とチェンバーズ氏は言う。アカウントのタイムラインには「認証済みタブ」が設置され、ボットネットやなりすましでなく、資格要件を満たしたユーザーの公式コンテンツのみが表示されるという触れ込みから、同氏は「VIP並みの待遇」を期待したという。

次々と離脱した著名な黒人ユーザー

一方、チェリー氏は、2022年秋にTwitter Blueが導入された直後に加入したものの、日々のツイートの閲覧数が増えていないことに気づき、ほどなく解約した。ちょうどそのころ、ゲームソフト大手の任天堂、ロックスターゲームス(Rockstar Games)、製薬大手のイーライ・リリー(Eli Lilly)などのTwitter偽アカウントが、それぞれのブランドに関するフェイクニュースを拡散して問題になっていた。

「Twitter運営側にはTwitter Blue加入者を優先したい意向があるのはわかる。マスク氏が打ち出した施策も意外ではない。ただし、マスク氏は、黒人ユーザーの声や黒人文化関連イベント情報、社会問題に立ち向かう黒人クリエイターによる情報の発信を抑圧しようとしている」とチェリー氏は主張する。

マスク氏による買収の数カ月前、Twitterは新たなクリエイタープログラム「VoicesX」発表の準備を進めていた。Twitter上で表明される多様性と影響力に富む意見とブランド各社による活動との橋渡しとなるはずのプログラムだったが、マスク氏の新CEO就任後、プラットフォーム上で公開されるヘイトスピーチ増加の影響もあって、著名な黒人ユーザーが次々と離脱した。

Twitterの利用をやめたユーザーのなかには、脚本家、プロデューサー、テレビ制作総指揮者として知られるションダ・ライムズ氏や、R&Bスター歌手のトニ・ブラクストン氏、女優のウーピー・ゴールドバーグ氏が含まれる。

クリエイターはTwitterから離れていくか

一方、Twitter Goldの認証バッジが小規模企業や中堅以下のクリエイターには手が届かないという点で、チェンバーズ氏、チェリー氏、オフォドゥ氏の意見は一致している。Twitter Goldのサブスクリプション料金は企業の場合、月額1000ドル(約13万5000円)、社員の関連アカウント登録には1人につき月額50ドル(約6500円)の追加費用がかかる。

とくに、不況の影響を受けやすい黒人経営事業者の場合、出資企業からの資金調達の確証が得られない状況下では、ソーシャルメディアマーケティングの予算配分をめぐる重大な決断を迫られるだろう。とはいえ、景気の先行き不透明な現状では、どんな組織でもしっかりしたマーケティング予算計画が必要になる。

米カリフォルニアに拠点を置くカルチャー・ジェネシス(Culture Genesis)は、マイノリティのクリエイターとパブリッシャー向けデジタル動画ネットワークを運営している。同社の創業者兼CEOのセドリック・J・ロジャーズ氏は、「イーロン・マスク氏は金儲けに走って、ブランドとの関係性を壊した」と述べ、その結果として「クリエイターにとってTwitterから収益を上げるのが難しくなる」と付け加えた。

「黒人クリエイターはこれからも、Twitterを利用して自身のブランドを宣伝し続けるだろうが、コンテンツの収益化は望めなくなる」とロジャーズ氏は指摘し、カルチャー・ジェネシスは、ブランドやエージェンシーから「Twitter上のキャンペーン削除要請を受けた経験がある」と述べた。つまり、今後のマーケティングキャンペーンのプラットフォームとしてTwitterを除外し、代わりにTikTok、インスタグラム、YouTube上を利用する動きがあるのだと、ロジャーズ氏は言い添えた。

[原文:Content creators of color question whether Twitter Blue is worth the price after Elon Musk’s takeover

Julian Cannon(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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