こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります
サムズクラブ(Sam’s Club)は、自社の実店舗での販売に関するリアルタイムのファーストパーティーデータを生成し、広告主により質の高いターゲット測定とアトリビューションを提供できるようになった。
同社はウォルマート(Walmart)傘下の大手小売店で、サムズクラブメンバーアクセスプラットフォーム(Sam’s Club Member Access Platform)という自社のリテールメディアネットワークにおいて、検索広告やスポンサー付き商品広告を、オフラインの売上に結びつけるという。オフライン売上をアトリビューションミックスに含めることで、同社の広告主は、広告の費用対効果が平均で30%近く向上したと同社は述べている。
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サムズクラブメンバーアクセスプラットフォームの販売責任者を務めるオースティン・レオナルド氏は、次のように米モダンリテールに語った。「当社の会員には、購買体験のプロセスにおいて、検索を重視する人がますます増えている。当社は過去1年間にわたり、このビジネスを変革し構築するなかで、検索分野に多くの投資を行ってきた。当社のプラットフォームは、会員が検索のために行ったクリック操作を、会員IDと直接結びつけることができ、購買が、クラブやオンライン、またはその中間でスマートフォンを使って行われても、関係なくこの操作を行える」。
リテールメディアの盛り上がりを受けて
この最新の動きは、ほかの大手小売業者におけるリテールメディアのトレンドにならったものだ。ウォルマートとクローガー(Kroger)の両社は、広告主に対して、店舗内とオンラインの両方での売上を測定する機能を提供してきた。2021年8月、ウォルマートは自社のリテールメディアプラットフォームであるウォルマートコネクト(Walmart Connect)を改修し、広告主がオンラインと店舗での購入の両方を測定し、特定のメディア戦略と結びつけることで、広告キャンペーンの効率向上を図れるようにした。それとは別に、2020年に、クローガーはプロモートアイキュー(PromoteIQ)とのパートナーシップにより、ロイヤルティカードのデータを結びつけ、リテールメディアのネットワーク上のオンライン広告がオフラインでの売上にどれだけ貢献したかを測定できるようにした。
サムズクラブはサブスクリプションベースの小売業者であり、買い物客が直接購入したものを把握しているため、同社が広告主に提供するデータはより強固なものだ。「サムズクラブは、自社のメンバーシップカードのおかけで、オフラインでの購入もすべて把握でき、新たにオンライン広告をオフラインでの売上と迅速にリンクできるようになったと主張しているようだ」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)の小売およびeコマース担当プリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は語る。
サムズクラブはこの機能を「リアルタイム」で構築したため、完全なデータセットをブランドに提供でき、他社と比べて比較的高品質のデータが得られると、同氏は付け加えている。しかし、オフライン売上のデータはこのようなリアルタイム広告測定を行うように設計されていないため、この種のデータを統合することには従来から常に問題が付きまとい、その理由から、オフライン売上データの統合はこれまで主流とはならなかったことも、同氏は指摘する。
自社独自の会員プログラム
しかし、サムズクラブが集計するオフラインの売上データは、自社独自の会員プログラムを運営しているため、ロイヤルティカードの購入履歴やパネルデータの推定値に基づいてオフラインのレポート指標を共有する競合他社に比べ、より包括的なデータである可能性がある。
「ロイヤルティカードからデータを得る場合、そこで多くのデータが得られるが、誰もがロイヤルティカードを使用するわけではない。クローガーのデータが貴重な理由の一部はまさにこの部分で、同社では97%の購入がロイヤルティカードを経由して行われる。そのため、データの整合性が非常に高くなる。これに対して、ウォルマートなどでは現金取引が多い」と、リプスマン氏は付け加えた。
米モダンリテールは3月、小売業者にとって実店舗のリテールメディアの収益化が、次の大きなビジネスとなる可能性を表していると報じた。店舗内のオーディエンスは、平均してデジタルオーディエンスよりも大幅に多いためだ。それでも、この数年間はオンラインのリテールメディアネットワークをサポートするため膨大な投資が推進されてきた。
そして、これは最大手の小売業者にとって、ビジネスが拡大することを意味している。たとえば、ウォルマートのグローバル広告事業は、2022年に30%増加して27億ドル(約3540億円)に達したと、同社は第4四半期の決算発表で明らかにした。
単なる測定にとどまらない
しかし、オンラインとオフラインの両方の売上を、これら成長中の広告プラットフォームと結びつけるのが、現在の大きな動向だ。クローズドループのアトリビューションは、オンラインのリテールメディアが成長する「もっとも重要なたったひとつの理由」だと、リプスマン氏は語る。これは、Google、Facebook、Amazonなど大手テック企業のオンライン広告収益が成長してきた主な要因だと、同氏は付け加える。Amazonは広告ビジネスによって年間約300億ドル(約3兆9300億円)を売り上げている。
「これまで、クローズドループの測定は、主にオンライン広告がオンライン販売を促進するものだった。そして、これは非常に密なクローズドループであり、迅速なフィードバックのループであり、広告主はその情報に基づいて非常に迅速に意思決定することができる。そのため、これらを最適化することは簡単で、結果的に売上を伸ばすことができる」と、リプスマン氏は述べている。
サムズクラブは2月28日、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)およびライブランプ(LiveRamp)と提携し、広告効果とパーソナライゼーションを向上させるため、同社のリテールメディアプラットフォームで、リターゲティングを行うディスプレイ広告を開始した。
サムズクラブの重要な部分は、単なる測定にとどまらず、大規模から小規模までの供給元を支援し、自社の広告がスポンサー付き商品広告やディスプレイ広告全体にわたってどのような効果をもたらしているかの全体図を把握できるようになることだと考えていると、レオナルド氏は語る。「当社の場合、スポンサー付き商品広告はメンバージャーニーの非常に大きな部分を占めている。そのため、これによって、サムズクラブでどのように売上を伸ばせるか、さらにメンバーエクスペリエンスをどのように最適化するかについての全容を自社組織に伝えることが可能になる」と、同氏は述べている。
[原文:Sam’s Club links its ad platform to offline sales]
Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Sam’s Club