靴のクラークス 、 リテールメディア を活用した新戦略:小売店限定アイテムも販売

DIGIDAY

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フットウェアブランドのクラークス(Clarks)は、従来の定番マーケティングチャネルの信頼性が低下するなか、リテールメディアネットワークによるマーケティングで大きな成功を収めた。

Googleなどの企業が、ユーザーの行動をコードで追跡するCookieを制限しているなか、リテールメディアネットワークは、ブランドが顧客に関するファーストパーティーデータを収集する方法として急速に広まっている。

「これについては、eコマースサイトにおけるスポンサー付き商品と考えるのがもっとも簡単だ」と、インテリジェンス企業のインサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)で、小売およびeコマース担当の筆頭アナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は語る。Googleは、2024年の第3四半期にCookieを終了すると報じられている。メディア投資企業のグループエム(Group M)による2022年のレポートによると、米国におけるリテールメディア広告への支出は、2027年に1600億ドル(約21兆8000億円)に達する。

大手小売店によるリテールメディア構築

クラークスはフットウェア企業として200年近い歴史を持ち、2020年以降にいくつものリテールメディアネットワークに投資してきた。「当社は、マーケティング予算の一部を、Amazon、メイシーズ(Macy’s)、ノードストローム(Nordstrom)、ザ・ベイ(The Bay/ハドソンズベイカンパニー[Hudson’s Bay Company]が保有)など、いくつかの主要アカウントのメディアネットワークに投資している」と、クラークスの米国マーケティング担当バイスプレジデントを務めるアドリアナ・タラタニアン氏は述べている。

ノードストロームなどの企業は、大規模なリテールメディアネットワークを運営している。同社のオンサイトチャネルにはスポンサー付きの商品広告、バナー広告などのディスプレイプレースメント、専用ブランドページが含まれている。同社のオフサイトチャネルには、メタ(Meta)、ピンタレスト(Pinterest)、TikTok、YouTubeなど各種のプラットフォームにわたる有料ソーシャル広告に加えて、Googleによる検索広告やショッピング広告、そしてさまざまなインフルエンサーオプションがある。

ノードストロームのスポークスパーソンによると、同社の2022年のリテールメディアネットワークは、2021年から50%以上も成長した。「当社は第4四半期に、広告サービスをノードストロームに隣接したブランドやカテゴリーに広げ、TikTokやピンタレストとのオフサイトのパートナーシップを開始し、Nordstrom.comのディスプレイ広告によるオンサイトの広告を拡大した」と、同社は2022年第4四半期の決算発表で述べている。「当社のブランドパートナーは、広告主ががメディアミックスの多様化を目指している現在、大きな広告費用対効果を得ながら、我々の非常に熱心で誠実な顧客とつながる機会を高く評価している」。

小売店のファーストパーティーデータを活用

クラークスのリテールメディアネットワークへの投資には、具体的なデータの利点がある。「これによって、当社はファーストパーティーデータを使用して、新規顧客とリピート顧客の両方をターゲティングできる」と、タラタニアン氏は述べる。「当社の卸売予算の一部を使用して、競合他社のあいだで当社がもっとも選ばれるブランドであるようにし、当社の消費者がすでに買い物をしている主な小売業者でマーケティングのプレゼンスを保つのに効果的な方法となっている」。

クラークスは、買い物客に関するファーストパーティーデータへのアクセス以外に、メディアネットワークを活用して、その小売業者でしか買えない独占アイテムを販売している。これらのアイテムは、小売業者の既存のウェブサイトに没入型広告として表示されるほか、ディスプレイやほかのマーケティングチャネルにも表示される。

「リテールメディアネットワークによる長期的な機会は、ブランドやカテゴリーの買い手である人々に関する、小売業者のファーストパーティーデータを活用することにある。目標は、ほかの環境、たとえばオフサイトのディスプレイ、動画、そして今後はストリーミングTVの広告でも、これらの人々をターゲティングにすることだ」と、リプスマン氏は述べる。「店舗のデジタル化や、店舗内でのサイネージもその一端を担う。これらは、メイシーズやノードストロームのようなマルチブランド小売店の環境のコンテキスト内で、ブランドが自社のプロモーションをするために使用できるからだ」。

新たな制限

タラタニアン氏は、メディアネットワークからクラークスに提供されたデータは、ほかの形式のデジタルマーケティングから得られるものと同等で、それどころか、従来型の協力的なマーケティング投資よりもはるかに強力だとしている。「当社がリーチできる消費者は購買意欲の高い購入者で、特に従来型のマーケティング手段の影響が弱い百貨店の領域において、その傾向がある」と、同氏は述べている。クラークスでもっとも高い業績を挙げているリテールメディアネットワークパートナーのひとつは、ブランド自身のウェブサイトのトラフィックが前年比で40%も増加したと、タラタニアン氏は述べている。同氏は、その小売業者の実名を明らかにしていない。

しかし、リテールメディアネットワークは新たな制限を課すものでもある。「多くのブランドのランディングページは以前は無料だったが、現在はコストがかかる」と、タラタニアン氏は述べる。「これは参入への高い障壁になるととともに、ブランドの観点からはより多くのプレイヤーが市場に参入することから、競合が激しくなる」。時間の経過とともに、より多くの小売業者が自社のデジタル空間を有料参加型の環境に変換していくことを、同氏は予測している。

[原文:How Clarks is leveraging media retail networks]

Zofia Zwieglinska(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Clarks

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