SSPの マグナイト はDSPを介さないメディア取引の仕組みを模索:「粘り強さを獲得しようとするSSPの取り組みの一例だ」

DIGIDAY

アドテク市場が過渡期を迎えている。長らく大手テック企業の支配下にあったこの市場で、地殻変動が起きているのだ。

Googleなどの大手企業を規制しようとする政治的な動きもあることから、こうした変化が独立系プレイヤーに恩恵をもたらすと予測する向きもある。

SSPの領域を侵食

実際、独立系の大手企業も同じようなポジション争いを繰り広げている。こうした動きは何年も前から起こっていたが、ザ・トレードデスク(The Trade Desk)が昨年発表した「オープンパス(OpenPath)」が(少なくとも一部の企業にとって)大きな分岐点となった。

オープンパスは、これまでSSPの領域だったパプリッシャーとの直接的な関係の構築に、業界をリードするDSPのザ・トレードデスクが乗り出すものであるため、仲介者の排除になるとの批判もある。だが同社は、オープンパスを成熟化する市場でごく当たり前の(かつ必要な)取り組みと位置づけている。

また、メディアエージェンシーも同様の動きを見せている。 オープンパスのわずか数週間後に発表されたグループエム(GroupM)の「プレミアムマーケットプレイス(Premium Marketplace)」は、その最たるものだ。

「メディアファシリテーター」という取り組み

一方で、SSPはダーウィン主義的傾向を強める市場で自社の取り組みを強化してきた。SSP業界大手のマグナイト(Magnite)はこの1年間、よりはっきりした形でメディアエージェンシーとの取引関係を構築するなど、オープンパスと同じような動きを見せている。

別の情報筋によれば、彼らの取り組みは「メディアファシリテーター」と呼ばれるもので、メディアエージェンシーがプログラマティックダイレクト取引かプライベートマーケットプレイスを介して、マグナイトから直接インベントリー(在庫)を購入できるようにしているという。このような動きも、オープンマーケットプレイスでの購入が減少傾向にある兆候といえる。

「SSPを迂回できるとDSPが言い出すようになれば、両者がゲームに加わるようになる」と、所属企業のPR戦略を理由に匿名を希望したある大手パブリッシャーの情報筋は話す。「だが、どちらの側も移行に困難を覚えることになるだろう。契約などのオンボーディングプロセスには厄介な部分があるからだ。(中略)市場の反対側で数年かけて専門性を深めてきたクリエイティブをブロックすることになるなど、成長の過程で多くの困難に見舞われるだろう」。

コモディティ化からの回避

別の情報筋は、「何もしなくてもメディア支出が10社あるいは20社のSSPに流れ込んでいた時代は、急速に終わりつつある」と指摘する。「バイヤーは、SPO(サプライパス最適化)にかなりのリソースを投入し、サプライサイドのパートナーを統合している。より少数の戦略的パートナーとより深くダイナミックな関係を築くためだ」。

アドテクコンサルティングを手がけるアドプロフス(AdProfs)の創業者であるラッコ・ヴィダコヴィッチ氏にとって、マグナイトの動きは、ますます難しくなるこの市場であらゆるプレイヤーがコモディティ化を防ごうとしている現状を示すものだ。

同氏は「この(マグナイトの)取り組みは、『粘り強さ』を獲得しようとするSSPの取り組みの一例だと思う」と述べ、「これには、市場のバイサイドとセルサイドの両方に魅力的な製品を提供しようとする動きも含まれる」と付け加えた。

[原文:In a shrinking marketplace, Magnite explores media trading without DSPs

Ronan Shields(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)

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