DiscordにもOpenAIのチャットボット登場、さらに…

GIZMODO

DiscordもAIのハブになりたいみたい。

先週Discordが公式ブログの中で、AIへの意気込みを改めて明確にしました。彼らはDiscordアプリを「友だちと一緒の、AIのための場所(Place for AI with Friends)」と位置づけたのです。今週から「無料公開実験」として、OpenAIの技術を使ったチャットボットがDiscord上の会話に参加可能になったり、いくつかの機能が追加されていきます。

Discord上では前から荒らし対策にAIを使ってたし、画像生成AIのMidjourneyもDiscordを拠点にしてたし、何かとAIに縁はありました。今回の発表ネタも、単に(他でもやってるような)チャットボットだけじゃなく、OpenAIの技術を使った荒らし対策ツールやチャットまとめ機能の提供、開発中の画像系機能、さらにはAI開発者を育てていく仕組みなど、AIを全方位で活用した内容になっています。

AIチャットボット「Clyde」登場

Discordが発表したチャットボット、その名も「Clyde」は、ChatGPTを開発したOpenAIの大規模言語モデルを使ってます。DiscordはClydeをチャットに参加させることで「友だちと一緒にAIを楽しむ」ことができるとして、生成AIが単に1対1のQ&Aができるだけでなく、会話を弾ませられることを強調しています。

最近Snapchatや、Salesforce傘下のSlackといったプラットフォームでも、ユーザー同士の会話にもう1人のユーザーのように追加できるAIチャットボットを導入しました。彼らもOpenAIが最近公開したAPIを使ってそれを実現しています。またOpenAIと提携しているMicrosoftも、その検索サービスBingWindows 11のタスクバーにチャットボットを追加しています。

Discordの記者発表の中では、サーバー上で@Clydeと打ってボットを召喚するデモがあり、Clydeは「東京の時刻は今何時?」「鳥小屋を作る手順は?」といった質問に答えてくれました。面白いGIFを見つけてきてくれたりもするそうで、チャットが深夜に及んで眠くてジョークも思いつけないときには助かりますね。Clydeは今週ロールアウトしていく予定です。

まだ実物を試せていないので、Clydeでどの程度の会話ができるのかはわかってません。DiscordのCEO、Jason Citron氏は、Clydeには「安全でポジティブな環境にいてほしい」と言ってました。たとえばBingチャットみたいに、問題発言を連発させられたりしないといいな…ということなんでしょうね。

でも、Discordはプレスリリースの中で、AIが自分の意見を言わないような制限はかけていないと言っていました。また、限られた数のサーバーでスタートして試行錯誤したいとも言っていたので、ロールアウトは慎重に進めていくのかもしれません。

監視ツールもLLMで強化

チャットボットだけじゃなく、チャット監視ボットとチャットまとめボットも導入されます。監視ボットは、既存のAutoMod AIにOpenAIの大規模言語モデル(LLM)を組み合わせたもので、Discordサーバーに書き込まれたルール違反の発言を検知する機能です。LLMを使うことで、文脈を考慮した高精度な検知が期待できます。

サーバーを常時監視できなくても、DiscordではAIを使って悪質なチャットを検知可能に
Image: Discord

チャットまとめ機能(Conversation Summaries)では、似たようなメッセージをまとめあげ、チャット上での出来事とか面白かったネタとかをより早く理解できるようにしてくれます。ただこれを使うには、サーバーのオーナーが有効化しなきゃいけません。話題をどう検知するかの仕組みは不明ですが、とにかく自力でやりとりをスクロールするより簡単に会話の流れが把握できるようになりそうです。

新AutoMod AIもConversation Summariesも対象は一部のサーバーのみで、前者は先週すでに開始、後者は今週スタートです。

開発中の画像系AI機能も

Discordはさらに、まだまだ開発中のAI機能についてもブログ内でチラ見せしてくれました。そのひとつがAvatar Remix、これはユーザーが入力する単語から画像を生成し、それをユーザーのアバターとリミックスするアプリで、ミームを一瞬で作れるような感じです。

例えば鳥が大好きな友だちがいたら、そのアバターの上に「カラスをたくさんくっつけて」みたいな指示を出すと、AIがそれっぽいものを作ってくれる、といったものです。Avatar Remixはオープンソースなので、GitHubでコードを入手したデベロッパーがこれをどう展開させていくか興味深いです。

あとはWhiteboard with AIっていうのもあります。Discordいわく、Whiteboard with AIはユーザーがチャットでコラボレートできるような「共有ビジュアルスペース」を目指してます。こちらの機能はまだ開発中で、すぐには使えません。

AI開発のプラットフォームとして

Discordのプラットフォームエコシステム担当副社長、Amjney Midha氏によれば、DiscordにはAIを使ったサーバーが300万件あり、MidjourneyのようなAIアプリを使うユーザーは毎月3000万人に上ります。MidjourneyはDiscord最大のサーバーとなっていて、1300万ユーザーがフリー画像生成に使っています。

Discordは単にサービスの機能の中でAIを活用するだけじゃなく、そのプラットフォーム上でいろんなAIプロジェクトが開花するようなハブになることを目指しているようです。彼らは去年「エコシステム・ファンド」として500万ドル(約6.7億円)用意し、パートナーとなる小規模デベロッパーに資金提供する枠組みを作ってたんですが、今回その一環として「AIインキュベーター」を発表しました。

Midha氏によれば、Discordから承認されたAI関連のデベロッパーには資金が提供されるだけでなく、Discord開発チームからの協力や、プラットフォーム上の機能への早期アクセスといったメリットがあるそうです。