Shopify 、B2B領域のサービスを刷新:大手事業者も「移行」を検討

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Shopify(ショッピファイ)は、自社の中核事業であるD2C新興企業向けビジネスの枠を超えた展開を模索するなか、成長中の関心分野としてB2B販売に着目するようになった。

卸売サービスを刷新

同社は6月、B2B on Shopify(ビーツ―ビー・オン・ショッピファイ)によって、Shopify Plus(ショッピファイプラス)の小売業者が、消費者向けビジネスで使用しているのと同じプラットフォームでほかの企業への販売を行えるように、自社の卸売ビジネスを刷新した。

これに対して、米モダンリテールが取材した開発者たちは、B2Bクライアントとの会話のなかでShopifyの話題がより頻繁に登場するようになってきたと語った。要するに、ShopifyがB2Bツールのスイートを拡大するなかで、このB2Bのカテゴリーにいる小売業者は、自社もShopifyを使用すべきだろうかと検討している。従来から、B2B分野はビッグコマース(BigCommerce)やマジェント(Magento)など、B2Bエンタープライズ用の複数のストアフロントやプラットフォームを構築できる機能など、Shopifyにはツールを保有している競合他社に独占されてきた。

開発者は、すでにShopifyにプレゼンスがある、確立されたD2C企業が、自社の卸売運用を具体的にShopifyに移すことに興味を表明し、B2B専業ブランドからの関心も増えてきたと述べている。

eコマース開発代理店のネタリココマース(Netalico Commerce)の創設者であるマーク・ウィリアム・ルイス氏は米モダンリテールに対し、「Shopifyは現在、ビッグコマースが標準で提供してきた機能の多くを提供しているか、あるいは、それらの機能を実現するためのより優れたAPIを自社のアプリ向けに提供している」と語った。

1月以降、同氏が受け付けるB2Bリードの70%はShopifyについて直接たずねてきており、昨年の50%よりも増加した。「これらの人々はほとんどの場合、『当社はShopifyに移行したい』といって来る。マジェントやビッグコマースに参入したいという人々は減り続けている」と同氏は語る。同氏の会社はマジェント、Shopify、ビッグコマースの開発に取り組んでいる。同氏は、Shopifyが搭載しているB2B機能について知った小売業者が増えたことが移行の理由の一部だとしている。

B2B機能を続々リリース

フォレスター(Forrester)やパラダイム(Paradigm)などのアナリスト企業によるB2B業界レポートの多くには、未だにShopifyが大手B2B業者として記載されていないことは特筆に値する。フォレスターのB2Bコマースソリューションに関する最新のレポートでは、この分野における上位10社として、Adobe、ビッグコマース、コマースツールズ(Commercetools)、セールスフォースなどが取り上げられている。

むしろ、ShopifyのB2B分野への移行は新しい現象だ。同社はこの1年間で多くの新しいB2B機能のリリースを開始した。11月には、米国のB2Bベンダーのセルフサービスによる決済を支援するバランス(Balance)プラグインを導入した。1月には、Shopifyの自社インフラを大手エンタープライズ小売業者に公開し、決済などShopifyのコア機能の一部を利用して、自社のオンラインビジネスをカスタマイズできるようにするとともに、レート制限のない柔軟なAPIへのアクセスを提供した。

そして直近の2月には、B2B向けの新しいAPIスイートを開放すると発表した。

「Shopifyはようやく、自社のプラットフォームへのキーの多くをB2Bビジネスに公開するようになった」と、ニューヨークを拠点とするeコマース代理店ネッサ(Nessa)の創設者兼CEOのフマユン・ラシッド氏は語る。「同社はいかなる制限もなしに、小売業者にShopifyのすべての機能を開放することになる。これは強力なもので、B2Bビジネスにとっては非常に有益だと考える」と、同氏は付け加えている。

大手小売業者からの関心

Shopifyは卸売の分野では何年も遅れていたが、現在はShopify Plusを使用しているグロシエ(Glossier)など、大手小売業者からの関心が増すことは間違いないと、ラシッド氏は述べる。

ラシッド氏は、昨年の第4四半期以来、自社がとある家具ブランドとの間で、同社のB2B事業をShopify Plusを導入したShopifyエンタープライズに移行することについて、積極的な話し合いを行ってきたと述べている。

Shopifyは従来からB2B分野に強い足がかりを保有していたわけではないと、Shopifyに特化した代理店であるエレクトリックアイ(Electric Eye)の創設者でCEOを務めるチェイス・クライマー氏は述べている。だが同氏は、Shopifyのエンタープライズスタックであるコマースコンポーネンツ(Commerce Components)のリリース後、B2Bが「この分野における非常に新しく魅力的な推進力」になったと付け加えている。

「同社はこの形式のビジネスを積極的に追及していたわけではない。同社は明らかにSMBや中規模の小売業者を対象としてきたが、そのハイエンドの可能性をようやく認識して、それをめざしはじめた。関心は間違いなくあると考えられる」と、同氏は述べている。

未確定要素の多さ

だが、B2B小売業者にとってより困難なのは、「プラットフォーム上にB2Bビジネスを構築するには、統合やロジスティクスを含むあらゆる部分、そして全体がどのように動作するかを含め、未確定要素が非常に多い。これらのプロジェクトは、Shopify上のより明快なD2Cの構築よりも10倍も大きくなる傾向がある」ことだと、クライマー氏は述べる。このため、自社のB2BビジネスをShopifyに移行することを検討している小売業界の一部は依然として調査の途中だ。

Shopifyによれば、B2Bの小売業者は、自社の卸売消費者に対して、D2Cブランドのものと似た独自の購入エクスペリエンスを設計することに関心を強めつつある。これには、顧客ごとの価格設定、商品の在庫、大量購入のルール、支払期間、柔軟な決済オプションなどがある。

「当社はこのエクスペリエンスを、D2Cの購入と同じようにセルフサーブ型として、同時に小売業者がそれらを集中管理し、注文を作成して決済用の請求書を送付することも可能にした」と、Shopifyの商品ディレクターを務めるマニ・ファゼリ氏はメールの回答に記した。

同社は2月、第4四半期の収益の増加が減速し、損失が増えたことを報告した。第4四半期のGMV(流通取引総額)は、2021年の第4四半期に31%増の541億ドル(約7兆3600億円)だったのに対し、13%増の610億ドル(約8兆3000憶円)と伸び率が鈍化した。

D2CからB2Bへの移行

ShopifyはサービスをB2Bの分野に展開することで、同社の最大のライバルのひとつであるビッグコマースの本業に直接狙いをつけようとしている。ビッグコマースは以前、B2B小売業者が同社の収益の約3分の1を占めると述べていた。同社はかつて、同社の目標は市場で「もっとも強力なB2Bのeコマースプラットフォーム」になることだと語った。そのために昨年、いくつかのツールのほか、2つのB2Bソリューションを獲得した。エンタープライズ見積ソリューションのニンジャ(Ninja)と、小売業者がすべての卸売アカウントを1つにまとめて管理できるバンドルビーツ―ビー(BundleB2B)ツールだ。

米モダンリテールとのインタビューで、ビッグコマースのマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるミーガン・ステイブラー氏は、同社のオープンなSaaSプラットフォームがShopifyに対する優位点だと売り込んだ。「当社は完全に構成可能で、完全にヘッドレスであり、APIを使用して柔軟に活用できる」。同氏は、ShopifyがB2Bコマースには「出遅れた」と付け加えている。

ビッグコマースは、2022年3月に開始したマルチストアフロント機能などを売り込んでいる。これは、エンタープライズ小売業者が1つのバックエンドで別々のフロント、ヘッド、ストアフロントを保有できる機能で、Shopifyと比較した大きな優位点のひとつだと、ステイブラー氏は述べる。

また同社は、昨年ヤフーストア(Yahoo Store)からビッグコマースに移行したB2B小売業者のタックルダイレクト(Tackle Direct)のCEOで最高エグゼクティブであるパトリック・ギル氏の言葉を米モダンリテールに指摘した。

ギル氏は、同氏の会社がビッグコマースとShopifyを比較したとき、「多数の開発者から、当社が計画していたカスタマイズと多くの最適化に対して、複雑性や課題がいくつか生じるだろうといわれた。そしてビッグコマースは完ぺきではないものの、中間市場により的確に対応しており、価格設定が非常に意欲的だ」と述べている。

それでもルイス氏は、ShopifyがポッドキャストやYouTubeなどのメディアチャネルでの広告に投資することで、どちらかというと同社が「全体的に話題に」なっていると語る。

B2B小売業者がShopifyに移行する別の理由として、多くの場合にShopifyにストアを保有している、成功したライバルと競合するためだと、ルイス氏は語る。「このようなB2B小売業者は、『少なくとも競合他社と同じくらいの業績を挙げたい。だから、他社と競合するためShopifyに切り替える必要がある』と考えている」と、ルイス氏は述べている。

[原文:Shopify sees renewed interest from B-to-B merchants]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Shopify

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