成熟する インフルエンサーマーケティング 、インフルエンサーは「クリエイティブディレクター」に

DIGIDAY

2月中旬、通信事業者のビジブル(Visible)はシングルズ・アウェアネス・デイ(Singles’ Awareness Day/独身者を祝う日、毎年2月15日)キャンペーンを展開し、コメディアンでインフルエンサーのベニート・スキナー氏、別名ベニー・ドラマを起用した。これはビジブルが先頃始めた、よりコラボレーティブな関係を重んじ、活用するインフルエンサーの数を減らす動きの一環でもあると、同社CMOシェリル・グリシャム氏は話す。

この新たな協力関係では、スキナー氏は「積極的な、参加型の役割」を担うと、グレシャム氏は説明する。スキナー氏は実際、自身が演じるキャラクターの台本作りに参画し、セットデザインの修正案も出しているという。

「協力し合える環境は必須だ」と、スキナー氏は話す。氏はビジブルやターゲット(Target)、マック(Mac)など、数多くのブランドと組み、140万人に上る自身のインスタグラムフォロワーに響くコンテンツ作りに取り組んでいる。「ブランドパートナーシップについては慎重に行きたい。みんなが楽しめるものにしたいからだ。真の自分だと思えるものにしたい」。

「クリエイティブディレクターの時代はもう来ている」

スキナー氏とビジブルの同コラボは、インフルエンサーに助言役としての裁量を与える、最近生じつつある流れのひとつと言える。これまでは、何十人ものインフルエンサーにブランド公認の同じコピーを投稿させるのが主流だったが、インフルエンサーとの関係はいま、進化/成熟しつつあり、メディアプレースメントに留まらない形での協力体制ができつつあると、マーケター勢およびエージェント幹部らは話す。

たとえば、ジムシャーク(Gymshark)やプリティ・リトル・シングズ(Pretty Little Things)といったブランドに見られる、より協力的な関係はその一例であり、彼らはインフルエンサーのデビッド・レイド氏モリー・メイ氏などをクリエイティブディレクターとして起用している(ほかにも、ワイルドターキー[Wild Turkey]は衆目を集めるべく、何年も前から有名クリエイティブディレクターを使っており、ダイエットコーク[Diet Coke]はモデルのケイト・モス氏を、LVMHは先頃ファレル氏をそれぞれ起用している)。また、それとは別の例として、インフルエンサー勢が有する自身のオーディエンスに関する洞察をマーケター/エージェントがマーケットリサーチのそれのように利用する、といった協力形態もある。

「クリエイティブディレクターの時代はもう来ているし、それはこの先も必ず続いていく」と、電通クリエイティブのインフルエンサーマーケティング部門EVPセイディ・シャブデック氏は話す。「このトレンドはプロダクトマーケティングコラボレーションモデルの進化形であり、クリエイターがブランドの看板を背負うイノベーター役を担う。このモデルは、その前身であるインフルエンサーマーケティングを排除するものではない。むしろ、ブランドとインフルエンサーによる現行の協力形態の、相手のアイデアを受け入れて、さらに提案をしていく『イエス・アンド』的な進展に近い」。

マーケター勢はいま、「クリエイティブなアイディエーションや周到な戦略的ディレクション」を期待して、インフルエンサーたちに目を向けており、彼らと協力して「耐久力を有する、長命でインパクトのある」コンテンツを作りたいと考えていると、クリエイティブショップ、ポータルA(Portal A)の共同創業者ザック・ブルーム氏は話し、商取引的なモデルを離れ、「より深いレベルでのコラボレーション」の形に移行しつつある、と言い添える。

インフルエンサーとブランドの立場は逆転

「というのも、本物感に勝るものはないから」だと、カーマイケル・リンチ(Carmichael Lynch)のソーシャルストラテジー部門ディレクター、ケイティ・テレノヴィッチ氏は話す。「そうしたインフルエンサーは皆、自分たちのオーディエンスに何が響くのか、我々よりもよくわかっている。だからこそ、彼らはクリエイティブプロセスの牽引役として適任であるし、ブランドやエージェンシーが課す事細かな注文に縛られるべきではない」。テレノヴィッチ氏はさらに、同社はクリエイターを「ソーシャルコンテントデザイナー」として雇用することも考えている、と言い添える。

ただ、ブランドは確かに、より本物感のあるコンテンツを欲しがっているのかもしれないが、このより深いコラボ関係への移行はあくまで、インフルエンサーが自らブランドを立ち上げ、自身のオーディエンスを現金化できる機会の存在に気づきつつある流れの結果として生じたものだと、エージェンシー幹部らは話す。だからこそ、マーケター勢はインフルエンサーらに対して、自分たちに協力させるための、より強力な動機を提供しなければならないのだ、と。

「ブランドやマーケターはより多くのクリエイターに、真のパートナー/コラボレーターとして接しなければならなくなっている」と、メカニズム(Mekanism)のチーフソーシャルオフィサーでパートナーのブレンダン・ガーハン氏は話す。「理由? ブランドとクリエイターの力関係が進化したからだ。以前は、クリエイターは生計を立てるのにブランドに頼るしかなかった。しかし、それがいまや一変している」。

ガーハン氏はこう続ける。「クリエイターは自分の仲間たちが自身のブランドやプロダクト、コミュニティを立ち上げ、かつてないほど儲けている姿を目にしている。いまや成功のシナリオができている。クリエイターはまず、自身に相応しいコンテンツマーケティング法を見つける。続いてオーディエンスを築く。続いて会社を立ち上げる。つまり、自分には選択肢がいくつもあることを、クリエイターたちは承知している。結果、ブランドはより魅力的なオファーを出すしかない、というわけだ」。

インフルエンサーショップ、ゴート・エージェンシー(Goat Agency)のストラテジー部門トップ、イエゴ・シャーマン氏も同様の見方をする。「関係性が逆転している。ブランドがインフルエンサーにこうしろ、ああしろと命じていたのが、いまでは、インフルエンサーに要望を覗っている状態だ」。

クリエイターの進化は今後も続く

もっとも、ブランドとのよりクリエイティブな、あるいは長期的な関係を結ぶことで、インフルエンサーの収益がどれほど上がるのかについては、定かでない。契約の内容は、それを結ぶエージェンシー幹部によって異なるが、基本的には、インフルエンサー、ブランド、そして両者の関係性次第、ということになる。

「その人の知識と専門技術に対価を支払うことと、その人のメディア価値に対価を支払うことには、明らかに大きな違いがある」と、インフルエンサーマーケティングショップ、ヴィレッジマーケティング(Village Marketing)の創業者ヴィッキー・シーガー氏は話す。「我々は相手に合わせたオファーを出しているし、クリエイターの価値については、その都度、互いに摺り合わせて決めるようにしている。ただ、彼らがブランデッドポストを使ってできることを考えれば、彼らの時間が極めて貴重であることも、もちろん認識している」。

広告の本質が大きく様変わりしており――業界のランドスケープは以前よりもはるかに分裂し、広く響かせることが難しくなっている――それを受けて、インフルエンサーがますます魅力的な存在になっているなか、この進化は今後も続くだろうと、マーケターおよびエージェンシー幹部は話す。

「事実、状況は一変した――いまやクリエイター各々が独自のオーディエンスとの現在進行形の関係を介して、カルチャーを定義し、そこに直に影響を与えている」と、カラUSA(Carat USA)のコンテンツ部門EVPおよびトップ、ケリー・ドイル氏は話す。「クリエイターは一対一の感情的な繋がりと影響力を有しており、究極的にはそれが、アウェアネスからパーチェスに至るまで、我々のビジネスのクロスファネルなボトムラインを推進している」。

[原文:As influencer marketing continues to mature, here’s why brands are hiring creators as ‘creative directors’

Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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