「当たり前」と思っていることも、歴史を紐解くと「当たり前」でないことは山ほどある。たとえば、「子どもは学校に行くべき」もその一つかもしれない。ヨーロッパでは「教育」は近代まで王侯貴族の特権であり、一般庶民の子とは無縁であった。まして、当時は「子ども」という概念すらなく、子どもは大人同様に扱われていた。常識は、時代とともに変わっていく。
本書は「なぜ学校に行かなければならないのか」という素朴な疑問から始まる。そして、本書の著者で主人公「僕」である孫泰蔵氏が、その問いを解くために時空を超えた旅に出るというストーリーだ。「僕」の前には、ホッブズ、ジョン・ロック、ルソー、フーコーなど、古今東西の“知の巨人”たちが次々と現れる。当時の姿そのままに「僕」と語らうシーンは、まるで本当に彼らが目の前にいるようでワクワクする。
現代の変化のスピードは速く、とくにテクノロジーや人工知能(AI)の進化は目をみはるものがある。多くのAI開発企業と関わってきた孫氏は、最先端のAIにふれるほど、今の学校教育が社会と乖離していることに危機感を覚えるという。本書は、「教育」や「学校」のルーツを辿ることで「当たり前」を根本から問い直し、新しい視点を獲得して、より良い未来を作っていこうという意欲的な1冊だ。大人が読んでもおもしろいが、既存の価値観に縛られ、息苦しさを感じている若い世代にこそ読んでほしい。未来は自分の手で変えられる――。そんな光が心に灯るはずだ。
今回ご紹介した「冒険の書 AI時代のアンラーニング」の要約記事はこちら。この記事は、ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」からの転載になります。