インフレはこの先どうなるのか

アゴラ 言論プラットフォーム

アメリカの1月度の消費者物価指数が発表になり、7.5%と40年ぶりの高さとなりました。事前予想は7.3%上昇でしたが、漏れ聞こえていたのはもう少し上になりそう、で事実、そうなりました。

私は春にはいったんこのインフレは収まるだろう、と申し上げました。インフレ率はCPIインデックスという基準値をベースに誰でも簡単に計算できるのですが、アメリカのインフレ率が目立って高まったのが21年4月からです。21年2月は1.7%、3月の2.6%だったのに4月にとんと上がり4.2%になっています。

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これはインデックスの数字が21年4月に伸びたためなので前年同期のインフレ率計算では先月比でインフレ拡大しない限り、3月までは当然高めに出て4月以降は収まりやすくなるのが一般的な見方です。実際に前月比でみると12月から1月は前月比同じの0.6%ポイントでインフレ率拡大は見られません。春になると暖房の消費が下がるのでこれもインフレ率低下要因になります。あくまでも世界情勢が現状のまま、という前提ですが。

いずれにせよこのインフレの一因ですが、バイデン大統領が就任し、不必要だったコロナバラマキをしたことでアメリカの物価の様相が変わった時期と合致しています。当時、元財務長官のサマーズ氏が「(そんなバラマキをしたら)近年見られなかったレベルのインフレ圧力を生む恐れがある」と述べたのに対し、経済諮問委員会は「インフレの懸念が全くないわけではないが、サマーズ氏の言うように経済は過熱していない。インフレ率は過去10年以上、FRBの目標である2%を下回ってきた」と軽く流しています。

実際には経済諮問委員会もFRBもイエレン財務長官も読み違えてサマーズ氏の見解が正しかったと言い切ってもよいのかと思います。とすればバイデン氏の就任祝いのバラマキと現政権の判断ミスが引き起こした人為的インフレ要因も当然加味されなくてはいけません。

これを端的にシンプルにした流れです。

コロナ経済低迷→バラマキ→労働者の就労意欲喪失→余暇時間の増大で限られた消費財に爆発需要→雇用側の人材不足→人件費高騰→労働者の就労先選択→生産性低下

もう一つの問題は行き過ぎたカーボンゼロ問題でした。個人的実感を申し上げるとCOP26の半ば失敗が原因でカーボンゼロは盛り下がり、ガス、石油の需要はさらに増大しました。一方の再生可能エネルギーの事業者の業績は世界どこも今一つで投資家の目線も厳しくなり、一種のブームの終焉となってしまいました。

但し、産業界では自動車のEV化は着実に進んでいますし、カーボン排出量の低減に向け世界規模で動きは活発化しているのでカーボンゼロが消えたわけではなく、一般人までを巻き込んだ話題性が下がったと認識しています。

更には半導体不足や貨物輸送問題は引き続きネックでコロナが生み出した産業界のバランス崩しの影響をずっと引きずっているというのがサマリーだと思います。

さて、私は実はそこそこの金額をカナダドルから円転しなくてはならなかったのですがこのCPI発表の前日に実行しました。理由は大きくぶれる可能性を見越してリスク回避したかったからです。その際、銀行には「カナダドルは米ドルに対して弱含むだろうが、円もドルに対しても弱くなるから相殺されるかな」と冗談交じりでコメントしていました。結果だけ見れば利上げ見込みのカナダドルは小幅安に留まる一方、円は一時116.34円まで付けました。

ここで日銀の金融政策について一言だけ述べたいのですが、日経に「日銀、14日に金利抑制策発動 国債を0.25%で購入」という一般の人がスルーする記事があります。これは金利の上昇を阻止するため、日銀が0.25%の指値で国債を購入し、金利高騰を防ぐ防波堤を作るという異例の政策です。

これが正しいのか、私は専門家の意見も聞いてみたいと思うのですが、世界的な金融政策からすると真逆ではないか、と思うのです。市場の動向を意図的に遮り、低金利を促すことで円はより安くなり、輸入物価は上がり続けます。事実、日銀が発表した1月の企業物価指数は8.6%上昇です。ならば本来であらば国債の利回りを上昇させ、市場に超低金利ないしマイナス金利時代終焉を周知させ、物価が想定上に上昇に向かうチャンスを見計らい、金融政策の正常化を図るべきだと思うのです。

日本の物価は健全なレベルでのインフレになるべきと思っています。そして産業全体で淘汰と再編が必要です。日本経済はある意味、守られ過ぎて変化対応力が弱まっています。経済の足腰を鍛えるには物価変動への柔軟性を持たせ、一定水準の競争力をつけることが意味ある経済対策だと考えています。

インフレは喜ばれないことですが、日本には良い刺激となるとみています。また、アメリカのインフレは春先から収まり始め、年末には2-3%台まで収束するという私の予想は現時点で崩していません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年2月11日の記事より転載させていただきました。

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