ミラノのブランド目標は サステナビリティ と国際的なアピール:アイスバーグ クリエイティブ・ディレクターへ5つの質問

DIGIDAY

ミラノで展示されたサステナビリティ

ミラノ・ファッションウィークは「世界中の注目が我々の業界に集まる」時期だと、オーストリアのテキスタイル会社レンツィング・グループ(Lenzing Group)のシニアビジネスデベロップメントマネージャー、シャロン・デニス・ペレス・アレヴァロ氏は言う。

だが、この時期はブランドやデザイナーが互いに注目し、自分たちの意思決定の参考にするために競合相手が何をしているかを見る時期でもある。したがってミラノ・ファッションウィークはファッションブランドにとって、サステナブルなイノベーションを披露する絶好の機会だとアレヴァロ氏は考えている。レンツィングはミラノで、オールバーズ(Allbirds)、リフォーメーション(Reformation)、H&M、リシュモン(Richemont)といったブランドにテキスタイルを提供している企業ナチュラルファイバーウェルダース(Natural Fiber Welders)と共同で、サステナブルなテンセル素材を発表した。アレヴァロ氏は、ミラノ・ファッションウィークはレンツィングが自社のサステナブルな木材パルプ繊維のためのコネクションを作り、新たな顧客を見つける機会だと語る。

しかし、今シーズンのミラノ・ファッションウィークでは、第3回目となるミラノ・エシカル&サステナブル・ショールームのように、よりサステナブルな実践に関心が寄せられているものの、結局のところ十分ではないとアレヴァロ氏は述べた。

「影響を減らすために純粋にできることをやろうとしているブランドと仕事をしているし、話題性のあるものや流行をただ追いかけたいだけのブランドとも仕事をしてきた」と同氏は言う。「残念ながら、我々の業界はかなりトレンドに主導される。そして現在はサステナブルであることがトレンドであるにもかかわらず、我々がやっていないことはあまりにも多い」。

イタリアのフットウェアブランド、アッティリオ・ジュスティ・レオンブルーニ(Attilio Giusti Leombruni)を経営するジュスティ三姉妹のひとり、ヴェラ・ジュスティ氏は、イタリアのファッション業界のサステナブルの実践におけるアーリーアダプターである。同ブランドは2006年には製造に太陽光発電の導入を開始。昨年は使用するソーラーパネルの数を2倍に増やし、全生産工程を太陽光発電に100%依存している。

同ブランドは、ミラノでモデルのクリステン・マクメナミー氏との新たなコラボレーションによるプレゼンテーションを行い、パンクにインスパイアされた黒のブーツとヒールのカプセルコレクションを披露した。

「新しい世代は、過去の世代よりもサステナビリティの問題に対してかなり敏感になっている」とジュスティ氏は話す。「私たちは2022年の多くの時間を費やしてパッケージを新たに考案し、今年はそれを完全にリサイクル可能なものにすることを目標としている」。

イタリアで創業しながら、新コレクションはロンドンでデザインされている。ジュスティ氏によれば、イタリアの古典的な製造技術にブリティッシュパンクの美学をいくらか取り入れることが、国際戦略の一部となっている。また、同ブランドは心から「つねに100%イタリア製であり続ける」が、最大の市場である米国では大きな存在感を示しており、中国ではTモール(天猫/Tmall)との提携により新たにビジネスを確立している。

「ニューヨーク・ファッションウィークやミラノ・ファッションウィークのバイヤーは皆とても楽観的だ」とジュスティ氏は言う。「バイヤーにしてみると今年は売上が非常に好調だったので、ブランドにとって百貨店がさらに前向きなものになると期待している。今年、当社は新しい事業としてサックス(Saks)に入る予定だ。流通が増えるのはよいことだ」。

アイスバーグのジェームス・ロング氏への5つの質問

イタリアのスポーツウェアブランド、アイスバーグ(Iceberg)が2月22日にミラノ・ファッションウィークにてショーを行い、同ブランドが2001年にパメラ・アンダーソン氏と撮影したキャンペーンイメージからインスピレーションを得たモノトーンのブラックレザールックを多数発表した。このショーの後、ミラノからロンドンに帰国する直前に、アイスバーグのクリエイティブ・ディレクター、ジェームス・ロング氏にインタビューを行い、今回のコレクションのインスピレーションやデザインへのアプローチ方法について話を聞いた。

ーー秋のコレクションはどこからインスピレーションを得たのか?

「2001年のパメラ・アンダーソン氏とのキャンペーンで、彼女がこのハイブーツを履いていたところが始まりだった。それは彼女にとってひとつの象徴的な時代だった。その特定の時期以外に2000年代のファッションを参考にしようとしたわけではなく、デザインをしているときは多くのものから影響を受け、インスピレーションを得ている。レザーやニットウェアなど、このブランドがいちばん得意とするものと、自分がもっとも得意とするものを考え、それらを組み合わせようとしている。したがって、今回のコレクションでは、レザーとフェイクファーやニットウェアなど、さまざまな素材を組み合わせたコントラストに着目した。パンキッシュだが、非常にイタリア的でもある。こうしたコントラストと、スタイリッシュだが着用できるというスポーツウェアの古い意味合いをつねに意識している」。

ーー当時のパメラ・アンダーソン氏のような役割に当てはまる現代のセレブリティはいるか? あなたにとってセレブリティのミューズは存在するか?

「我々はいまではあまりにも違う世界に住んでいて、セレブリティを目にする機会が非常に多いので、かつてパメラが持っていたような世界的なイメージを持つというのは難しいだろう。彼女はかなり誤解もされていたが、ファッションの象徴的なイメージ以上の存在だった。とはいえ、私自身は自分の作品に特定のセレブリティや特定の人物を起用することを避ける傾向にある。そういうことはあまり信用していない。つねに興味を持っているのは、さまざまな人が服をどのように解釈して着用するかということ。それが自分にとって重要だ」。

ーー黒を基調としたモノトーンのルックが多かったが、ファッションの世界は、明るい色から遠ざかっていると思うか?

「2年半ほどショーをしていなかったので、このコレクションを考える時間はたくさんあった。今回は気分を一新する機会だった。混乱したものにしたくはなかったので、とにかくシンプルにやりたかったし、何かダークなものがほしいという気持ちもあった。だが、色は自分にとって重要な要素であり、アイスバーグのDNAでもあるので、色に関してももっとやっていくつもりだ」。

ーーアイスバーグは典型的なイタリアのブランドだが、海外のオーディエンスに向けてデザインしているか?

「アイスバーグは来年創業50年になるので、長い時間ブランドとしてやってきたことになる。自分の視野はつねにインターナショナルだ。私はロンドン出身で、米国や韓国で多くのビジネスを展開するイタリアのブランドと仕事をしている。できるだけインターナショナルなブランドにしたいと思っているが、特定のマーケットを意識してデザインしてはいない。そうではないが、いろいろな国の人たちがどのように服を着ているかを見たい。なぜならアイスバーグには長い歴史があり、人によってブランドに違うイメージを抱いているからだ。ある人はクラシックなニットウェアのブランドだと思っているし、ある人はカートゥーンを使ったアイテムのことをよく覚えている(アイスバーグでは、ポパイなどのカートゥーンキャラクターを使ったコレクションをいくつか発表している)。どこに行っても異なるバイブスと異なる解釈がある。イタリアのブランドとしてのプライドを持ちつつ、ほかのアイデアも自由に取り入れられるブランドにしたいと思っている」。

[原文:Milan Fashion Week Briefing: Milan brands target sustainability and international appeal]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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