話題のAI「ChatGPT」、小売業者やプラットフォームがオンラインショッピングに相次ぎ導入している理由

DIGIDAY

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テック大手のマイクロソフト(Microsoft)が自社のビング(Bing)検索エンジンにオープンAI(OpenAI)のChatGPT(チャットジーピーティー)ツールを統合したことで、このツールが人気となり、小売業者はChatGPTや、ほかの人工知能関連アプリを自社のeコマース戦略に組み込む方法を検討しはじめている。

11月に公開されたChatGPTはAI駆動の対話用ツールだ。このツールの会話式のフォーマットは爆発的な人気となり、多くの使用事例でChatGPTツールが補足質問に回答したり、不適切な要求を拒絶したり、以前のコンテキストを考慮したりする様子が示されている。オープンAIはChatGPTへの無償アクセスを提供し続けているが、同社は、より高速な応答、新機能や改良点への優先アクセスなどの特典がある月額20ドル(約2720円)のサブスクリプションプランも開始した

ショッピング体験の向上に期待

大手のeコマース業者は現在、これらのツールが自社事業の成長に役立つかどうかを見定めようとしている。

ChatGPTの導入や、同様のツールの自社開発を検討しているeコマース企業のほとんどは、AmazonやShopify(ショッピファイ)のようなテック主導の大規模企業だ。また、自社のマーケティングキャンペーンでChatGPTを利用することに関心を持っている新興企業もいる。たとえばナイフブランドのミセン(Misen)は、最近のメールによるキャンペーンでAIツールに言及した。

しかし、大手プラットフォームはすでに重要な発表を行っている。中国の小売業者のJDドットコム(JD.com)は、ChatGPTと同様のツールを立ち上げると述べた。AmazonのCEOを務めるアンディ・ジャシー氏は2月13日、同社は長年にわたってChatGPT形式のツールに取り組んできたと語った。そして、Shopifyは今月初め、ベンダーや加盟店が商品の説明文を作成するのを支援するAIツールを公開した

小売の専門家やアナリストによれば、ChatGPTが新たに人気になったのは、AIが買い物客や買い物客が希望する行動について、多くのことを学び、ショッピング体験を向上させることを予感させるものだという。まだ初期段階ではあるものの、ChatGPTのようなAI駆動のツールはパーソナライズされたショッピングでのレコメンデーション、商品に関する質問への回答、さらには購入プロセスの支援にも活用できるかもしれない。しかし、このようなツールは今のところ黎明期にすぎない。

パーソナライゼーションへの投資

また、AIは新しいツールではない。ブランドや小売業者はすでに数年にわたって、AI駆動のパーソナライズされた商品のおすすめを行うため、多額の投資を行ってきた。インスタカート(Instacart)などのプラットフォームは、AIを使って顧客をよく理解し、関連するレコメンデーションを使って顧客のニーズを予測してきた。「当社のAIを使用すると、アイテムの価格を調整し、顧客の予測される行動に基づいてインセンティブを作成して、検索やレコメンデーションにおいてパーソナライズされた機会を提供することで、より魅力的でパーソナライズされた体験を生み出すことができる」と、同社はメールの声明で述べている。

「小売業には、マイクロソフトがChatGPTのために特定した、直接的な使用事例がある。ChatGPTは検索プロセスに介入し、検索クエリに対して広告の影響を受けない回答を返すことができるということだ」と、コマースコンサルタント会社コンフリューエンスコマース(Confluence Commerce)の創設者であるブライアン・ギルデンバーグ氏は述べる。

「顧客体験に介入できるものがあり、それが少なくとも短期的には広告に基づかない方がうまくいくとしたら、TikTokのスタートがインスタグラムにとって非常に破壊的だったのと同様に、それは本質的に破壊的なものとなる」と、同氏は付け加えている。

チャットを使った新しい使用事例

消費者向け企業は、ChatGPTより前にも、さまざまな使用事例においてAIを使用してきた。ミッドジャーニー(Midjourney)、ステーブルディフュージョン(Stable Diffusion)、ダリ(DALL-E)のような、ディープラーニングによるテキストから画像への変換モデルはAIのイノベーションを支配してきた。マーケティング担当者やブランドは、アートディレクションや、クリエイティブ思考、アイデア創造にそれらを役立ててきた。

しかし今、AIの最先端の進歩はライブチャットで行われている。ティヌイティ(Tinuiti)で新技術のプラクティスリードを行っているニリッシュ・パーサッド氏は、ChatGPTが非常に刺激的である理由は会話の要素だと言及している。同氏は、ChatGPTは、さまざまなeコマース体験を持つ顧客のための、オンサイトでの買い物相談係として使用できると述べている。「これによって、パーソナライゼーションの体験は、さらに進化を遂げるだろう。ChatGPTは会話とコンテキストを記憶することができる。そのため、ChatGPTがその人個人を知っていくようになると、サイト上でも、継続的なメッセージングでも、非常に興味深い体験ができるようになる。私はこのような次の段階の体験がどのようなものになるか非常に期待している。今の時代にはまだ存在しないものだ」と、同氏は語る。

「これまで我々が経験してきたAIは受動的なものだ。Netflixや、Amazon、ターゲット(Target)は顧客の行動を学習し、それに応じた体験を用意する。しかし、AIに話しかけることができるようになったのはこれがはじめてだ」と、同氏は続ける。

ChatGPTの対話形式の可能性

ギルデンバーグ氏も、ChatGPTが「不器用なFAQ形式の対話を、実際の人間と話しているかのように感じられるものへ変えようとしている」ことに同意している。

同氏は、ShopifyやAmazonなどの企業は、AIの使い方を何年も模索してきており、ゆっくりと段階的に改善されてきていると付け加えている。Amazonは、音声アシスタントのアレクサ(Alexa)など多くの用途にAIを使用している。「しかし、検索クエリに対して、Googleアルゴリズムよりも優れたテキストベースの応答をAIを使って作成するのは、かなり特殊な使用事例だ」と、同氏は語る。

結局のところ、ChatGPTなどのAIのイノベーションは、世界がよりデジタル化するにつれて重要であり続けるだろうと、ギルデンバーグ氏は語る。また同氏は、オンラインの美容品分野で、セフォラ(Sephora)やアルタ(Ulta)に対抗しようとしているウォルマート(Walmart)のような小売業者にとって、ChatGPTは興味深い可能性を生み出すだろうと示唆している。「ウォルマートはマイクロソフトと提携して、ChatGPTによる美容機能を構築できる。これによって、アイライナーの予算が20ドル(約2720円)ではなく4ドル(約544円)しか使えない買い物客に、深くパーソナライズされた体験を提供できるようになるかもしれない。もし私がハイエンドなサービス提案に対抗しようとしている中堅の小売業者なら、この技術によって可能となることは、極めて興味深い用途だと思うだろう」と、同氏は付け加えている。

[原文:Why retailers and platforms are rushing to incorporate AI and ChatGPT into online shopping]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via OpenAI

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