リチウムイオン電池の4倍近い性能を発揮する可能性のある「リチウム空気電池」の新設計が発表される

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リチウムイオン電池に比べて単位重量当たりの電池の容量が大きく、自動車や航空機への採用が期待されているリチウム空気電池の新設計を、アメリカ合衆国エネルギー省傘下のアルゴンヌ国立研究所が発表しました。

A room temperature rechargeable Li2O-based lithium-air battery enabled by a solid electrolyte | Science
https://doi.org/10.1126/science.abq1347

New design for lithium-air battery could offer much longer driving range compared with the lithium-ion battery | Argonne National Laboratory
https://www.anl.gov/article/new-design-for-lithiumair-battery-could-offer-much-longer-driving-range-compared-with-the-lithiumion

これまでのリチウム空気電池は、サイクル寿命が非常に短いという欠点がありました。この欠点を補うためにアルゴンヌ国立研究所のチームは設計を見直し、従来の設計で使用する液体に代わり固体電解質を採用するという新設計を考案しました。

従来のリチウム空気電池の設計では、負極のリチウムが液体電解質中を移動して放電中に酸素と結合し、正極で過酸化リチウムまたは超酸化リチウムが生成されます。過酸化リチウムや超酸化リチウムは充電時にリチウムと酸素の成分に分解され、この化学反応によりエネルギーが貯蔵・放出されます。

研究チームが開発した新設計のリチウム空気電池では、比較的安価な元素をナノ粒子状にしたセラミックポリマー材料を固体電解質にしており、化学反応によって酸化リチウムを生成することができます。チームによると、過酸化リチウムの化学反応では酸素1分子あたり1~2個の電子が蓄えられるだけですが、酸化リチウムの化学反応では4個の電子が蓄えられるとのことで、従来の設計よりも高い効率を発揮するとのこと。

また、同チームが設計したリチウム空気電池は室温で4電子反応を実現した初めての電池であり、周囲の環境から酸素を供給して動作させることができるものでもあります。周囲の空気で動作することにより、従来の設計の問題点であった酸素ボンベの必要性を回避することができるのも特徴としています。

固体電解質はリチウムイオン電池などで使われている液体電解質のように発熱や発火などの安全上の問題がなく、チームが設計した電池はリチウムイオン電池に比べてエネルギー密度を4倍も高めることができる可能性があります。これにより「バッテリー容量は同じままバッテリーサイズを小さくする」ことや「バッテリーサイズは同じまま容量を大きくする」ことが可能となるため、バッテリーを動力源とする電気自動車などでは航続距離の延長が実現可能となります。


アルゴンヌ国立研究所のラリー・カーティス氏は「さらに開発を進めれば、私たちの新しいリチウム空気電池は1kgあたり1200Whという記録的なエネルギー密度を達成できると期待しています」と語っています。これは、リチウムイオン電池の4倍近い性能です。

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