「ガスコンロは体に悪い」は本当か？

オール電化の普及に伴い、近年は電熱ヒーターで料理をする電気コンロや熱くならないIHクッキングヒーターなどが台所に普及していますが、ガスを燃焼させるガスコンロも火力にこだわる人から根強く支持されています。そんなガスコンロの健康への影響について、空気汚染と住環境の専門家が論じました。

Is your gas stove bad for your health?
https://theconversation.com/is-your-gas-stove-bad-for-your-health-186454

ボストン大学公衆衛生学部長のジョナサン・レヴィ教授によると、ガスコンロの使用に関連する汚染物質として代表的なのは、ガスの燃焼に伴って発生する二酸化窒素だとのこと。家庭内での二酸化窒素への暴露は、小児ぜんそくの重症化や吸入薬の使用増加に関連していることが分かっているほか、大人のぜんそくにも影響があることや、慢性閉塞性肺疾患の発症と悪化の両方に寄与することも判明しています。

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もちろん、二酸化窒素の発生源はガスコンロだけではありません。自動車の排気ガスにも二酸化窒素が含まれているため、幹線道路に近い場所に住んでいる人ほど二酸化窒素による健康被害が発生しやすいとのこと。しかし、南カリフォルニアで実施された研究により「約半数の家庭では二酸化窒素の濃度が健康に関する基準を超えており、その原因のほとんどが屋内で発生したものだった」ということが突き止められていることなどから、レヴィ教授は「多くの場合ガスコンロは屋内における汚染物質の主要な発生源です」と述べています。

大型トラックが行き交う高速道路よりたった1台のガスコンロの方が影響が大きいのは、屋外で発生した二酸化窒素は広範囲に拡散するのに対し、屋内の空気汚染は狭い範囲に集中するからです。そのため、ガスコンロの健康への影響は家の構造に大きく影響されます。具体的には、屋内に空気を排出するレンジフードを使用している家庭や、大きくて換気がいい家に住んでいる人は、小さい家に住んでいる人より悪影響が小さくなるとのこと。

こうした点から、レヴィ教授は「たとえ大きな家でもガスコンロの使用によって影響を受ける可能性はあります。なぜなら、キッチンの空気はほかの部屋の新鮮な空気と混ざりにくいからです。そこで、調理中はキッチンの窓を開けたりレンジフードを使用したりするといった換気対策をすれば、汚染物質の濃度を劇的に下げることができます」と提言しました。

ガスコンロから発生する有害な汚染物質は、二酸化窒素だけではありません。実は、ガスコンロを使っていない間も汚染物質が放出され続けている可能性があるとのこと。住宅の熱源から発生する汚染物質について調べた2022年の研究によると、アメリカの家庭で使用されているガスコンロは未使用時にもメタンガスを発生させており、その地球温暖化への影響は自動車約40万台の熱を大気中に閉じ込めるのと同じレベルだったとのことです。

ガス漏れは健康被害だけでなく火災などのリスクもあるため、ガスには臭いが付けられています。しかし、家庭用の天然ガスのガス漏れについて調べた研究では、約5％の家庭で住人には気がつかないガス漏れが発生していたことが判明しており、特に近年は新型コロナウイルス感染症の後遺症で嗅覚に問題がある人が増えていることが予想されるため、ガス漏れの懸念は高まっているとのこと。

そこでレヴィ教授は、ガスコンロがある家庭はIHクッキングヒーターのような電磁調理器に切り替えるようアドバイスしています。なぜなら、こうした調理器具はエネルギー効率にも優れているため、健康被害だけでなく気候変動への影響も低減させることができるからです。また、レヴィ教授はガスコンロから切り替えない場合は前述の通り換気を徹底することを推奨しました。