少し歩くだけで失神する病を患った女性が「脊髄への電極埋め込み手術」によって歩行能力を回復

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下半身不随の患者が「脊髄に電極を埋め込んで筋肉を動かすための電気刺激を送る」という手法によって歩けるようになったという研究報告が2022年2月に発表されました。2022年3月には新たに「少し歩くだけで失神してしまう患者」の脊髄に電極を埋め込むことで歩行可能距離を伸ばすことに成功したことが報告されています。

Implanted System for Orthostatic Hypotension in Multiple-System Atrophy | NEJM
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2112809

A woman would faint whenever she tried to stand. New implant lets her walk. | Live Science
https://www.livescience.com/spinal-implant-for-multiple-system-atrophy

「脊髄に電極を埋め込む」という手法を研究しているのは、ローザンヌ大学病院の研究チームです。研究チームは以前に交通事故で下半身を動かせなくなった男性患者3人の脊髄に電極を埋め込む実験を行い、患者を歩かせることに成功しています。

脊髄損傷で体がマヒした3人の男性が脊髄に埋め込まれた電極で再び歩けるように – GIGAZINE


新たに報告された研究は、多系統萎縮症(MSA)を患った女性が対象となりました。健康な人の場合、血圧が下がると心臓が脳に信号を送り、脳が脊髄を通して動脈を収縮させる信号を送ることで心臓の鼓動が速まり血圧が元に戻ります。しかし、MSAの患者は信号をうまく伝達できないため、MSA患者の約80%が立ち上がる際に急激に血圧が低下して失神に至る「起立性低血圧」に苦しんでいます。被験者の女性も最大5メートルしか歩けず、1日に何度も失神していたとのこと。

今回の研究では、神経の信号伝達の可否に関係なく血圧を下げられるようにするべく、被験者の脊髄に「加速度センサーで立つ動作や歩く動作を検知し、動脈を収縮させる信号を送る」という機能を持ったデバイスを埋め込みました。


被験者はデバイスを埋め込む前は5メートルしか歩けませんでしたが、デバイスを埋め込んでから1カ月後には50メートル歩けるようになり、3カ月後には250メートル以上歩けるようになりました。さらに8カ月後には被験者が「失神することがなくなった」と報告したとのこと。


MSAの患者は、発症から9~10年で死亡に至ることが知られています。研究チームを率いるジョセリン・ブロッホ氏は今回の実験では歩く能力をサポートしたのみで、MSAを治療できたわけではないと前置きしつつ「完璧ではありませんが、デバイスを埋め込む前より良好な状態になったと言えます」と述べ、脊髄への電極埋め込み手術の効果を強調しています。

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2022年04月07日 19時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1o_hf

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