Twitter は今後もブランドがトレンドを語る場となるのか?:「2023年に、TikTokがTwitterよりも大きくなることはありえない」

DIGIDAY

マーケター勢は、TikTokがこの先Twitterを王座から引きずり下ろし、米国の大多数が見守る国民的イベントのセカンドスクリーンに、つまりはリアルタイムで反応するためのプラットフォームになるだろう、と見ている。

スーパーボウルやワールドカップ、グラミー賞といった人気イベントに関して米国人が交わす鮮度のよいオンライン会話の場といえば、まずはTwitter、という状態が業界の常識となって久しい。だが、Twitterおよびその周辺ではこのところ、イーロン・マスク氏による買収以来、大きな混乱が続いており、そのため、いわば重い扉が開き、同業他社がつけ込める状態になっている。そうしたなか、ライブイベントへの参加を求めるユーザーが群がるTikTokは、勢いを増し続けている。

「Twitterのお家騒動は、いまや世間の誰もが知っており、ブランド勢がほかのプラットフォームを考えるための種が撒かれたのは、間違いない」と、マーケティングエージェンシーであるプロダクト(Product)のチェアマンにして創業者のアーロン・シャピロ氏は話す。「つまり、TikTokがこれまでよりもさらに重要な存在となったのは、確実だ」。

ハッシュタグ数ではTikTokが圧勝

数字で見てみよう。ソーシャルメディア管理システムのフートスイート(Hootsuite)からDIGIDAYに提供されたデータによれば、2022年度グラミー賞に関するTwitterのハッシュタグ数は1250万弱。これに対し、「#Grammys2022」のTikTokにおける視聴数は8億8500万回だった。

2023年2月第2週の日曜に開催されたスーパーボウルにおいて、TikTokは広告費の獲得に向けて積極的に動いており、Twitterを打ち負かし、この大一番の第2のスクリーンになるべく、さまざまなインセンティブを広告主に提供したTwitterの広告事業が激しく落ち込み、ユーザー数が急減するなか(市場調査会社のイーマーケター[eMarketer]によれば、2022年から2023年にかけて1000万人を失った)、同社の苦境はTikTokをはじめとする競合他社にとって大きなチャンスになりうると、シャピロ氏は指摘する。

この2年間、広告主は成長チャネルとしての可能性に賭け、バズりを期待してTikTokに入札を続け、広告予算を投じてきた。ただ、この勢いが続いているのは、あくまでもTikTokが独自の広告フォーマット、パーソナライゼーション、入札形式を確立したからこそでもある(詳細はこちら)。TwitterとTikTokには実際、メッセージの拡大能力という点で、共通性がある。前者のそれは、リツイート、引用ツイート、リプライ、ハッシュタグであり、後者のそれは、デュエット、ハッシュタグ、スティッチとなる。

一方、最大の違いは、TikTokのアルゴリズムがTwitterのそれのように、リアルタイムでの参加に適したものではない点にある。ひとつのツイートがほんの何時間でバズることもある一方、TikTokのトレンドコンテンツは何日か、ときには何週間も後に出てくることもある。TikTokの強みはしかし、そのアルゴリズムと発見機能、バズりを起こしやすい性質にあり、マーケター勢はだからこそ、TikTokを文化的に重要な瞬間に参加するための、新たな発展可能な方法と捉えている。

「TikTokが非常に得意とするのは、一気に拡散されうる文化的ミームおよび瞬間の創造だ」とシャピロ氏はいう。「いまその瞬間に起きていることよりもむしろ、大勢のTikTokクリエーターと広く拡大できる、文化的キャッシュ(cache)を創れるか、にフォーカスしている」。

参加するハードルが低いのはTwitter

とはいえ、王座交代は一朝一夕には起きないだろう。少なくとも2023年は、Twitterがライブイベント界の頂点に君臨し続けると思われる。前述のとおり、Twitterのお家騒動のおかげで扉は開いているが、ユーザーがそこから一歩踏み出して別のプラットフォームに、なかでもTikTokに行くのには、まだしばらくの時間を要するだろうと、マーケター勢は指摘する。

「2023年に、TikTokがTwitterよりも大きくなることはありえない。我々が何年も費やして学んできたとおり、それはどう考えても無理だ」と、広告エージェンシーのジャイアントスプーン(Giant Spoon)のパートナーでクリエイティブ部門のトップ、ノエル・コットレル氏は話す。ただし、2~3年の内に、そして人々のソーシャルメディアの消費行動が移り変わっていくなかで、TikTokがライブイベントの次なる中心になる可能性は十分にあると、同氏は言い添える。

現在、TikTokはTwitterよりも、入る際のハードルが高い。動画制作には、呟くよりも時間がかかる。そして、一部のブランドにとっては、諸手続きを進めて当局の認可を得るのに、より長い時間がかかる。加えて、TikTokのアルゴリズムでは、コンテンツをトレンドにしたりバズらせたりするのにかなりの時間を要する場合があり、Twitterの即時反応を可能とする性質とは、大いに異なる。

「したがって、今後、イベントが一晩以上にわたって続く場合には、TikTokにリアルタイムなアプローチが見られることになるだろう。たとえば、オリンピックはその代表例だ」と、電通クリエイティブのシニアソーシャルストラテジストであるシェルビー・ジェイコブ氏は話す。つまり、TikTokはより長いリードタイムを擁するライブイベントに適したプラットフォームとも言える。

二者択一はナンセンス

ただし、まだTwitterの希望がすべて消えたわけではない。逃げ出した広告主は少なくないが、Twitterはスーパーボウルを前にして、広告主をその気にさせ、彼らの信用を取り戻する手を打っている。たとえば、マクドナルド(McDonald’s)はすでにTwitterに戻っており、少なくともオーガニックポストは投稿している。また、AmazonもTwitterに広告費を再び投入する計画があると、ビジネスインサイダー(Business Insider)は報じている

「TikTokがTwitterに『取って代わる』という考えは浅はかだ」と、クリエイティブエージェンシーのメカニズム(Mekanism)でチーフソーシャルオフィサーおよびパートナーを務めるブレンダン・ギャハン氏は、DIGIDAYへのeメールで指摘する。「TikTokと短尺動画の人気がいくら高まろうが、文字コンテンツがこの先、完全に取って代わられることはない」。

ギャハン氏にしてみれば、これはTwitterかTikTokか、という二者択一ではなく、むしろ、各プラットフォームが異なる目的に適う、ソーシャルメディア分散化の話だという。「これまで何年にもわたり、我々はソーシャルメディアを一括りにしたり、またバラしたりを続けてきた。しかし、新たなプラットフォームはそれぞれに異なる目的に適うかたちで登場する。たいていは、一方が上がれば、必ずもう一方が下がるというゼロサムゲームのような、単純な話ではない」。

[原文:Will Twitter continue to be where brands comment on the Super Bowl – or will TikTok play usurper?

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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