こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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レトロスタイルのランニングシューズが再流行していることから、ホカ(Hoka)やサロモン(Salomon)などのブランドはスニーカーの再販に勢いを得て、長いあいだナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)などの企業にコントロールされてきた市場に食い込もうとしている。
従来からの大手フットウェア企業は依然として市場を支配しているが、スニーカー愛好家は自分たちのコレクションのバラエティを増やし、人気のスニーカー以外のシューズを探求するため、中堅でよりニッチなブランドに目を向けるようになってきている。
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ニッチなブランドが急成長
ナイキ、ジョーダンブランド(Jordan Brand)、アディダス、ニューバランス(New Balance)、コンバース(Converse)は再販サイトのストックX(StockX)で昨年もっとも売れたスニーカーのブランドだ。しかし、金星はサロモンで、ストックXで2022年にもっとも急速に成長したブランドとして、2021年に比べて2277%増加した。2位はホカで、2021年と比べて713%増加した。一方でアシックス(Asics)のようなブランドは、ジョウンド(JJJJound)などの話題のデザインスタジオと提携したことで推進力を得てきている。これらの企業は全体として、再販の大手企業に対して戦いを挑んでいるが、追い付くにはまだ開きがある。
ストックXでスニーカーおよびコレクターズアイテムのディレクターを務めるドルー・ヘインズ氏は次のように述べている。「これらのブランドは優れた業績をあげている。スニーカー愛好家は、『ジョーダンをたくさん持っている。ダンク(Dunk)をたくさん持っている。ほかの人たちと違うもので目立つには何を持てばいいだろう?』と語っている。これらの小規模なニッチブランドの成長の多くは、このような考えに促進されたものだといっていいだろう。そして、2023年にもこの傾向は続くと考えられる」。
コラボレーションが成長のきっかけに
モデルや配色によって異なるものの、全体として、これらのニッチブランドは小売価格に近い価格で再販され、これも潜在顧客にとって、より魅力的な存在になっているのかもしれない。ストックXのナイキエアーフォースワン・ローオフ・ホワイトブルックリン(Nike Air Force 1 Low Off-White Brooklyn)は2022年のあらゆるスニーカーのなかでもっとも高い912%という平均価格プレミアムが付いた。一方で、ホカワンワンボンディー7(Hoka One One Bondi 7)やアシックスゲルカヤノフォーティーン(Asics Gel-Kayano 14)のスニーカーは、1ケタまたは2ケタの価格プレミアムが付いている。
新たに話題となったこれらのブランドの多くは、親会社に膨大な額の収益をもたらした。ホカを保有しているデッカーズ(Deckers)は、第3四半期に過去最高の13億4600万ドル(約1760億円)の純売上を記録した。ホカの純売上は前年比で91%近くも急増し、3億5210万ドル(約461億円)に達した。このブランドの人気は「並外れたものだ」と、デッカーズのCEOを務めるデビッド・パワーズ氏は最近の決算発表で言及した。「我々が計画した通り、おそらくはそれ以上の業績だ」と、同氏は述べている。
ホカとサロモンがコレクターにとってこれほど魅力的になった理由のひとつは、両社のコラボレーションだと、ストックXのヘインズ氏は説明する。ホカは昨夏、フリーピープル(Free People)と共同の商品ラインを発売した。また、モンクレール(Moncler)やエンジニアドガーメンツ(Engineered Garments)とも提携した。英国のデザイナーのジャン・リュック・アンブリッジ氏は1月、全地形対応フットウェアのカプセルについてホカと提携することを発表した。サロモンはパレス(Palace)や、コムデギャルソン(Comme des Garçons)、キス(Kith)などのブランドと協業してきた。
スニーカー市場の後退が再販に及ぼす影響
スニーカーの再販に関して、2022年はストックXにとってこれまでで最良の年であり、コーエン(Cowen)は全世界のスニーカー再販の売上が2020年の60億ドル(約7860億円)から、2030年には300億ドル(約3兆9300億円)に達すると予測している。しかしスニーカー市場全体では、2021年に最高値を記録したあとで後退し、多少の不調に陥っている。ビジネスオブファッション(Business of Fashion)によると、2022年のスニーカー売上高は前年比2.7%増で、2021年の前年比19.5%増には大きく劣っている。市場全体の減速は、再販サイトに出品されるシューズにも影響を及ぼす可能性がある。
スニーカーのリセラーは、需要の変化やボットからの妨害に加えて、アディダスのイージー(Yeezy)ラインに関する混乱など、ブランド固有の課題にも取り組んできた。そして、ガソリンや食品の価格が昨年上昇したことから、買い物客がコレクターズアイテムとして人気のスニーカーを購入するための予算が減少している可能性がある。これらのスニーカーのなかには再販価格が数千ドルに達するものもある。
スニーカーの再販について、グローバルデータリテール(GlobalData Retail)のマネージングディレクターを務めるニール・サンダース氏は、「一般的に、需要はまだ存在すると考えている。問題は、こうした品物にお金を払い、一部の価格を最高のプレミアムにまで押し上げる資金があるかどうかだ」と、米モダンリテールに語った。
ニッチで安価なスニーカーに注目が集まる
過去数年間にわたって、ラグジュアリーブランドはスニーカーの再販市場における地位を確固なものにした。2019年にストックXは事業を拡大し、シャネル(Chanel)や、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)、ディオール(Dior)、バレンシアガ(Balanciaga)のスニーカーの販売をはじめた。eBayのような従来型のマーケットプレイスも、失った市場価値を奪還すべく、ラグジュアリースニーカーの再販を開始した。しかし現在は、通常のナイキやアディダスの人気のバスケットボールシューズよりも安価で入手しやすいほかのブランドに注目が移りつつある。
サンダース氏は次のように述べている。「資金が潤沢な頃なら、人々は望むスニーカーを入手するために惜しげなく代金を払ったろう。今でもそのように代金を払える人々入る。しかし、そのような資金を持たない人が大部分だ。そのため、スニーカーの購入について控えめな傾向があると考えている」。
再販で好調なホカやサロモンのようなニッチブランドは、自社の成長について楽観的だ。これらのブランドの多くはソーシャルメディアで人気があり、Z世代やミレニアル世代の買い物客のあいだでも売れはじめた。これらのブランドは、再販されているほかのブランドのいくつかと比べると、比較的安価でもある。たとえばホカのスニーカーは、ゴート(Goat)で54ドル(約7100円)のものがあり、サロモンは64ドル(約8380円)のものがある。
これらのブランドの人気を考えれば、「今から1年後、2024年になってから2023年の売上を見返したとき、サロモンとホカが再度リストの最上位になっていたとしても驚くにはあたらない」と、ストックXのヘインズ氏は述べる。
[原文:How mid-tier brands like Hoka and Salomon are changing the sneaker resale game]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Hoka