世界では、まだ生きている人を「死んでいる」と誤認してしまうことがごくまれに発生します。なぜこのような事態が起きてしまうのか、アングリア・ラスキン大学医学部上級講師のスティーブン・ヒューズ氏が分析しています。
Being declared dead when you’re still alive – why these very rare events occur
https://theconversation.com/being-declared-dead-when-youre-still-alive-why-these-very-rare-events-occur-199524
2023年2月4日11時ごろ、ニューヨーク州ロングアイランドの介護施設で82歳の女性の死亡が確認され、葬儀場に運ばれたものの息をしていることが発覚、ただちに病院に搬送されるという出来事が起きました。
An 82-year-old woman was found alive at a New York funeral home after she was pronounced dead hours earlier, police say | CNN
https://edition.cnn.com/2023/02/07/us/new-york-woman-found-alive-funeral-home/index.html
過去にも、病院で死亡が確認され生命維持装置を外された女性が10分後に蘇生したり、死亡が確認されたため霊安室に安置されていた女性が息を吹き返したりと、複数の「蘇生」案件が確認されています。
人が本当に死んでいるかどうかの確認は、間違っていたときに大きな問題になるため、昔から念入りに行われてきています。たとえば船乗りの間では、遺体を帆布で包んだ後、最後の一針を遺体の鼻に通す習慣がありました。これは、もし生きていたら痛みで目を覚ますという、最終確認のためです。
さすがに、現代では死んでいるかどうかを確かめるのに針を刺すような方法は用いず、心音と呼吸音が一定時間以上ないこと、瞳孔が固定し散大状態にあること、いかなる刺激にも反応しないこと、などの条件を満たしたときに死亡していると確認します。
それでも、死亡確認したはずの人が生き返る事例が散見されます。事例はヨーロッパではほとんどみられないことから、ヒューズ氏は医学的な死亡確認の手順の違いが影響している可能性のほか、医者にかかるお金がないときに死亡確認が正しく行われず死亡扱いにされてしまっている可能性を指摘しています。
生存の兆候を見落としてしまうケースとして、たとえば呼吸が極めて浅い場合は、心音や呼吸音に気付かない可能性があります。また、冷たい水につかると心拍数が落ちるため、死んでしまったと錯覚することがあります。
このほか、鎮静剤を過剰に摂取した場合、鎮静剤が脳を酸素欠乏から守ると同時に反応性を低下させ、呼吸と循環が抑制されることから、まるで死んでいるように思えてしまうことがあるとのこと。
また、失神の事例も挙げられています。ホンジュラスでは、妊娠中のティーンエイジャーが近所で発生した銃声を聞いたショックで死亡したとして埋葬されましたが、翌日、墓の中で叫んでいるのが見つかった事例が報告されています。このティーンエイジャーは長時間失神状態にあり、それが死亡と誤認されたとみられます。
なおヒューズ氏は、「死んだはずの人が生き返った」という事例は、発生するとセンセーショナルに取り上げられるため目立つものの、あくまでまれな事例であると述べています。
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