ゾウの密猟者をサーモカメラと機械学習で発見するシステムを17歳少女が開発

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象牙はゾウの個体数減少につながるため、ワシントン条約で採取や商業取引が原則禁止となっています。しかし、工芸品の素材として今もなお人気があるためにゾウの密猟は後を絶たず、2002年から2011年の間にアフリカゾウの個体数はおよそ62%も減少したと言われています。そんなゾウの密猟を減らすべく、監視映像からゾウの密猟者をリアルタイムで検出するシステムを17歳の少女が開発し、話題となっています。

This Teenager Invented a Low-Cost Tool to Spot Elephant Poachers in Real Time | Innovation| Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/innovation/this-teenager-invented-a-low-cost-tool-to-spot-elephant-poachers-in-real-time-180980522/

システムを開発したのは、ニューヨーク出身のアニカ・プリさん。プリさんは2018年に家族でインドを訪れた時、30年以上前から象牙の取引が違法になっているにもかかわらず、ムンバイの市場に象牙のジュエリーや彫像が並んでいるのを見てショックを受けたとのこと。

プリさんが自分でゾウの密猟について調べたところ、現地では密猟者の姿を撮影するためにドローンが使われていることを知ったとのこと。プリさんはドローンが捉えた監視映像を見て、ゾウと人間の動きのパターンが大きく異なることに気づきました。

そこで、密猟者を監視映像から検出する精度を高めるために、プリさんは2年の歳月をかけて「ElSa」というシステムを開発しました。プリさんは9年生(日本の中学3年生)の時にスタンフォード人工知能研究所のサマープログラムに参加し、AIについて学んだばかりだったそうです。また、プリさんは10年生の時には音楽や芸術とAIを組み合わせるワークショップを開催する非営利団体・mozAIrtを設立したそうです。

このElSaは、iPhone 6に挿すだけで熱赤外線(サーモ)カメラとして使えるFLIR ONE Proで撮影された人間とゾウの動きを機械学習で分析するツールです。FLIR ONE Proがどういうカメラなのかは以下の記事を読むとわかります。

スマホ外付けのサーモカメラとして使える「FLIR ONE Pro」レビュー – GIGAZINE


プリさんは、このElsaは既存の検出方法よりも4倍正確だとコメント。また、ElSaで使われる206×156ピクセル解像度のFLIR ONE Proはわずか数万円で、高価な高解像度サーモカメラを買う必要がないので、ElSaは従来の検出方法よりもコストパフォーマンスに優れていると述べています。

ElSaのプロトタイプを開発したプリさんは、mozAIrtで知り合ったコンピューター科学者であるボンディ・ケリー氏と連絡を取り、アフリカの複数の保護地域で運用されるドローンのサーモカメラによる監視映像のデータセット「(PDFファイル)BIRDSAI」を使って、人間とゾウの動きのパターンをElSaに学習させました。さらにプリさんはドローンを自分で操縦するための免許も取得し、自宅の裏庭で研究を行ったそうです。


その結果、ElSaは90%以上の精度で監視映像から人間を検出できたとのこと。オランダのワーヘニンゲン大学の生態学者であるJasper Eikelboom氏は「高校生が研究と分析を行うだけではなく、プロトタイプとはいえシステムへの実装を成し遂げたことは非常に驚くべきことです」と称賛しています。

プリさんは2022年秋にマサチューセッツ工科大学に入学し、電気工学とコンピューター科学を学ぶ予定。将来的にはElSaを他の絶滅危惧種の動物にも適用できる計画を考えているそうで、次はサイの密猟対策に応用する予定だとのこと。また、アフリカの国立公園でのElSaの実際の運用や、ドローンの飛行コースで最大パフォーマンスを示すための経路計画アルゴリズムの研究も考えているとプリさんは述べています。


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