割礼とは男性のペニスまたは女性のヴァギナの一部を切除する行為であり、一部の宗教や民族は儀式的な行為として、幼少期に男児のペニスから包皮の一部を切除します。そんな割礼が行われた子どものペニスでは、微生物叢(そう)に変化が生じるという研究結果が報告されました。
Characterization of Changes in Penile Microbiome Following Pediatric Circumcision – European Urology Focus
https://doi.org/10.1016/j.euf.2022.12.007
Circumcision Appears to Alter The Penis Microbiome, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/circumcision-appears-to-alter-the-penis-microbiome-study-finds
割礼を行うことが性感染症のリスクを下げるという理論は、少なくとも19世紀から存在していました。ジョナサン・ハッチンソンというイギリスの医師は1855年に、「ロンドンの割礼を受けたユダヤ人コミュニティは、割礼を受けていないコミュニティよりも梅毒から保護されている」と主張しました。
しかし、当時の科学者らはハッチンソンの説に飛躍があると指摘し、「ユダヤ人コミュニティに梅毒患者が少ない」という結果をもたらす要因は、割礼以外にも存在する可能性があると反論しました。同様の議論は今日に至るまで続いており、「割礼が性感染症のリスクを下げる」という説の支持派と反対派は、双方が他方よりも科学的根拠があると考えています。
26件の論文データをメタアナリシスした2006年の研究では、割礼は梅毒などの細菌感染症や性器ヘルペスなどのウイルス性感染症のリスク減少に関わっていることがわかりました。また、2020年に発表された2件の研究では、割礼を受けた成人男性のペニスは割礼を受けていない男性と異なる微生物叢を持っているという証拠が見つかり、割礼した場合の微生物叢が細菌性腟症やエイズ(AIDS)といった性感染症の感染を抑制する可能性も示されました。
しかし、エイズを巡る研究結果には議論の余地があります。南アフリカで収集された観察データに基づいた研究では、割礼がヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染リスクを50~60%低下させる可能性があると示されましたが、2022年10月に発表された研究では割礼によるHIVリスク低下はみられなかったと報告されています。アフリカではHIV感染を食い止める方法として割礼を導入する動きもありますが、研究チームは割礼とHIV感染リスク低下の関連性は確認できず、割礼を促進する戦略は正当性に疑問があると指摘しました。
新たな研究では、アメリカに住んでおり割礼を行う予定がある11人の子どもを対象にして、割礼前と割礼後のペニスの微生物叢を比較しました。分析の結果、割礼前と後ではペニスの微生物叢においていくつかの顕著な違いが見られたとのことです。また、割礼後に縮小した微生物叢のいくつかは他の研究で性感染症との関連が判明していることから、割礼が性感染症のリスクを低下させる可能性があると示唆されています。
しかし科学系メディアのScience Alertは、今回の研究結果は確かに興味深いものであるものの、サンプルサイズが小さい点や因果関係が立証されたわけではない点に注意が必要だと指摘。「もちろん、ペニスの包皮を取り除くと微生物叢が変わるのは事実かもしれません。しかし、これらの変化が細菌やウイルスの感染にどのような影響を及ぼすのかは不明です。いくつかの変化は健康にいいかもしれませんが、別の変化は害を及ぼすかもしれません」と述べました。
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