メディアエージェンシーで進む AI 利用、人間が嫌がる仕事を担当:バーチャルインターン、ブランドセーフティ監視ボットなど

DIGIDAY

人工知能(AI)はまだメディアエージェンシーの仕事を引き継いでいないかもしれないが、その技術の一部は、すでにあなたの隣でともに働いている。

機械学習ツールは、業界のデータ/リサーチ部門で働く多くの人々の時間や頭脳労働を節約してきたが、AI技術はつい最近、メディアのなかのコンテンツやクリエイティブな側面にも本格的に進出してきた。一部のエージェンシーやデジタルスタジオは、ソーシャルメディアやブランド向けにバーチャルインフルエンサーを構築し、若いオーディエンスはこうした架空のキャラクターと強いつながりを築いていると主張する。

米DIGIDAYでは以前、クリエイティブやセグメンテーションプロセスの自動化から時間と費用の節約につながる退屈なタスクの削減まで、クライアントのためにAIを使用してイノベーションを起こし、ブランドの安全性に関する問題を検出するため機械を訓練するエージェンシーを紹介している。クリエイティブな作業の流れは、エージェンシーがAIの機能性をテストする人気の分野であり、なかにはチームがコンテンツやアートを数秒で生成できるようにするものもある。

エージェンシーにとって目下のより大きな問題は、実は人間がやりたがらない仕事を生成型AIが適切に引き受けるのか、ということかもしれない。そして、暫定的かつ初期段階の答えは「イエス」のようだ。

ジェネレーティブアートは労働者の時間を節約してくれる

ニューヨークを拠点とする統合マーケティングショップであるエージェンシーのコードワード(Codeword)では現在、人工知能が生み出した2人の「インターン」によるインターンシッププログラムの開発を試みている。AIの同僚には名前(アイデン、アイコ)やアイデンティティがあり、業績評価のために報告する上司がいる。

2023年1月に初めてスタートしたコードワードの3カ月間のインターンシッププログラムでは、人間のインターンは受け入れていない。その代わり、アイデンとアイコは106人からなる同社のクリエイティブチームを手伝い、その時給相当額は、コンピューティング分野の女性支援団体「グレース・ホッパー・セレブレーション(Grace Hopper Celebration)」に寄付される。WEコミュニケーションズ(WE Communications)の傘下にあるコードワードは、人間とAIのコラボレーションがエージェンシーの世界でどのようなものになり得るかを探ることを目的にしているという。

コードワードの創業パートナーであるカイル・モンソン氏は次のように話す。「2022年11月下旬、大きなプロジェクトに取り組んでいて、本当に厳しい締め切りに追われていたことから、ジェネレーティブアートを使ってみたらどうかと誰かが提案した。ジェネレーティブアートによって仕事が奪われるか? 答は『ノー』だ。実際にとても役に立っているし、皆の時間をたくさん節約してくれる」

インターン生はクライアントと接する仕事はしないが、機械が得意とする「コンテンツを大量に制作する」仕事を担当する。たとえば、ムードボード用のラフコンセプトのサムネイルを大量に作成したり、編集チームのためにニュースやトレンドのリサーチをしたり、音声やトーンの分析をしたりする。このような「単純作業」をAIに引き継ぎ、統合してクリエイティブなプロセスを効率化することを想定していると、モンソン氏は付け加える。


画像提供:コートワード

インターンシッププログラムは、エージェンシーに学ぶ機会を提供する。上記画像のアイコ(左)とアイデンは、アンドロイドのようなリアルなデザインで、どことなくバーチャルインフルエンサーをイメージしている。2人の名前は「AI 」で始まる名前をもとに最初に作成された。インターンは、チームのシニアアートディレクターとシニアエディターの直属で、2人とも社内でクリエイティブな仕事を任され、その体験は会社のブログやソーシャルメディアで共有される。また、インターン期間中は業績評価も行われる。

「今後10年間はAIが業界の話題の中心になると思う」とモンソン氏はいう。「クライアントは、自動化できるプロセスに多くの時間と予算を費やしたくないと考えているはずだ。私の望みは、人間だけが磨き上げ、提供できる質の高い仕事をすることに、彼らがコミットし続けてくれることだ」。

AIは自動化された第一線の防御も提供

エージェンシーは、「人材」にとどまらず、ブランドセーフティの調査にもAIを活用している。ボットは反復作業を行うようにプログラムできるため、偽アカウントや偽コンテンツ、スパムのフラグ立てに役立つ。独立系メディアエージェンシーのグッド・アップル(Good Apple)では、クライアントポートフォリオ全体のコンテンツコンプライアンスを監視するためにAIが活用されている。これは、広告がどこに掲載され、どのコンテンツの隣に掲載されているかを監視することを意味し、非常に時間のかかる作業だ。

「AIは、潜在的な問題が生じた時に、監視、解釈、チームに警告することによって第一線の防御を提供し、これを自動化するのに役立っている」と、グッド・アップルのデータおよび分析担当バイスプレジデントであるマーク・スツリノ氏は話す。「AIボットによって、基本的な可視性モニタリングを超えて、広告が一緒に表示されるコンテンツを読み取り、そのコンテンツがブランドセーフティのガイドラインに抵触しているかどうかを特定のクリエイティブレベルで判断できる」。

デジタルエージェンシーのバーバリアン(Barbarian)も同様に、AIを導入して異常なソーシャルメディア活動を検出するアナリストをサポートしている。自動化は、人間のレビュアーのための追加的レイヤーとなる。人間のレビュアーは、会話を選別し、スパイクやそのほかの異常を探すことに注力できる。

バーバリアンのシニアアナリストであるドリュー・ヒンメルライヒ氏は、「我々はただ、それを見張っておく必要がある」と述べる。「ブランドが実際にどの程度、自分たちのエンゲージメントのうちの何パーセントが本物であるかを知りたがっているかは、まだ未解決の問題だ」。

広告のビジネスモデルが変わる可能性も

ホライゾン・メディア(Horizon Media)のeコマース部門であるナイト・マーケット(Night Market)は先週、「ネオン(Neon)」を発表した。これは、メディアとコマースの別々のデータストリームを同時に解析し、メディア支出を最適化することにより、広告主の収益を拡大することを目的とした独自のAIプラットフォームだ。これは、より古典的な使用シナリオに該当するかもしれないが、メディアエージェンシーの領域全体にAIが出現しているもうひとつの例といえるだろう。

しかし、AIに課題がないわけではなく、すべてのボットがよいというわけでもない。FacebookからTwitterまで、ソーシャルネットワークは何年も前からボットが生成したコンテンツに対処してきた。しかし、デジタルマーケティングの専門家であるTJ・レオナルド氏が説明するように、人々がオンラインで交流する方法を実際に変えていることで、AIが広告のビジネスモデルを変える可能性がある。

「Googleの検索バーに質問を入力する代わりに、消費者が『ChatGPT』のようなチャットボットに彼らの最も重要なクエリを投じる場面を想像してほしい」とレオナルド氏は問いかける。「オープンAI(OpenAI)のような企業が、単に今日のウェブが実証済みのビジネスモデルを利用してオーディエンスを収益化するのではなく、AIとより相性のよい新しいユーザーインターフェースが登場すれば、新しいビジネスモデルが生まれる可能性が高くなる」。

[原文:Media Buying Briefing: Could virtual interns and brand safety bots be the future of AI for media agencies?

Antoinette Siu(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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