「以前とは異なる日常が訪れる」:インスタカートの小売パートナーシップ担当バイスプレジデントのライアン・ハンバーガー氏が語る、食料品配送の次の一手

DIGIDAY

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2年前、インスタカート(Instacart)のような食料品配達プラットフォームは、パンデミックにより引き起こされた消費の変化によって大きな恩恵を受けた。しかし現在では、情勢がやや厳しくなりつつある。

しかし、インスタカートの小売パートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるライアン・ハンバーガー氏は、同社と食料品配達業界全体の将来について、控えめだが楽観的だ。同氏は米モダンリテールのボッドキャストに参加し、同氏が最近観察しているトレンドについて掘り下げた。ひとつたしかなことは、厳しい経済情勢と業界全体がロケットスタートを切ったような最近の成長を考えると、得られるものは1年以上前とは異なるということだ。

同氏は次のように述べている。「2023年には、平常状態が以前とは違うものになるだろう。Covidが最初に広まってから、食料品分野でのeコマースの普及が急激に進み、多くの業者が恩恵を得た。このeコマースの普及はあと戻りしていないため、この業界において新しい平常状態のもとで業務を行う必要がある。おそらく、成長という観点から見れば、2023年はパンデミック前と似たものになるだろう」。

この予測のリセットは、いくつかの業界の混乱のなかで起こったものだ。たとえば、eコマースの成長は停滞しつつあり、多くの高速配達の食料品プラットフォームが消滅しはじめ、インスタカート自身も最近評価額が切り下げられたことが報じられている

しかし、ハンバーガー氏は依然として、食料品店とプラットフォームの両方について将来に大きな利益が見込めるとしている。たとえば、同氏が注目しているもののひとつはインスタカートのカナダへの展開だ。過去1年間に同社のプラットフォームはカナダでのプレゼンスが60%も拡大し、店舗の数をさらに増やすことを計画していると、同氏は述べる。

さらに、同氏はインスタカートが保有している各種の店舗内テクノロジーを小売パートナーが使用できるようにするため労力を費やしてきた。これには、同プラットフォームが導入しようとしているスマートカートやほかのオムニチャネルのオプション機能が含まれる。「当社は配達企業だったが、その技術の一部を小売業者の店舗に取り入れたいと考えている」と、同氏は述べている。

しかし、このような成長分野はあっても、同氏は不確実な経済の状況を認識している。「今日我々が置かれている不運な現実は、顧客は毎週の食料品購入の予算が決まっており、それは変化していないということだ」と、同氏は述べる。「そのため、顧客は、同じ100ドル(約1万3200円)で買えるものが少なくなるなら、その分、お金を増やさなければならないのだ」。

インスタカートのような小売業者とプラットフォームにとって、これは購入しやすさとアクセス性について新たな焦点が見つかったということを意味する。これは、ハンバーガー氏が小売パートナーと共同で取り組んでいる大きなトピックだという。そして同氏の頭のなかでは、当面この問題は解決しそうにない。

「結局のところ、当面は食料品のコストが下がることは考えにくい。そのため2023年も、食料品購入の費用は従来よりも高い状態にとどまるだろう」と、同氏は述べている。

対談のいくつかの要点を以下に示す。これは明瞭化のため多少の編集を加えている。

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インスタカートの新しい店舗内の注目点

「店舗内での買い物体験の構想を再構築することから始める。当社がケイパー(Caper)を獲得したとき、このテクノロジーはすでに10年間にわたって開発が進められてきたものだった。それは、AIを使用するスマートショッピングカートだ。想像してみてほしい。食料品店に入り、その小売店にログインすると、その週にずっと見てきたリストやレシピが自動的に画面に表示される。それだけではなく、店舗内でのナビゲーションまで行ってくれる。指示に従って商品を見つけ、カートに入れるだけで、自動的に商品がスキャンされ、チェックアウト金額に加算される。商品が見つからない場合は、カートのボタンを押せば、該当する場所の電子棚札が通路で点灯して、自分が近づくと点滅するので、それを頼りに商品を見つけることができる。この構想の多くは、食料品の実店舗をどのように考え、デジタル的な方法で新たに構想するかという点に集約される。当社は配達企業だったが、その技術の一部を小売業者の店舗に取り入れたいと考えているからだ」。

手頃な価格であることが最優先

「小売業者は、コストを継続的に低減し、持続可能な方法で消費者向けの価格を下げる方法を重視し続ける必要があると思う。もちろん、誰もがコストの高騰を経験している。だが小売業者は、この購入しやすさの要素を実現し、顧客に価値を示すことができる必要がある。そしてそれは、さまざまな方法で実現することができる。単に価格を下げることだけではない。個別化されたサービスや、より確立されたロイヤルティプログラムでもいいし、実のところは『望む形で食品を入手できる』という価値を提供してもよい。配達を希望するが、1時間以内の配達は必要としない顧客もいる。その場合、今日の遅い時間に配達する代わり、料金は低くすればよい。小売業者はさまざまな方法でサービスを主導できる」。

インスタカートのカテゴリーの拡大

「当社は、ほかのカテゴリーへの展開をはじめる決定をしていたが、その2週間後にCovidが発生した。つまり、偶然にも最適のタイミングだったわけだ。しかし我々のコアビジネスは食料品であり、常に食料品に注力すべきだと考えていた。食料品は即日配達がもっとも困難なカテゴリーだと当社は考えている。100ドル(約1万3200円)の食料品の注文を受け付け、新鮮な商品を探して注文された品を揃え、品質を維持したまま顧客に配達するのは簡単ではない。当社は最初の8~9年間で、この作業を的確に行えるようになった。当社は多くのファンを抱えているが、彼らは食料品店以外の場所でも買い物をすることがわかっている。そこで当社は、自社の顧客ベースが現在、インスタカート以外から購入しているのはどのブランドなのかを調べはじめた。そして、それらのブランドを我々のプラットフォームにも取り入れ、ほかの分野においても食料品と同じ優れた体験を提供するにはどうすればよいのかと考えた。セフォラ(Sephora)ならどうだろうか。我々の小売プラットフォームにはペトコ(Petco)やほかのペット用品の小売業者もいる。当社は、家庭用品やホームセンターも扱っており、我々にとっては新しいカテゴリーだったが、2022年に大きな成功を収めた。ほかのカテゴリーも同様だ。家庭用品に何かが起きたときは、何か新しいものが必要となる。そのときにAmazonで買い物をするのではなく、当社の小売パートナーから即日配達を注文してもらうようになるというのが、当社の構想だ」。

[原文:‘A new resting heartbeat’: Instacart’s vp of retail partnerships Ryan Hamburger on what’s next for grocery delivery ]

CALE GUTHRIE WEISSMAN(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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