1. 2023年は「人工合成メディア」の時代になるのか?
AIによる、いわゆる「人工合成メディア」が2022年から注目されている。テキストから画像を生成する「Stable Diffusion」や「Midjourney」がその代表として取り上げられる。こうした画像の作品についての問題点を整理しているのが日経MJの記事だ(日本経済新聞)。
それに加え、今後の動向が注目されるのはテキストを生成するものだ。「YouChat(You.com)」はテキストで質問を入力すると、チャットボットがテキストで回答をする(CNET Japan)。その回答が本当なのかフェイクなのかは分からないまま、まことしやかな断定した文章で返してくる。これまでのGoogleなどの検索サービスでは、キーワードに「とは」などを付けて検索すると、該当するウェブページの候補が表示され、1つずつ見て、人が識別してきたが、そうしたプロセスを排除したようなものだ。これにはGoogleも脅威を感じているようだ(CNET Japan)。従来の検索を変えてしまう可能性もある。しかし、課題も多い。意図的なオプティマイゼーションでフェイクを学習させるような手法は当然のことながら編み出されるだろう(WirelessWire)。
これまでのAIは学習した結果をもとに対象を識別したり、分類したりすることに主に使われてきたが、学習した情報の「合成」というアプローチが今後、どの程度の進歩を見せるのかが注目点となろう。
ニュースソース
- 「ChatGPT」のような対話AI「YouChat」、検索エンジンYou.comが公開[CNET Japan]
- グーグル、「ChatGPT」を検索事業への脅威として警戒か[CNET Japan]
- 「Googleより便利かも?」ChatGPTの可能性[WirelessWire]
- AI創造作品、「人工合成メディア」への懸念[日本経済新聞]
2. Twitterが導入した「view counts」の意味
Twitterが新たに導入した「view counts」は個々のツイートが何回見られたかを示す指標だ(ケータイWatch)。類似のものとして、YouTubeなどでも閲覧数が表示され、視聴者もコンテンツの人気の指標として見ているし、クリエイターはこの指標を増やすこと(=マネタイズされる)を1つの目標としている。
Twitterの場合はどうだろう。2022年12月末の段階では「Twitterのツイート表示回数が、リロードするだけで1回の表示とカウントされる仕様であることが発覚して波紋を呼んでいる」と報じられている(INTERNET Watch)。これでは「view counts」の意味は誰にとってもないのではないか。また、ツイートもこのカウントを増やすことを目的とする必要以上の「あおり」が増える可能性もある。導入されて間もないことから、まだそれほどのインパクトがあったとは感じないが、ツイートの持つ意味合いにも変化が生じるかもしれない。
ニュースソース
- Twitter、ツイートが何回見られたかわかる「view counts」を提供開始[ケータイWatch]
- Twitterのツイート表示回数、リロードするだけでカウントされる仕様と発覚して波紋[INTERNET Watch]
3. 動画配信メディアの2022年実績データ
2022年の動画配信メディアの実績データが各社から公表されている。
まず、ABEMAが全64試合無料生中継した「FIFA ワールドカップ カタール 2022」では、視聴形態の構成比がリアルタイム視聴が56%、オンデマンド視聴が44%だった。デバイス別視聴の割合は、スマートフォンが43%、テレビ視聴・パソコンがともに24%、タブレットが9%だった。視聴者の性年齢別では20~34歳が33%となり、性別では男性7:女性3だった(ケータイWatch)。スマホのシェアが大きく、かつての「スポーツイベントは迫力の大画面で」というわけではない、新たな視聴スタイルが定着していることが感じられる結果だ。
Netflixは「最も観られた作品100選」を発表した。「日本作品」では、サスペンス「新聞記者」、ラブストーリー「桜のような僕の恋人」が、「アニメ作品」では「ワンピース」「SPY×FAMILY」「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」がランクインした(ITmedia)。
YouTubeは「2022年日本のYouTube年間ランキング」を発表した(ケータイWatch)。既存メディアが扱う方向性とは別のムーブメントが生まれる流れを感じる。その一方で、「相次ぐ『古参YouTuber』の解散や活動休止–YouTuberはもう終わりなのか」という記事も気になる(CNET Japan)。動画クリエイターの増加、そしてクリエイター自身の視聴者に支持され続ける企画の継続努力など、当初に比べるとハードルは高い。
2023年、このあたりにも何らかの大きな変化が生じるのではないか。
ニュースソース
- ABEMAがワールドカップのデータ発表、視聴者数1位の試合は[ケータイWatch]
- Netflixの「2022年に最も観られた作品100選」 「SPY×FAMILY」「ストレンジャー・シングス」など[ITmedia]
- YouTube、「2022年日本のYouTube年間ランキング」を発表[ケータイWatch]
- 相次ぐ「古参YouTuber」の解散や活動休止–YouTuberはもう終わりなのか[CNET Japan]
4. 内閣官房が「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を解説
内閣官房は「デジタル田園都市国家構想総合戦略」について解説するウェブページを公開している(INTERNET Watch)。この戦略は重要政策のはずだが、一般メディアでも解説がされてなく、一般に広く知られているようには感じられない。このウェブページでは、2023~2027年度の5カ年分のKPIとロードマップを具体的に示し、その概要を分かりやすく解説している。通信インフラとデータセンターの整備というだけではなく、今後のデジタル社会の姿が示されている。
また、デジタル庁は「Web3.0研究会報告書~Web3.0の健全な発展に向けて~」を公表している(デジタル庁)。Web3.0については政策に盛り込まれているわりには、広く、共通のコンセンサスが得られているとは言えない。そもそも概念が理解しにくい、そこから生まれるユースケースをイメージしにくいという点もありそうだ。さらに、数年後には技術革新によって、様相が変わってしまう可能性もないわけではない。これがバイブルというわけではないが、理解を進めるうえでの1つのたたき台としては一読の価値がある。
ニュースソース
- 2027年度までのデジタルインフラ整備目標など、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を内閣官房がウェブで解説[INTERNET Watch]
- Web3.0研究会[デジタル庁]
5. 【訃報】高橋徹さんが死去
日本国内のみならず、アジア、そして世界へとインターネットを普及させたリーダーのひとりである高橋徹さんが12月20日に亡くなった。81歳だった(INTERNET Watch)。
インターネットの発展における数々の業績に対し、2012年にはInternet Society(ISOC)が「インターネットの殿堂(Internet Hall of Fame)」の最初の殿堂入りメンバー33名の1人として選出している。
WIDEプロジェクト、インターネット協会、JPNICなど関連団体からもコメントが発表されている。
ニュースソース
- 高橋徹氏が死去、日本やアジアのインターネット普及に多大な貢献[INTERNET Watch]