「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
スマートウォッチ愛好家として噂レベルの頃から期待していたGoogleブランドのスマートウォッチ「Pixel Watch」。10月6日に開催された「Made By Google」での正式発表を知ってすぐに購入した。
詳細は後述するが、筆者としては必要十分な要素を備えたスマートウォッチであり、これを使えば理想のスマートウォッチを探す旅は一段落だろう、と期待していたのだが、数々のトラブルに巻き込まれ、使いたい機能を普通に使うだけでも1カ月以上の時間を要してしまった。
今回は筆者が出会った数々のトラブルも紹介しつつ、1カ月以上かけてじっくり使い込んだPixel Watchの使い勝手を語りたい。
- 多機能なWear OSに決済が加わったPixel Watchは理想のスマートウォッチ
- 購入早々トラブルでSuicaが使えない事態に
- 「モバイルSuica」だったPixel Watch。今後の機能拡充に可能性も
- 対応クレジットカードの少ないNFC決済
- バッテリは実利用1日程度。充電回数は1日2回に
- Androidの連携が便利。タスク管理で音声入力が大活躍
- 音楽やスマート家電もPixel Watchから操作。マルチアカウントは一部アプリで制限あり
- 手首で道案内してくれるマップ連携機能が便利
- フィットネスアプリ「Fitbit」に対応。機能としては必要十分
- 細かな課題はあれどSuica対応Wear OSは現実的に理想のスマートウォッチ
多機能なWear OSに決済が加わったPixel Watchは理想のスマートウォッチ
本稿を執筆するにあたって筆者のスマートウォッチ歴を振り返ってみた。スマートフォンと連携する機能を備えたスマートウォッチとしては、2012年に発売されたソニーの「SmartWatch MN2」が筆者にとって初めてのスマートウォッチだ。その後もいくつものスマートウォッチを渡り歩き、スマートウォッチ歴は10年ということになる。
- ソニー「SmartWatch MN2」
- ソニー「SmartWatch SW2」
- ソニー「SmartWatch 3」
- Apple「Apple Watch(初代)」
- カシオ「Smart Outdoor Watch WSD-F10」
- FOSSIL「THE CARLYLE HR」
- シャオミ「Mi band4」
- ソニー「wena 3」
- シャオミ「Mi Smart Band 6」
- Fitbit「Fitbit Sense 2」
メインのスマートフォンがAndroidのため、Androidと連携できるスマートウォッチが多いが、最近はスマートウォッチのレビューでApple Watch Series 7/8も長期に渡って試用しており、最新のApple Watchの環境も把握している。
こうして一通りのスマートウォッチを使った身としては、スマートウォッチ一番のメリットは“手首で決済できる”非接触決済であり、その点は非接触決済が充実しているApple Watchが最高だ。
ただ、残念ながら筆者のメイン端末がAndroidである限り、Apple Watchをメインにするという夢は叶わない。最近はSuicaが使えるという点でFitbit Senseを愛用していたのだが、スマートフォン連携という点ではWear OSほど機能が充実しておらず、Wear OS端末と比べて一長一短という状況だった。
つまり筆者にとって、Suicaが利用できるWear OSという点でPixel Watchはまさに理想的なスマートウォッチだった、というわけだ。
購入早々トラブルでSuicaが使えない事態に
そんな待望のSuica機能だが、購入早々トラブルが生じてSuicaが使えない事態に見舞われた。筆者が少々複雑な環境で使っていることもあり、正常な環境でSuicaが利用できるまで1カ月近く時間がかかってしまった。
Pixel WatchのSuicaに関するトラブルは身の回りでも良く目にするため、本稿では筆者が遭遇したトラブルとその解決策、そしてその結果理解できたSuicaの仕様についても紹介したい。
初めに筆者の環境を説明しておくと、筆者はAndroid用のGoogleアカウントと、Googleの各種サービスを使うメインのGoogleアカウントを2つ使い分けている。
これはAndroidが当初マルチアカウントに対応しておらず、PCで使っているアカウントを設定するとメールが多くなって使いにくいだろう、という判断から、Android専用のGoogleアカウントを新規で作成したという経緯だ。
それから10年以上が経過してAndroidもマルチアカウントに対応し、PC宛てのメールもスマートフォンで見るのが当たり前の時代になったことで、2つを使い分けている意味はほとんどなくなってしまった。
しかし、有料アプリを始めとした決済関連をAndroid用のアカウントに設定していたため、今でもスマートフォンのメインアカウントはAndroid用アカウントを設定し、マルチアカウントとしてメインアカウントを設定している、という状況だ。
話をSuicaに戻すと、まずAndroid用のGoogleアカウントでSuicaを設定しようとしたところ、クレジットカードチャージ画面で「Googleでは現時点でカードを確認できませんでした」というアラートが表示され、その後何度試してもSuicaを初期設定できなかった。
仕方がないので今度はメインのGoogleアカウントに切り替えてSuicaを設定してみたところ、無事にSuicaが設定できてチャージも完了、乗車や買い物もできたのだが、その後数時間してなぜかSuicaがチャージできなくなり、試しに初期化してみると今度は初期設定もできずお手上げ状態になってしまった。
最初にエラーが出た時点でサポートに問い合わせるべきだったと反省しつつ、一度は設定に成功したメインアカウントについてJR東日本にフォームから問い合わせたところ、「ロック(利用制限)がかかった状態でSuicaのサーバ退避や退会操作を行なった場合、当該モバイル端末では以後モバイルSuicaの発行やご利用ができなくなります。(中略)Suicaの利用をご希望の場合、Suicaカードにてご利用いただきますようお願いいたします」という、にべもないメールが返ってきた。
操作をミスしただけでPixel Watchが使えなくなっては困るしそんなわけはなかろう、と今度は初期設定がうまくいかなかったAndroid用アカウントについてGoogleに問い合わせると、「Googleでは現時点でカードを確認できませんでした」というエラーについてはGoogle側で対応が完了したとの連絡があった。
しかし実際にSuicaを設定してみると、確かに上記のエラーは表示されなくなったものの、今度は「エラーが発生しました」というメッセージが表示されて結局Suicaを設定できない。
その後数週に渡ってやり取りを行なった結果、「エラーが発生しました」というアラートについてはJR東日本側でロックがかけられている、との回答が得られた。そして改めてJR東日本に問い合わせたところ、Suica自体は使えるようになったのだが、不正利用対策として当面はクレジットカードチャージはできず、現金チャージの実績を作ってから再度問い合わせるように、との返信があった。
指示には具体的な期間や金額がなかったのだが、現金チャージしてから乗車を1往復、買い物を1、2回程度してから問い合わせると、無事にクレジットカードチャージができるようになった。
そして試しにメインアカウントのSuicaアカウントについても同じようにJR東日本に問い合わせたところ、使えないと言われていたはずのSuicaもなぜかロックが解除され、2つのアカウントどちらもSuicaが利用できる状態にまでこぎ着けた。
以上、筆者が遭遇した範囲内でトラブル対策についてまとめると、「Googleでは……」というエラーは文面通りGoogleに、それ以外の不明なエラーはJR東日本に問い合わせるのがよさそうだ。
また、JR東日本についてはフォームでの問い合わせはこちらの状況が正しく説明できないこともあるため、チャットでの問い合わせをおすすめしたい。筆者の利用した限りチャットは待ち時間も少なく、その後のメール返信も数時間以内で送られてきたため待たされる感覚はほとんどなかった。
「モバイルSuica」だったPixel Watch。今後の機能拡充に可能性も
トラブルに悩まされた1カ月だったが、おかげでPixel WatchのSuica仕様に関する学びも大きかった。1つはPixel WatchのSuicaは「モバイルSuica」であるということだ。
以前に書いたスマートウォッチの決済機能に関する以下の記事でも触れたが、スマートウォッチにおけるSuicaは、オートチャージや定期券にも対応するApple Watch型と、FitbitやGarmin、wena 3といったオートチャージや定期券に対応しない2タイプがある。
Pixel WatchのSuicaはJR東日本が「Suica」としてしか表記しておらず、オートチャージや定期券非対応ということで後者型かと思われていたが、JR東日本のサポートを受けて、Pixel Watchは「モバイルSuica」扱いだということが分かった。
JR東日本の「JRE POINT」サイトでも、Fitbitは「ウェアラブルのSuica」と表示されるのに対し、Pixel Watchは「モバイルSuica」とはっきり表示されている。
Pixel WatchがモバイルSuicaである以上、定期券やオートチャージといった機能は今後実現する可能性もありそうだ。現にオートチャージについては、オートチャージを設定したSuicaを移行することでPixel Watchでもオートチャージを利用できているという報告がネットで多数見られる。
Wear OSとして初のSuica対応のためかなり慎重に実装されているのだろうが、今後オートチャージや定期券をPixel Watchを初めとしたWear OSでも使えることを期待したい。
また、Suicaについては排他ではあるものの複数のSuicaが併用できることが分かったのも収穫だった。
フィーチャーフォンやAndroidスマートフォンの場合は、FeliCaのIC領域に保存されたSuicaのデータを削除しなければほかのSuicaを使えなかったのだが、Pixel WatchはSuicaを初期化した時点でデータがクラウドに保存され、ほかのSuicaをそのまま設定できる。これは本体初期化のときも同様で、AndroidよりもSuicaの扱いが気楽になった。
細かな点ではPixel WatchのSuicaアカウントはモバイルSuicaのWebサイトにもログインできるため、PCでの履歴表示や領収書発行も可能だ。Fitbitの場合は履歴のアプリ表示やメール送信はできるものの、経費精算などで明細を発行するには駅で印字する必要があったのだが、PCで出力できるのはありがたい。
肝心のSuicaの使い勝手については、良くも悪くも今まで使っていたFitbitやwena 3と変わらない。手首をかざすだけで電車に乗ったり買い物できるという手軽さは、筆者がスマートウォッチを使う最大の理由と言ってもいいほど愛用する機能だ。
オートチャージについては1万円を切ったら1万円をチャージするようにすることで残高不足で困ったことはほとんどないし、幸いにしてオフィス勤務ではないので定期券がなくても十分便利にSuicaを使えている。
対応クレジットカードの少ないNFC決済
Suicaばかりが注目されているPixel Watchの決済機能だが、実際にはNFC決済にも対応している。ただし機能としては存在しているものの、対応しているクレジットカードが非常に少ない。
以下の僚誌ケータイWatchの記事に詳しく書かれているが、現時点で対応しているのは銀行系のデビットカードが中心で、クレジットカードとして対応しているのはエポスカード程度だ。
NFC決済はAndroidスマートフォンでも対応しているが、こちらは大手クレジットカードである三井住友カードやその系列であるVisa LINE Payクレジットカードが対応している。また、Google Payとは異なる独自アプリを使うことにはなるが、楽天カードでもNFC決済を利用できる。
筆者はAndroidスマートフォンでNFC決済を愛用しているだけに、Pixel WatchのNFC決済機能はうれしく感じていたのだが、対応クレジットカードの少なさには肩透かしをくらってしまった。しかしこちらもSuica同様、今後は対応クレジットカードが拡充されるものと期待したい。特にキャンペーンなどを展開してNFC決済を大々的に推進している三井住友カードには早めの対応をお願いしたいところだ。
バッテリは実利用1日程度。充電回数は1日2回に
決済関連の話はこのくらいにして、Pixel Watchそのものの使い勝手を紹介したい。Pixel WatchはLTE対応モデルと非対応モデルの2タイプがあるが、筆者のメイン回線であるahamoはPixel Watch非対応であることに加えて、スマートウォッチ単体で持ち歩くシーンは筆者の経験上あまりなさそうなので、LTE非対応モデルを購入することにした。
本体ディスプレイは直径41mmの円形で、縁がディスプレイと一体化しており、画面は実際よりも大きく見える。厚みは12.3 mmとかなり厚く、横から見ると存在感があるが、普段はディスプレイ部分しか目にすることはないためほとんど気にならない。
インターフェイスは、側面にリュウズとボタンが配置されている。Apple Watchと同じ構造だが、四角いApple Watchと比べてボタンが斜めに配置されているので、どちらの腕に付けてもボタンが微妙に押しにくい。円形ディスプレイはデザイン的には美しいのだが、操作面では四角いディスプレイのほうが使いやすいと感じた。
バッテリは最大24時間を公称するが、実際に利用してみてもほぼ1日という印象で、電車に乗るSuicaが載ったスマートウォッチとしては若干心許ない。以前に使っていたFitbit Senseは3日程度はバッテリが持っていたので、こまめな充電が必要になった。
また、充電もFitbit Senseに比べると時間がかかる。Fitbit Senseのときは入浴中に充電するだけでほぼフル充電できていたのだが、Pixel Watchでは入浴中だけではバッテリがフル充電できない。就寝中も睡眠状態記録のため装着しているため充電の時間が確保しにくく、現在は朝起きて家を出るまでに一度充電、そして入浴中に充電という2回の充電で運用している。
Androidの連携が便利。タスク管理で音声入力が大活躍
機能面で便利なのはやはりAndroidとの連携。特に筆者が便利に感じているのは通知機能だ。Pixel WatchとAndroidは通知が連動しており、Pixel Watch側で通知を消すとAndroid側の通知も消えるようになっている。
この同期を利用して、後でPCやスマートフォンでしっかり確認したい通知は残し、それ以外の通知はPixel Watchから消し込んでいくことで、簡易タスク機能として愛用している。
タスク管理としてもう1つ愛用しているのがGoogleアシスタントを使った音声でのリマインド設定。後でやらなければいけないがスマートフォンやPCにすぐには触れないというときに、「30分後に○○をリマインド」と発声することで、後で通知を届けてくれる。
少し手間はかかるがGoogle キープを使えばより細かいタスク管理も可能だ。Pixel WatchからはGoogle キープのメモとリストを作成でき、リストの場合は既存リストに新規の項目を追加できる。
たとえば「To Do」というリストを作っておき、Pixel Watchから該当のリストを指定して「議事録を作る」などと発声することで、音声だけで手軽にリストを管理できる。
Google キープのリストそのものを音声で新規作成することも可能で、音声で作成したリストはその後音声で項目を追加できる。具体的には「カラオケリストを追加」と発声してリストを作成、「何を追加しますか」という質問に曲名を追加してリストを作成すると、以降は「カラオケリストに【曲名】を追加」と発声すれば、該当のリストに項目を追加できるようになる。
なお、Google ショッピングリストも名前こそショッピングリストだが、作成したリストの名前を指定して「【リスト名】に【追加したい内容】を追加」と発声することで同様のタスク管理が可能だ。こちらはほかのGoogle アカウントともリストを共有できるので、家族や仕事仲間と共有したいタスク管理に使うといいだろう。
時間管理という点ではアラームも愛用している。バイブレーションして通知してくれるので、新幹線で仮眠するときや、スマートフォンやPCを使えない業務中に決まった時間を知りたいときなど、音を出さずに時間が分かるのが便利だ。
ただし、デフォルトでは必ず通知音が鳴る設定になっており、音を立てずに振動だけで通知を受けたいときは、作成したアラームを再度設定し直す必要がある。
以前利用していたWear OS搭載のFOSSIL「THE CARLYLE HR」(以下CARLYLE)は、手動設定の場合に必ず音とバイブを設定する画面に遷移していたのだが、Pixel Watchでは時間を指定するとアラーム設定が完了してしまうため、音をオフにしたいときは二度手間になってしまったのは残念なポイントだ。
アラームについてはFitbit senseでも愛用していた機能だが、Fitbit senseはアラームを8個しか設定できないため、こまめに使わないアラームを消していく必要があった。Pixel Watchでは上限を試したことはないものの、いまのところ制限を受けたことはない。声でさくっとアラームを設定したいときに上限で断られない、というのは地味ながらストレスが貯まらずうれしいポイントだ。
音楽やスマート家電もPixel Watchから操作。マルチアカウントは一部アプリで制限あり
移動中の音楽操作も便利な機能だ。ワイヤレスイヤフォンには音量操作や早送り/早戻し操作ができない製品もあるが、Pixel Watchなら手首から一通りの操作が可能。流行の音楽を聴いていて「この曲は誰だろう?」と知りたいときにも手首のPixel Watchを操作するだけで確認できる。
ベータ版ながらGoogle HomeアプリもPixel Watch向けに提供されており、Google Home対応のスマート家電をPixel Watchから操作できる。ただし操作できる機器は限られており、筆者の試した範囲では照明オン/オフは操作できるが、Nature Remoなどのスマートリモコンを介した操作や、Google Nest Hub、Chromecast with Google TVなどの操作は対応していない。
また、ベータ版のためかログインできるアカウントも初回にログインしたGoogleアカウントのみで、ほかのGoogleアカウントに切り替えることはできない。
筆者は前述の通り2つのGoogleアカウントを併用しているのだが、Google Home関連はメインアカウントで利用していることもあり、Android用のアカウントでログインしながらGoogleの各種サービスはメインアカウントで使う、という使い分けはできなくなってしまった。この点は今後のアップデートでアカウントの変更ができるようになることを期待したい。
マルチアカウント対応という意味では、Googleアカウント自体は複数のアカウントを登録でき、Gmailも複数のメールを使い分けられるのに対し、カレンダーは設定画面こそマルチアカウントに対応しているものの、Pixel Watchに表示されるのはメインアカウントのカレンダーのみのようだ。
筆者のようなヘビーユーザーとしては異なるアカウントのカレンダーも表示してほしいところだが、ひとまずはメインのアカウントにほかのカレンダーの閲覧権限を共有することでしのいでいる。
手首で道案内してくれるマップ連携機能が便利
Googleアシスタントやアラームなどの機能は、一部機能に制限はあれどGoogle アシスタントに対応したFitbit senseでも利用できた。一方、Wear OSならではの機能が、Googleマップと連携したナビ機能だ。指定した目的地までの道順を手首の地図で確認でき、移動中にスマートフォンを取り出せない、取り出したくないときなどに重宝している。
この機能はCARLYLEでも愛用していたのだが、Pixel Watchではインターフェイスが大きく変更されている。CARLYLEでは画面下3分の1程度が必ずテキスト表示エリアになっており、もっと地図を大きく見たいときには不便だったが、地図デザイン自体はGoogle マップのデザインを踏襲しており視認性が高かった。
一方、Pixel Watchは画面すべてに地図を表示でき、テキスト表示との切り替えが可能になったものの、黒基調で建物情報も省略された地図デザインは以前より視認性が下がってしまった。
ナビの設定はPixel Watch本体からの入力に加えて、スマートフォンやPCでGoogle マップを検索した履歴からも目的地を設定できる。Pixel Watchでの入力は手間なので、出発前や電車での移動中などに場所を検索しておき、徒歩で移動するタイミングに履歴から場所を指定するのが便利だ。
通常表示は地図の縮尺などは切り替えられないが、画面をダブルタップするとリュウズでの縮尺変更が可能になる。ただし、この時は目的地が上になるヘディングアップが利用できず、地図の向きを手動で変更することもできないので一長一短だ。
とは言え、通常の縮尺だと目的地が道の左右どちらかにあるかなど細かい点が判別できないため、地図拡大で細かい場所を確認できるのはありがたい。
なお、根本的な問題としてGoogle マップは正しい住所を入れているはずなのに異なる目的地が表示される、という現象が少なからず起きており、筆者としては完全に信頼がおけるナビ機能ではない。
普段は同様の問題が起きにくいナビタイムを愛用しているのだが、時間に余裕があり、ざっくりと場所が分かればいい、というときにスマートフォンをいちいち取り出さずに済むセカンドナビとしては、十分に役割を果たしてくれている。
フィットネスアプリ「Fitbit」に対応。機能としては必要十分
これまでのWear OSと異なるPixel Watchの特徴として挙げられるのが、フィットネスアプリ「Fitbit」との連携だ。Fitbitは2021年1月にGoogleの買収が完了してGoogle傘下となっていたが、Fitbitアプリが使えるのはFitbitブランドのスマートウォッチやスマートバンドのみに限られていた。
反対にFitbitのスマートウォッチやスマートバンドは、Googleのフィットネスアプリ「Google Fit」が使えず、Fitbitも公認しているサードパーティーの連携アプリ「FitToFit」で、FitbitのデータをGoogle Fitに転送することでGoogle Fitも利用できる、という状況だった。
今回、Pixel Watchでは、Googleのアカウントとは別にFitbitのアカウントを取得する必要はあるものの、Wear OSとして公式にFitbitを利用できるようになった。また、あまりアピールされてはいないもののGoogle Fitもアプリとして提供されており、インストールすることでPixel WatchとGoogle Fitを併用できる。
興味本位でしばらく2つのアプリを併用してみたが、機能としてはFitbitのほうが上だ。Fitbitで対応している睡眠記録の機能はGoogle Fitでは対応していないほか、心拍についても手動記録のみで自動では記録してくれない。
また、Fitbitは友達をユーザー登録してお互いに運動記録を共有する機能や、実在する場所をステージにして自分の歩数でゴールを目指すゲームなど、ワークアウトを楽しむ要素もふんだんに取り入れられている。
Fitbitではワークアウトの手動記録のほか自動記録にも対応。徒歩の移動などはウォーキング扱いとして自動で記録してくれるが、登録される情報は心拍や消費カロリーなど基本的な情報のみで、移動ルートの地図表示などは手動でワークアウトの種類を選んで、開始と終了操作を行なう必要がある。
ワークアウトを記録する場合はPixel Watchからスポーツのカテゴリを指定する。ワークアウトの種類は40 種類以上で、ランニングやサイクリングといった基本的なものから、ウェイトリフティングやカヌー、キックボクシング、水泳など多彩なジャンルを網羅。5気圧(水深50m)までの耐水仕様で、プールやシャワーなどでも利用できるとしている。
ただしこちらも記録されるのは時間や歩数、消費カロリーなど基本的な情報が中心。スマートウォッチによっては水泳のターンやテニスの打数などを記録してくれるものもあるが、Fitbitで記録できるのは基本的な機能に留まる。
ほかのメーカーでは何らかの運動を検知するとワークアウトの記録をすすめてくれるスマートウォッチもあるが、Pixel Watchはそうした機能も非搭載だ。また、ワークアウト記録時の位置測位はあまり精度が高いとは言えず、かなりガタガタのルートになってしまう。
上記の通り、ワークアウトの機能で見るとPixel Watchはさほど高機能とは言えないというのが正直な感想なのだが、そもそも筆者はあまりワークアウト機能を重視していないのでさほど気にならず、毎日の運動状況を記録してくれるだけでありがたい。
位置情報もどのあたりを移動したのかと思い出すには十分なので、今後のアップデートでもう少し測位精度が高まることを期待してはいるものの、それほど不満なく使えている。
ワークアウトとは異なるが、睡眠時間や心拍数などを自動で記録してくれるのもうれしい。体重や水分摂取量、食事などは手動で記録でき、体重についてはFitbit対応の体重計を使えば自動で連携してくれる。
これまでは別のスマホ連携体重計を使っていたが、Pixel WatchがFitbitに対応したのを機にFitbit対応の体重計も購入した。
最近筆者は健康のために1日2リットルの水をできるだけ飲むようにしており、水分摂取量の記録も地味にうれしい機能だ。ただ、現状はアプリからしか記録できないため、できればPixel Watchでタッチ操作するか、音声で記録できるようになるとうれしい。
細かな課題はあれどSuica対応Wear OSは現実的に理想のスマートウォッチ
待望の非接触決済に対応したWear OS端末としておおいに期待をしていたPixel Watch。Google初のスマートウォッチということでまだ荒削りな部分はあるものの、タスク管理を始めとした各種機能を活用していたWear OSでSuicaが使えるようになった、というだけで筆者としては十分に満足だ。
とは言えSuicaのオートチャージやNFC決済の対応クレジットカード拡充など、今後に期待したい点は山ほどある。また、マルチアカウントの挙動や地図デザイン、アラーム操作など細かいながら以前のWear OSのほうが使いやすかったと感じる点も多く、このあたりも今後はアップデートでの改善を期待したい。
Apple WatchをAndroidで使うことはできず、筆者のメインスマートフォンがAndroidから変わることはおそらくあり得ないであろうことを考えると、現状細かな課題はあるもののやはりPixel Watchが現実と理想のバランスが取れたスマートウォッチであることは間違いない。購入後はこまめなアップデートが行なわれており、後継機種も期待しつつ、しばらくはPixel Watchを愛用していきたいと考えている。
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