自分がごくごくあたり前だと思っていることが、実は世間とズレていることは意外と多い。特に自分のテリトリーから離れると “地域性” が変わってくるため、ちょっとしたことでカルチャーショックを受けることもしばしばだ。
つい1カ月ほど前のこと。私、P.K.サンジュンは仕事で大阪にいた。「やっぱり出張はええなぁ」なんて思いつつ、駅のホームでふと目をやると何か強烈な違和感が……あれ? なんかベンチの向きがおかしくないか……?
・90度違う向き
通常……というか関東圏では、駅のホームに設置されているベンチはホーム側を向いているもの。「座ったときにホームが真正面に見える角度」と言えばわかりやすいだろうか? 生まれてこの方44年、ホームのベンチの向きは「そういうもの」だと思い込んでいた。
だがしかし、私が目撃した大阪や兵庫の駅にあったホームのベンチは「座ったときにホームが真横に来る角度」で設置されていたのである。え……なんで? 普通に横並びで良くないか? なんでわざわざベンチの角度を変えとるんや?
さらに言えば、私もかつて1年に数回ペースで関西を訪れていた時期がある。ハッキリとした記憶はないものの、当時は関東スタイルのベンチだった気が……。仮に昔から今の角度のベンチだったとしたら、当時の私が「なんでやねん!」と力強くツッコんでいたハズだ。
・JR西日本に聞いてみた
これは気になる……! というわけで「JR西日本お客様センター」に連絡し「関西の駅のホームにあるベンチの角度」について色々と聞いてみることにした。
──大阪や兵庫の駅で見かけたんですが、ベンチの向きがホームと平行に設置されているのは何故なのでしょうか? 関東では見かけないもので……。
「はい、最大の理由は酔客(すいきゃく・酔っ払いのこと)様の転落防止のためでございます。それまではベンチにお座りの酔客様が立ち上がってそのままホームに転落していたケースが多かったと聞いております」
──なるほど。酔っ払いのホーム転落防止のためでしたか。昔は違いましたよね。
「はい、正式な導入をお調べするのは時間がかかるんですが、おそらく5~6年前から導入され始めたと記憶しています」
──ふむふむ。でも転落防止が目的ならホームドアを設置すればいいような……? 都心はだいぶ多くなっている気がします。
「仰る通りかと思います。ただ関西は様々な路線が複雑に乗り入れしておりますので、ホームドアの設置もやや難しいのかもしれません。大阪、鶴橋、京橋、三ノ宮……など、主要な駅はホームドアが設置されておりますが……」
──なるほど。あとホームドアの設置ってめちゃめちゃコストがかかりそうですもんね。ベンチの方がコスパは良さそう。
「詳細な費用等はわかりかねるのですが、おそらくそういう事情もあるのだろうと思います。JR西日本ではここ数年で多くの駅でベンチの工事を実施いたしました」
──すっきりしました! ありがとうございます!
・最大の理由は「酔っ払いの転落防止のため」だった
ポイントをまとめると「関西の駅のホームにあるベンチの角度が違う理由」は大きく3つあった。1つは「酔っ払いの転落防止」のためで、これが最大の動機であり目的だ。というか、飲み過ぎて電車に乗らないこと! 心当たりのある方はくれぐれもご注意いただきたい。
次に「ホームドアの設置ではなくベンチの角度を変えた理由」は「関西は路線が複雑でホームドアの導入がそう簡単じゃないこと」と「コスト的にもベンチの方がコスパがいい」が挙げられそうだ。都心の駅ではあたり前になりつつあるホームドアも、決して全国区の設備ではないらしい。
また、ベンチの角度が変わったのは「5~6年前から」とのことなので、やはり昔は都内と同じ規格だったことが判明した。ベンチの角度1つにしても色々と理由があるんだなぁ。大変勉強になりました。
というわけで「関西の駅のホームに設置されているベンチの角度が違う理由」についてお届けした。基本的には酔っ払いのホーム転落防止のためなので、忘年会シーズンに突入するこれからの時期は特にご注意いただきたい。