2023年度 セフォラ アクセラレートプログラムのセレクト基準とメリットとは?【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

セフォラ(Sephora)の最新のアクセラレータープログラムが、美容業界の将来に対する小売業者の懸念を示す目安になるとしたら、将来のブランドたちからは心を満たす糧と製品機能のアイデアを結びつけたユニークで創造的なストーリーが語られることが期待できそうだ。

2023年度の参加ブランド

セフォラの2023年度のプログラムには7ブランドが含まれる。フレグランスブランドのムードゥー(Moodeaux)、CBDビューティブランドのブラウンガールジェーン(Brown Girl Jane)、メイクアップブランドのレンジビューティ(Range Beauty)、リップケアブランドのグロスフッド(Glosshood)、スキンケアブランドのシースパイアー(Seaspire)、ボディケアブランドのウィ・ザ・ピープル(Oui the People)、「クリーニカル」ブランドのオブ・アザー・ワールヅ(Of Other Worlds)。6カ月におよぶプログラムには毎週のバーチャルコンテンツと、ブランドを高めて長期的な成功を収めるための専門的なカリキュラムが用意されている。プログラムの目玉は、ブリオジオ(Briogeo)の創設者兼CEO、ナンシー・トワイン氏が指導する財務準備、タッチャ(Tatcha)の創業者のヴィッキー・ツァイ氏が担当するブランド・品揃え戦略、タワー28(Tower 28)の創業者のエイミー・リウ氏とグロウレシピ(Glow Recipe)の共同創業者のクリスティーン・チャン氏とサラ・リー氏が担当するマーケティング戦略である。プログラム参加の創業者たちには投資家や顧問を務める他ブランド創業者らへのアクセスもある。

コホートの共通点は、感情面のウェルビーイングと美を組み合わせた美容への総合的なアプローチである。たとえば、ムードゥーは香りや記憶、感情の融合を中心にデザインされている。同社は、クリーンなフレグランスにフォーカスしており、マインドフルなセルフケアを生み出してラグジュアリーをライフスタイルに昇華させる気分を作り出すアクセサリーであると謳っている。ブラウンガールジェーンの製品は気分をアップして、ストレスによる外見や気持ちを緩和するという。グロスフッドは同社ウェブサイトによると「インナーチャイルドを称えるニッチな商品を提供することに特化した」美容ブランドであるという。

「これらの(コホート)ブランドは感情面を強調している。創業者としての彼らの真のつながりと真の個性だけではなく、自社ブランドが生まれた背景においても感情面が推進要素になっている」と述べているのは、セフォラのマーチャンダイジング事業開発担当シニアディレクターのクリスティン・オードガード氏だ。

ウィ・ザ・ピープルの例

ウィ・ザ・ピープルはそのようなブランドの1社である。シェービングとボディケアの融合にフォーカスしたシェービングブランドとして、2017年後半にウィ・シェイブ(Oui Shave)という名称で初めてローンチされた。

「我々は文化的なナラティブに抵抗したいと思っていた」とい述べているのは、ウィ・ザ・ピープルの創業者、カレン・ヤング氏だ。「当時、シェービングカテゴリーのブランドの多くは脱毛だけについて語っていた。当社は身体に対する主体性と文化的視点について語る機会を見出した」。

D2Cのウィ・ザ・ピープルはベンチャー資金で400万ドル(約5.4億円)を調達し、ヤング氏はa16z(アンドリーセン・ホロウィッツとしても知られている)のタレント x オポチュニティ(Talent x Opportunity)イニシアチブをはじめとするいくつかのアクセラレータープログラムに参加した。創業者が複数のアクセラレータープログラムを経験することは美容業界ではよくあることだ。ヤング氏にはエスティ ローダー(Estée Lauder)で4年間勤務した経験があるが、自分自身はアウトサイダーだと考えており、アクセラレータープログラムの価値は美容業界のニュアンスについてさらに学べる点だと述べている。

「製品とブランドの観点から素晴らしい成功を収められてはいるが、ほかの創業者から学んで、彼らにとっての成功がどのようなものだったかを理解できることが嬉しい。ブランディングと成長の観点から、ブランドを構築して、セフォラのようなパートナーと共に拡大するのはどのようなものかをもっと詳しく理解したいと考えている」とヤング氏は語っている。

プログラム応募の詳細

セフォラのウェブサイトによると、プログラム応募の基準は簡単であり、応募資格に関する質問への回答、自社ブランドの説明、自社に関する短い動画の制作と提出、必要な場合には製品サンプルの提供が含まれている。オードガード氏は(参加者の)選択はビジョン、イノベーション、製品の3点に集約されると述べている。具体的な応募数については共有されなかったが、同氏によると数百の応募があり、過去最多だったそうだ。過去のプログラムと同様に、2023年度のプログラムは1月から6月までデジタルで開催され、オリエンテーションと卒業式は対面イベントである。

メンターシッププログラムのメリット

セフォラアクセラレートのほかに、ほかの小売業者やブランドもメンターシッププログラムを正式に立ち上げている。その多くはブラックライブズマター(Black Lives Matter)への対応として生まれたり再編成されたりしている。いくつか例を挙げると、クレドフォーチェンジ(Credo for Change)、アルタビューティ(Ulta Beauty)のミューズアクセラレター(MUSE Accelerator)、タワー28のクリーンビューティサマースクール(Clean Beauty Summer School)、トゥルービューティベンチャーズ x ブリッジメンターシップ(True Beauty Ventures x Bridge Mentorship)、グロウレシピメンターシップ(Glow Recipe Mentorship)などがある。セフォラのプログラム刷新以降、クルフィビューティ(Kulfi Beauty)、トピカルズ(Topicals)、54スローンズ(54 Thrones)など、セフォラアクセラレートプログラムに参加したブランドはすべてセフォラの店舗に登場している。

アーバンディケイ(Urban Decay)とカリレイ(Caliray)の創設者であるウェンディ・ゾムナー氏は「私がスタートしたとき、まわりからは真剣に受け止められず無視された。応援してくれる人は大勢いたが、正式なプログラムのなかにはいなかった」と述べている。同氏はプログラムアドバイザーの1人であり、(プログラム参加の)創業者たちはゾムナー氏に相談することができる。「(ビューティ業界は)は非常に複雑な環境になっているので、新規ブランドが経験豊かな人にアドバイスをもらえるのは素晴らしいことだ」。

ゾムナー氏は1996年にアーバンディケイを設立したとき、そして2021年に同氏の2番目のブランドのカリレイを立ち上げたときには美容業界はいまとは大きく異なっていたと説明する。1996年にはインターネットはまだ生まれたばかりで、D2C eコマースやソーシャルメディアは存在していなかった。セフォラはアーバンディケイの品揃えに広いスペースを提供したが、いまではブランドらは数インチの棚スペースを競い合っている状況だ。だが、数十年前とは異なり、企業は情報やサプライヤーに簡単にアクセスできるようになっている。

プログラムのコホートの創設者には顧問を務める投資業界のメンバーの数人にもアクセスが与えられる。コンシューマープライベートエクイティ会社、アリアグロースパートナーズ(Aria Growth Partners)の創設者兼マネジングパートナー、トレバー・ネルソン氏は、投資家は多くの時間を創業者とのミーティングと関係の構築に費やしているため、セフォラアクセラレートと提携する機会は(投資家側とも)完全に調和していると述べている。

ネルソン氏は次のように語っている。「我々のフォーカスは、(企業の)初期段階にある創業者がミスを避けて、製品の可能性を最大化することで機会を最大限に生かすのを常に支援すること。それが我々の仕事の中心的な部分であり、(その目的に対して)しっかりした構造があるセフォラで実現できるのはエキサイティングだ」。

アクセラレートプログラムでBIPOCブランドを推進

セフォラはブラックライブズマター運動と多様性・公平性・インクルージョンを支持する呼びかけに応じて、2020年に同社のアクセラレートプログラムを大幅に刷新した。2021年のコホートはBIPOC(黒人、先住民、有色人種)所有・主導のブランド限定の初のコホートだった。また、セフォラはマーケティングキャンペーン秀逸なシェードマッチングテクノロジー15%プレッジ(15 Percent Pledge)への尽力を通じてBIPOCの美容企業をサポートしている。2020年以降、セフォラは黒人所有のブランド数を24と2倍以上に増やすことができ、また、2021年末にはヘアカテゴリーにおいて黒人所有ブランドの割合を15%にすることができた。

「美容製品と消費財の繁栄しているエコシステムは友好と善意にあふれている。他業界が同じかは知らないが、この点は我々の業界のエキサイティングなことのひとつであり、セフォラがその背景と場所を提供してくれていることは素晴らしい」とネルソン氏は述べた。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Inside Sephora’s 2023 Accelerate cohort

EMMA SANDLERS(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

Source