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創業145年のイタリアのパスタ製造業者のバリラ(Barilla)は、高価格帯のパスタの商品ラインによって、新しい層の買い物客に訴求しようと試みている。
同社は今秋、百貨店のノードストローム(Nordstrom)とのパートナーシップにより、新しい商品ライン「アル・ブロンゾ(Al Bronzo)」を発表した。このパスタは、10月の全国パスタ月間(National Pasta Month)を記念して、同社はレストランで提供された。同社はこの独占販売に続き、Amazonでの販売を開始し、現在は、全国の小売業者への出荷を進めるている。バリラは、代替原料を使った新製品を多数発表することで、同社の安価な食料品店の基盤を離れ、健康志向が高く高級志向の買い物客に訴求しようと試みている。新商品の展開に加え、同社はロゴやパッケージの更新など「多少のブランド刷新」を行い、ブランドの外観と雰囲気をより現代的なCPGブランドに近づけようとしていると、ピング氏は語る。
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高級・健康志向の波
アル・ブロンゾの形状は、微細に凸凹を付けた型を使ったバリラの新しいブロンズダイス製法で作られており、従来のセモリナ小麦のレシピよりもしっかりした歯ごたえになり、ソースが絡みやすくなると、同社は述べている。この商品ラインは、同社のフラッグシップの商品ラインとすぐに見分けられるよう、明るい赤色の箱で販売される。現在のところ、アル・ブロンゾは、ブカティーニ、スパゲッティ、リングイーネなど、いくつかの人気商品の形状で販売されている。さらに、アル・ブロンゾのSKUは、箱ごとに2ドル99セント(約407円)の希望小売価格で販売されており、これは約1ドル99セント(約271円)で販売されている同社の青箱よりも高額で販売される。同社はアル・ブロンゾの商品ラインに加え、より多様な家庭の料理人に訴求するため、高たんぱくでグルテンフリーのパスタ商品も拡充していく。
バリラの米国部門のマーケティングディレクターを務めるジェニファー・ピング氏は、アル・ブロンゾは、パンデミック期間に自宅での調理が急増し、同社が過去最高の小売売上高を記録したのを受けて発売されたものだと、米モダンリテールに語った。同社はパスタとヌードルの市場規模の全体的な増加の恩恵を受けており、この市場は2022年の468億4000万ドル(約6兆3700億円)から、2029年には778億3000万ドル(約10兆5800億円)に成長すると予測されている。一方で、同社の年間収益は2021年に39億3000万ユーロ(約5660億円)で、2020年の38億9000万ユーロ(約5600億円)から微増している。
「当社はこの時期に、消費者の好みについて多くのことを学び、より高級なパスタを販売できる機会を見いだした」と、ピング氏は述べている。実際にこの4〜5年、同社はパスタ売り場で、より高級で健康的なものを探し求める顧客が増えていることに気づいた。「そこで当社は、より特別なでプレミアムなものを食卓に出したい人々のために、アル・ブロンゾを発売した」と、同氏は付け加えている。
小売店の反応も上々
同社は現在のところ、アル・ブロンゾの売上額を明らかにしていないが、小売業者やノードストロームでの発売に関するフィードバックは肯定的なものだったと、ピング氏は語っている。ノードストロームでは、シェフたちが、かぼちゃとパンチェッタのペンネ、甘辛いステーキの炒め物など、期間限定の新メニューを振る舞うなど、アル・ブロンゾを食事客に紹介するのに一役買った。「しかし、当社が目にした驚くべき反応のひとつは、多くの小売業者が6つのSKUをすべて売り場で販売したことだ。通常なら、小売業者は新しい商品ラインの3つか4つしか置かない」と、同氏は付け加えている。
ブランドおよびコミュニケーション戦略コンサルタントのカーリー・サザランド氏は、バリラがプレミアムに参入することは、「レガシーブランドが現代の好みだけでなく、インフレや景気後退の懸念といった現代の実情に合わせた商品を作り出している例だ」と述べている。
インフレがやわらぐ兆候がほとんど見えないなか、バリラのようなブランドは、「消費者が外出に対して予算を節約している状況において、家庭での食事を特別なものにするため、またはより多くの場合、贅沢なものにするため」新商品をリリースしていると、同氏は述べている。
3年前に発売した商品もヒット
バリラが消費者の嗜好の変化への対応を試みるにつれ、プレミアム商品は全般的に大きな注目分野となった。高たんぱくでグルテンフリーのパスタのトレンドは、過去数年間にバンザ(Banza)などのブランドによって人気が高まり、バリラも2018年にひよこ豆をベースとする独自のバラエティを発売することになった。
バリラの伝統的な商品ラインは依然としてベストセラーだが、同社は米国において健康的な商品がしだいに売上の大きな割合を占めつつあることを目にしている。
「高たんぱくの商品は伸び続けており、赤レンズ豆から作られたものなど一部の商品ラインは、この3〜4年にわたって優先事項となってきた」と、ピング氏は述べる。また、2019年に発売されたひよこ豆パスタの商品ラインは、2023年初めに新しいオルゾー形状のSKUが追加される予定だ。「豆製のパスタはもう新奇なものではなく、当社は引き続き、新製品でさまざまな食品に挑戦していきたい」と、同氏は述べている。
バリラの知名度が低い商品ライン、たとえば2019年に発売されたプロテインプラス(Protein+)などもこの影響を受け、この1年間で、買い物客や小売業者のあいだで人気が再燃した。「私はプロテインプラスを、当社のスリーパーヒットと呼んでおり、販売数量は上向きつつある」と、ピング氏は述べている。バリラの黄色い箱のプロテインプラスのパスタは、グルテンフリーではないが、「セモリナから作られており、通常のパスタと同様な味なので、多くの顧客が買い求めている」と、同氏は述べる。
高たんぱく低糖質の流行は、その多くが2010年代のダイエットトレンドから生まれたものだと、ピング氏は説明する。ケトやパレオなどのレシピが調理習慣の主流になった頃だ。「現在は、炭水化物を控えめに食べ、栄養価の高いオプションとして豆パスタなどの材料を使用する段階に移行している」と、同氏は述べる。「幸いなことに、現在は、炭水化物がそれほど悪いものと見られていない」。
1世紀以上前に創設されたバリラの目標となるのは、より頻繁にパスタを買い求めるよう買い物客を引き付け続けることだ。
「訪問客が回復した今、小売業者は店舗でより多くのイノベーションを望んでいる」と、ピング氏は述べている。
[原文:How Barilla is trying to go premium with its new pasta line]
GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Barilla