12月2日、高級時計の最大手ロレックス(Rolex)は、時計業界に向けてある発表を行った。それは、ロレックスが認定した同社の中古時計の販売を、1816店舗の正規販売店を通じて正式に開始するというものだ。まずは6店舗からスタートし、2023年中にさらに店舗を増やす予定である。
昨年は、バレンシアガ(Balenciaga)のようなラグジュアリーファッションから、ナイキ(Nike)をはじめとするスニーカーやアークテリクス(Arc’teryx)などのアウトドア用品にいたるまで、多くのファッションブランドが独自の中古衣料販売を開始、ザ・リアルリアル(The RealReal)やポッシュマーク(Poshmark)といったサードパーティ・プラットフォームから市場シェアをいくらか奪回しようとしている。だが、今回のロレックスの市場参入は特に重要だ。高級時計業界におけるロレックスの市場シェアは30%近くと、この分野では圧倒的に優位であり、次いでオメガ(Omega)が7.5%となっている。
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ロレックスの再販参入は高級時計の需要全般を増加させるか
ロレックスの時計は、中古市場でも圧倒的な支配力を示している。しかしこれまでは、いわゆる「グレーマーケット」、つまりロレックスと正式に提携している販売店以外の中古品販売店のみでしか売られていなかった。それらのプラットフォームは、ロレックスの需要で何十億も儲けている。また、サプライチェーンの問題と高まる希少価値によって、新品のロレックスをブランドから直接入手するのは長期間待たない限りは不可能となり、需要は高まる一方である。多くの人にとって、グレーマーケットを通じてロレックスを入手するのが最良の方法だった。
しかし現在、その状況は変わりつつある。ロレックスが正規販売店で販売する中古時計を認定するようになれば、サードパーティ・プラットフォームはもっとも旨味のあるビジネスをいくぶん奪われることになるのかもしれない。ロレックスは消費者に直接販売していないため、ブヘラ(Bucherer)のような正規販売店がロレックスの新品の時計を購入する唯一の方法となっている。
だが、時計の非正規サードパーティ・マーケットプレイスであるクロノ24(Chrono24)の共同CEOティム・ストラッケ氏は、これは予想された動きであり、業界にとってよいことだという。ロレックスがみずから中古時計販売を行うのは、クロノ24の収益を損なうものではなく、むしろ、どの国のものかを問わず高級時計の需要全般を増加させるだろう、というのが彼の考えだ。クロノ24によれば、同社の売上の40%はロレックスであり、18歳から34歳のユーザーへの売上の44%もロレックスだ。
「さらに初回購入となる大勢の人々に対して、自慢できるスイス製の時計を初めて入手してみようかと思わせる動機となるだろう」とストラッケ氏は述べた。
サードパーティとブランド、両者による再販が共存できる市場
ストラッケ氏いわく、クロノ24の売上は年間を通して伸びており、2022年上半期には前年比43%増、サイト上で購入できる時計の数は50万点を超えている。
「今回の発表は、我々のプラットフォームにおけるロレックスの需要をさらに煽るだろうと予想しており、ジュネーブのほかの高級ブランドがどう反応するのか、非常に楽しみだ」と、ストラッケ氏は言う。
市場には約3000万点のロレックスが流通していると推定され、新品のロレックスの供給をはるかに上回る需要があるため、より多くの顧客が中古時計市場に目を向ける可能性がある。デロイト(Deloitte)によれば、中古時計市場は2030年までに350億ドル(約4.7兆円)に達すると予想されている。ロレックスの中古品の供給が新品にくらべて過剰であることは、需要の流入とともに中古品セクターにとって好都合で、サードパーティの再販業者とロレックスの正規販売店の両方が共存できるというストラッケ氏の主張の信憑性を高めている。
最近では、リセール業界のほかの人々も同様の主張をしている。1月、再販業者アーカイブ(Archive)の共同創業者でCEOのエミリー・ギトンズ氏はGlossyに対し、サードパーティ再販業者はブランド直営の再販とは異なる顧客を対象としているため、競争相手とは考えていないと語っている。ブランド直営であれば、そのブランドのマニア(ロレックスには多くのマニアがいる)に応えることができるし、一方でサードパーティ再販業者は、カテゴリー全体を閲覧したい人々のためのワンストップショップとして機能できる。
「再販は世界で1300億ドル(約17.7兆円)と見積もられているホットな分野であり、したがって複数の企業が関与する余地がある」とギトンズ氏は述べている。
[原文:Can Rolex’s new resale program and booming secondhand market coexist?]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)