アメリカは中国に対して経済制裁を科しており、半導体製造装置などの輸出を禁止しています。そんな中、中国政府がアリババとテンセントに対してオープンソースの命令セットアーキテクチャ「RISC-V」を用いたチップの開発を促していることが報じられました。
Alibaba, Tencent enlisted to help China build RISC-V chips • The Register
https://www.theregister.com/2022/12/01/alibaba_tencent_china_riscv/
China’s chip industry fights to survive U.S. tech crackdown – Nikkei Asia
https://asia.nikkei.com/Spotlight/The-Big-Story/China-s-chip-industry-fights-to-survive-U.S.-tech-crackdown
IntelやAMDがPC向けに開発しているCPUのほとんどはx86という命令セットアーキテクチャを採用しており、スマートフォン向けCPUはArmアーキテクチャを採用しています。x86やArmといったアーキテクチャを採用してCPUを開発する場合、多額のライセンス料を支払う必要があるため、CPU市場への新規参入には高い壁が存在していました。一方で、RISC-Vはオープンソースで開発されている命令セットアーキテクチャで、ライセンス料を支払わずとも開発に参加することができます。このため、RISC-Vは半導体業界に大きな変革をもたらす技術として期待されています。
RISC-Vは「ムーアの法則」以来の技術イノベーションになるとの予想 – GIGAZINE
そんなRISC-Vについて、中国政府がアメリカからの制裁の影響を抑えるために、アリババとテンセントにRISC-Vチップの開発を促していることが報じられました。報道によると、中国はArmアーキテクチャを採用したチップの代替となるチップの開発を急いでいるとのこと。Armアーキテクチャはイギリスに本拠地を置くArmによって開発されたアーキテクチャですが、親会社のソフトバンクがArmをアメリカで上場させることを目指していることから、将来的にArmアーキテクチャにも制裁の影響が及ぶことが懸念されていると伝えられています。
中国政府がRISC-Vの開発を促進しているという報道について、エンジニア兼投資家のエリック・スレシンガー氏は「RISC-Vプロジェクトがハードフォークされ、イノベーションが滞る」「SiFiveのようなRISC-V開発企業に制裁の影響が及ぶ」といった悪影響が起きる可能性を指摘しています。一方で、スレシンガー氏は「Codasip」などのヨーロッパに拠点を置くRISC-V開発企業には利益をもたらす可能性があると述べています。
This type of RISC-V mandate likely leads to:
1. A hard fork in the RISC-V ecosystem (self-defeating because it suffocates innovation)
2. US pressure/controls on @SiFive (US based, backed by Sutter Hill)
3. Benefit to European players like @Codasiphttps://t.co/5PVHRsg4pj
— Eric Slesinger (@ericsles)
上述の通り、アメリカは中国に対して半導体製造装置の禁輸措置などの制裁を科しています。しかし、Nikkei Asiaによると、2018年時点では中国産半導体の国内シェアは15%未満だったものの、制裁後の2021年にはシェアが24%にまで上昇したとのこと。また、中国の半導体メーカー「SMIC」ではIntelですら量産化に苦戦した7nmチップの量産化に成功していることも報告されており、中国の半導体技術が急速に進歩していることが指摘されています。
中国の半導体メーカー「SMIC」がIntelすら苦戦した7nmチップを大量生産し世界第3位相当のファウンドリへ急成長している実態が判明 – GIGAZINE
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