大気質モニターにかかる「隠れたコスト」について大気質モニター製造スタートアップのCEOが語る

GIGAZINE
2023年06月29日 21時00分
メモ



温度計や湿度計などと同じように、大気汚染の度合いを測ることができる「大気質モニター」を導入し、日本でもたびたび話題になるPM2.5や黄砂などの大気に関する情報を得ようとする人は少なくありません。しかし、こうした大気の質を一般の人々が確認するには想像以上にコストがかかってしまうという問題について、大気質モニターを製造・販売するスタートアップのAirGradientが解説しています。

The Hidden Cost of Air Quality Monitoring
https://www.airgradient.com/blog/hidden-costs-of-air-quality-monitoring/


2023年頃から、大気質モニターを取り扱う大手のメーカーが無料のAPIを提供しなくなり、有料プランへのアップグレードを推奨する事例が増加しているそうです。AirGradientのアヒム・ハウグCEOいわく、多くのユーザーが、大気質モニターにかかる費用は「ハードウェア購入時の費用」のみか、場合によってはデータにアクセスするための「サブスクリプション費用」だけだと考えているとのことですが、実際はより多くのコストがかかる場合があるとのこと。

ハウグCEOは「業界の多くのメーカーがAPIを有料化するような憂慮すべき傾向を示していますので、大気質モニターを所有することで負担になる様々なコストに焦点を当てて解説したいと思います」と話し、大気質モニターにかかる目に見えにくい費用について紹介しました。


まず、1000ドル(約14万円)程度までの価格帯の大気質モニターは、ほぼすべてSenseAir、Plantower、Sensirionといった企業の「センサーモジュール」を使用しているという重要なポイントがあります。これらのモジュールの中には寿命が限られているものもあり、多くの場合は2~3年ごとに交換する必要がある場合があるとのこと。こうしたモジュールを直接交換するのは本来であれば非常に簡単ですが、実際は多くの企業がモジュールを専用カートリッジに組み込んで販売しているため、故障した時に交換するのが困難だそうです。

さらに、センサーモジュールの値段は通常2ドル(約290円)~15ドル(約2170円)であるはずなのに、モジュールを組み込んだカートリッジは元値の最大10倍の値段で販売されていることも多いそう。また、モジュールが正常に動作しているにもかかわらず、頻繁に交換用カートリッジを購入するようなメッセージを表示する製品も存在するとハウグCEOは指摘しています。以上の事例から、内部の部品を簡単に交換できないという「可用性」の問題があることが分かります。


加えて、ハウグCEOは、大気質モニターそのものの耐久性についても言及しています。AirGradientが開発する大気質モニターやオープンソースのDIYキットはまさに製品の寿命に焦点を当てて設計したものであることから、ハウグCEOは「修理可能で長寿命の大気質モニターを設計するのは、本来は非常に簡単です」と指摘。しかしながら、あえて耐久性を高くしてしまうと利益につながらないと考える企業もあり、実際はより壊れやすい製品が出回っているとのこと。ハウグCEOは「残念なことに、多くの大気質モニターは数年使用しただけで壊れてしまい、修理が困難であったり、そもそも不可能であったりすることが多いです」と感想を述べています。

もうひとつ大きなコストがかかるのが「エコシステム」です。ハウグCEOは「多くの企業はサブスクリプションで稼ぎたいという強い願望を持っているようで、しばしばエコシステムが閉鎖的になることがあります」と指摘します。エコシステムが閉鎖的になってしまうと、サードパーティー製アプリなどでAPIを介して無料でデータを取得することが難しくなったり、APIが更新されずにサードパーティー製アプリが対応しきれなくなってしまったりといった弊害が現れてきます。

by ehpien

顧客が大気質モニターからデータを得られたとしても、そのデータの所有権は顧客ではなく企業にあるという点もハウグCEOは疑問視し、「私たちは、大気質データはメーカーではなく大気質モニターの所有者のものであるべきだと強く信じています」と主張。「AirGradientは自己資金で運営されているスタートアップであることから、持続可能性と顧客に対する誠実さを重視していることに他企業との差があります」と語りました。

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