ナニこれ?奈良市で出土した「使いみち不明なものの展示会」で出会う“わからない”という面白さ

デイリーポータルZ

世の中には何のために存在するのかわからないようなものが数多くあるものだ。そういったものたちは大昔から存在していたらしく、ときおり発掘現場から出土しては考古学者たちを悩ませるという。

今回は、そんな「何のために作られたのかわからない出土品」ばかりを集めた「また!ナニこれ?ー奈良市出土の用途不明品ー」が奈良市埋蔵文化財調査センターで開催されると聞き、喜び勇んで見学に行ってきた。

コロナ禍で棚ボタ的に大成功を納めた令和2年度の第1回「ナニこれ!?」展

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奈良市郊外にある奈良市埋蔵文化財調査センターにやってきた。
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すっかりおなじみになった消毒用のアルコールスプレーもここではこうなる。土偶かと思ったら、あとで教えていただいたところによると鉄製の甲冑だそうだ。初っ端からかましてくれて嫌でも期待が高まるというものだ。
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取材に答えてくれたのは、埋蔵文化財調査センター所属の学芸員である原田憲二郎さんだ。

用途不明の出土品を集めて展示会をするのは、実は令和2年に続いて2回目である。

そもそもどうして用途不明品を展示しようかと思ったかといえば、原田さん自身がそういったものが大好きだからという、なんともあけすけな理由によるという。

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1回目を開催した令和2年といえば、コロナが広がり始めたころでしたよね。外部から講師を呼んで講演会をやろうという話もあったんですが、そういう普通の催しは難しいということになった。そういった中で、好きならまあやってみればと言われたんで、用途不明品の展示をやってみることにしました。用途不明品というと、どうしても説明が難しいということで、あんまり表に出る機会もなかったんです。で、実際やってみたらこれが意外に好評でして……。

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コロナがなければこの企画もなかった。棚ボタ的な成功だったわけですね! 

 なんと令和2年度の催しの中で最大の集客を記録してしまったのだそうだ。文化施設の価値は来館者数だけで決まるわけではないのはもちろんだが、やっぱりこれはすごいことだ。

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展示室はそれほど広くないけれど、不思議なものがいっぱいだ。
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お話を伺う前に展示室をのぞいてきたんですが、大きなものから小さなものまでほんとうにいろいろな用途不明品がありますね。

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スペースの制約もあってそんなにたくさん置かれへんということで、前回は奈良時代の出土品に絞ったんですけど、今回はぐっと時代を広げて縄文~江戸時代まで展示しています。

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なるほど、バリエーション豊かなわけだ。

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普通の展示をやるとだいたい20分くらいで出ていかれるんですけど、この展示だと1時間くらい居はりますね。みなさんいろいろ考えながら見てるんやと思います。そうして出てきた意見や感想も展示物にしてしまおうということで、こういうボードも設置してます。

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来館者が書いた感想や考察にも熱がこもる。
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熱量がすごいですね。図入りで考察を説明してる人もたくさんいて。

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そうなんですよ。私も楽しく読んで参考にさせてもらってます。

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集合知だ。用途不明品の用途がビシッと決まった例ってあるんでしょうか?

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縄文土器なんか、最初に出てきたときは用途不明品の際たるものでしたよ。

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あの縄文土器が!

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江戸時代の学者・藤原貞幹の書き記した「好古日録」という書物に収録された縄文土器の破片。「何ノ器タルヲシラズ」とある(「国立国会図書館デジタルコレクション」より)
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この人はすごく素直に「何なのかわからない」とはっきり書いてはりますね。研究をしてると、どうしても自分たちで調べてわかったことっていうのを書きたくなるもんなんです。よくわからんもんについては後回しにされて埋もれていくことが多いんです。

でもそれではもったいない。今は思い付きレベルの考察しかできなくても、後の発見で仮説が肉付けされていくことがあるもんなんです。そのためには多くの人に見てもらう必要があるということで、今回の展示も意義があったと思います。

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なるほど、せっかく掘り出したのに再度埋もれてしまうのはたしかにもったいないですね。ちゃんと公開して見た人に考えてもらうのが大事だと。

 というわけで、

 

読者の皆さんへのお願い

是非、展示品の使い道や製作者の意図を想像しながら読んでみてください。その思いつきが明日の考古学の知見を広げるかもしれません。

 

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これなんか不思議な形で人気ですね。

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獣脚付円盤状土製品(奈良時代)
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獣っぽい脚だ。でも指が7本もありますね。それに複雑な溝が。うーん、全体像が気になる。

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一応、盤上の溝にお香の粉末を入れて火をつけて、時間を測るのに使ったんじゃないかと推測しています。

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時計かもしれないと。

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7本指の獣というのはいないので、神獣かもしれない。おそらくは中国由来の。その神獣が火にまつわるものだと、お香の火とリンクするかもしれないんですけど、ぜんぶ想像でしかありません。

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ほぼ物語作りだ……。

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最初はそれでいいと思うんです。思い付きレベル、物語レベルの話で。根拠や資料を集めるのはその次の段階でもいいと思います。

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内部に仕切りがある壺
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これも不思議です。仕切り板は底の方にしか残ってませんが、もともとは壺の口の方まであったと考えられます。

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『トリック』で仲間由紀恵がいかさまに使ってそう。

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そうそう、そういう思い付きが大事なんです!

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こんなんでいいんだ……。

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蓋に突起がついた亀甲型陶棺(飛鳥時代)について解説する原田さん。
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用途は棺でほぼ確定。しかし同型の棺は多くあれど、蓋に突起がついたものは他に出土していないため、なにかしらの意味があるのかどうか判断しかねているのだとか。
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動物型の出土品はかわいくて人気がある

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犬型土製品(17世紀頃)
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かわいい!犬以外にはないんですか?猫とか。

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猫はないですね。ここにはないけど猿形は出土したことがあります。鼻の穴を作り込み過ぎて豚に見えるやつも混じってるけど、豚もないです。

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残念、猫はなかった。

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ほぼ全国で出土しています。でもとくに大阪でたくさん出てるので、大阪が一大産地だったと考えられます。

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クオリティに個体差がある。
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この顔がきりっとしたやつとか、今でも売り物になりそうです。

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そう、今でも似たものがあるんです。奈良市にの法華寺という尼寺では、土でできた犬が安産のお守りとしても配られてるんですよ。

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あるんだ!ということは、これも安産のお守りだったんでしょうか?

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そういう説もありますね。犬は子供が多いから。ただ、ほかに玩具やお土産だったという説もあるんです。

面白い出土例もありますよ。女児が埋葬されたお墓の中から副葬品としてミニチュアの羽釜(※お米を炊くときに使う、胴の周りに土星の輪のようなつばがついた釜のこと)や風炉(※茶道で湯を沸かす道具)が出てきまして、羽釜の下、風炉に納めるかたちでこの犬がいたんです。それで、女児の持ち物で安産のお守りはないだろうと。

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女児を埋葬した墓からミニチュアの羽釜や風炉と一緒に出土した例もある。
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なるほど、では玩具ですかね。

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実は、これにも反論があるんです。

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なんと。

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もともと亡くなった女児のお母さんの持ち物で、子供が生まれてからはその子のおもちゃになってたんじゃないか、だから本来の用途は安産のお守りだという仮説です。そう言われると、それもありな気はしますよね。

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たしかに話としてはじゅうぶん自然です。ただ、それだといくらでも解釈の仕方がありますね。

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そうなんです。考古学って一つや二つの例で結論が出ることはなくって、たくさんの類例を集めることでだんだん解像度が上がっていく学問なんやと思います。

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鳥紐蓋(とりちゅうふた)(平安時代)
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これも見学者に人気がありますね。オシドリをかたどった蓋です。酒器の注ぎ口に装着していたと考えられています。

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こんな感じで、酒器の蓋にされていたらしい。
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オシドリと言えば夫婦円満の象徴だから、婚礼の儀式で使われたんじゃないかとの意見が来訪者から出ています。

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中の酒が揺れるとちゃぽちゃぽ音がするから、水鳥……?物理的な用途だけじゃなくてそのモチーフを選んだ意図まで探るとなると、かなり難度が高いですね。

人形の出土品は少しホラー

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焦がして描かれた人形(奈良時代)※うっすらと残る顔の描き込みに注目してください
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この人形はすごく珍しいものです。28年前に出土したんですが、予算の関係でずっと水につけて保管していました。最近になってやっと保存処理ができて展示するようになったんですけど、その過程で顔とか服の模様がじつは墨じゃないということがわかりました。これ、線香かなにかでジクジク焦がしながら描いてあるんです。

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変わった描き方ですね。水につけておいた方が保存によいというのも驚きです。

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そのまま空気中に出すとどうしても乾燥でひびが入ったり、風化が進みますからね。

額に穴が開いてて吊るせるようになってて、なにかのお祈りに使われたのかもしれません。かなり呪いに近いんやろなという気もしますけどね。

ところで、この人形の顔、どう見えますか?

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えっと……  

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こんな感じですか?笑ってる。

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口開けて笑ってるように見えますよね。でもね、28年前に発掘された直後にちゃんと実測図を作って報告したのが残ってるんですよ。それがね、

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これです。

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え?

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不思議なんです。

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……同じ物なんですよね?

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同じ物です。

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……。

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たしかに保存処理する前は少し見にくかった気もします。でもここまで違うとねえ。お客さんに解説するときとか、「次見に来たときは泣いてますよ」とか冗談言うんですよ、ハハハ。

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ハ、ハハハ。

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束ねられた人形(平安時代)

井戸の底から出てきたという大量の人形。

これも呪物かと身構えたが、どうやらその可能性は低いらしい。

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たしかに束ねた上から釘が打たれてたんですが、貫通している位置がバラバラなんですね。呪いの人形なら胸とか目とか、ピンポイントで釘を打ち通すはずなんです。自分に見立てた人形を使って穢れを祓ったり病気の治癒を祈願することはありますが、そういう目的で作ったものを人に見られないように井戸の底に隠したのかもしれません。

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他人の隠し事を暴いてるみたいでなんだか気の毒な気がするなあ。

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「伊勢竹河(いせのたけかわ)」と読める。
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こちらは「伴廣富(とものひろとみ)」。女性だろうか。
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一部の人形はわざわざ壺に入れて井戸の底に沈められていた。いったい、なにをそこまでして隠したかったのだろう。
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隠した人の意図に反して、井戸の底は水の状態が安定しているため木製品は残りやすいらしい。
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バックヤードにも謎の出土品がいっぱい

とまあ、いろいろ考えながら展示をみていると1時間2時間はあっという間にすぎてしまうのである。

上で紹介した展示品は一部に過ぎないけれど、ここからは滅多に見られない埋蔵文化財調査センターの裏側を見学させてもらうことに。

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「せっかくやから裏も見ていかれますか!」というありがたいお誘いが。

展示室以外の場所は、出土品を調べたり資料を保管するためのスペースである。

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バラバラになった土器の修復。気が遠くなりそう!

焼き物の破片など、組み立てて復元されていなければ素人目にはすべて用途不明の出土品である。そうすると、展示室にあった出土品たちはあれでもとっつきやすいものを選んで展示してくれていたのだな。

修復品の白い部分は石膏、接着に使われているのはセメダインCだ。

「変わった材料はとくに使ってません」

と原田さんは言う。

ただ、千年前の土器や陶器がきれいに残っているのと対照的に、石膏やセメダインは数十年もすると劣化が目立ち始めるという。

焼き物はすごいのだ。

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表面の模様を紙に写し取ったり、
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方眼紙に描きとったりする。
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刃物で削った跡も丁寧に漏らさず記録してある。

この細長い木の棒はお箸かな?と思ったら、なんと現代のトイレットペーパーに相当する器具だという。出土した場所の土から人の腸内に寄生する回虫の卵が大量に見つかったことが決め手になった。

これだって、虫の卵がなかったら謎の木の棒として用途不明品の仲間入りをしていたかもしれないのだ。

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電子化も進んでいるとはいえ、年季の入ったトレース台もいまだに現役。

旧棟はまるで地層

今までいた建物は20年ほど前に建てられた新棟なのだが、同じ敷地内にある旧棟も保管スペースとして使われている。

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旧棟の入口。
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中は、床から天井まで出土品を納めたケースがうずたかく積まれていた。
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かつて事務所だったという部屋もこう!

文字通り壁のように積み上げられた大量の保管ケースに圧倒されてしまった。

これはまるで地層だ。

地層から掘り出された出土品が、ここでまたこうして層のように積み上げられているのだ。どこになにが入っているのかは記録されているということだったけれど、目当ての資料にたどりつくにはまたも発掘作業が必要になるにちがいない。

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試しに覗いてみた箱の中はこんな感じ。一つ一つのケースがすごく重いに違いない。床が抜けないか心配になる。
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階段の踊り場も土器でいっぱいだ。
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「こういうのも用途不明品ですね」といって、手近なケースから出して見せてくださった土馬。
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特別に許可をいただいて手に持たせてもらった。

手に持った土馬はひんやりと冷たくざらざらしていて、「先週図工の時間に作りました」と言われたら信じてしまいそうなほどしっかりしていた。大昔のものだからといって古ぼけて見えるとは限らないのだ。

「触ってもらわないとわからないことも多いんですよ」

と原田さんは言うが、その通りだと思った。

 

令和4年度秋季特別展「また!ナニこれ?」は11月30日まで開催されています。この記事では紹介しきれなかった出土品もたくさん展示されています。興味を持たれた方は是非見学に行ってみてください。

令和4年度秋季特別展「また!ナニこれ?」

遺物はロマン

用途不明出土品の研究は、思った以上に想像力がものをいう世界だった。出土品の製作者がクリエイターなら、それを掘り出して調べる人にもクリエイターの資質が必要だったのだ。

デイリーポータルzで作っている工作などもいずれ用途不明の遺物としてだれかの想像力をかき立てることになるかもしれない。そう思うと、少しワクワクした。

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と思ったら、同じことを考えている人がいた。

 

 

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