私の入浴シーン

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私の入浴シーン(スズキナオ)

風呂上がりに飲みにいきたい店”というようなテーマで雑誌に記事を書くことになった。銭湯をスタート地点に、その周辺の飲食店を訪ねる。ただ文章を書くだけでなく、私が散策したりあちこちで酒を飲んだりしている様子をカメラマンに撮影してもらい、その写真もあわせて紙面に掲載されるという。

誰に頼まれなくても普段からそういうことをしている私だから、それは大変ありがたい依頼だったのだが、一点驚いたことがあって、それが、編集者が設定してくれた取材スケジュールの中に「銭湯での入浴カットを撮影する」という予定が組み込まれていたことである。いや、正確には「スズキさん、入浴カットの撮影って大丈夫ですか?」と事前に聞かれ、二つ返事で「ええ、OKです!」と調子よく返事をしたのだったが。

まあとにかく、私は生まれて初めて、自分が入浴している場面を撮影してもらうことになった。アイドルやお笑い芸人が温泉に入っているシーンをテレビなどで見たことは何度となくある。しかし、まさか自分がそのような場面での被写体になることがあるとは、想像したこともなかった。

当日、取材を快諾してくださった銭湯に向かう。営業開始直前に特別に撮影させてもらうことになっている。ご迷惑をかけぬためにも短い時間で、迅速にことを済ませる必要がある。「では、スズキさん、とりあえず脱いでいただいて、お風呂の方へ」と、取材に同行して細かな段取りをしてくれている編集者から指示が出た。慌てて服を脱ぐ。

編集者、カメラマン、銭湯のオーナー、そして私。4人が浴場内にいて、私だけが裸である。タオルは腰に巻いているが、照れる。短い時間とはいえ、お風呂につからせていただくわけだから、まずはきちんと体を洗い清めておく必要がある。

私以外の人びとが「ここら辺からこういう角度で撮りたいなと」「ああ、いいですね」などと打ち合わせているそばで、私だけ裸で石鹸を泡立て、シャカシャカと急いで体を洗う。それが終わり、「ではスズキさん、このあたりに入ってもらっていいですか」と、いよいよ撮影スタートである。

広い湯舟に私。そこにカメラが向けられている。パシャ、パシャとシャッター音。カメラマンと編集者がカメラのモニタをのぞきこみ、撮れた写真をチェックしている。「うんうん、この感じでもう少しこっちを」「ああ、わかりました」みたいな会話が聞こえる。それ以外はほとんど音のない世界。静かだな……ああ、私はいま、何をしているんだろう。

「スズキさんいいですよ!これで大丈夫です!」と、編集者とカメラマンの手際のよさに助けられ、撮影はスムーズに終了した。その日一日、ずっとフワフワした不思議な気分が続いた。

雑誌の発売は少し先なのだが、私の入浴カットなどという謎の写真が本当に掲載されるのか、今のところはまだ半信半疑でいる。

終わってふたたび解説です

雑誌のロケで入浴シーンの撮影があったそうです。詳細な状況描写で思わず笑いましたが、 断らなかったスズキナオさんがすごいなとも思いました。雑誌が発売して、入浴シーンがあるか楽しみですね。

 

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