ハック?内部犯行? 経営破綻&出金停止のFTXから500~800億円が一夜で消える

GIZMODO

出金停止後も流出が止まらない…

経営破綻で取引停止となった暗号通貨取引所大手の米FTX。スタンフォード大の教授を両親に持ち、UCバークレイでFTXを立ち上げ「時代の寵児」と呼ばれたクルクル巻き毛のサム・バンクマン・フリード(通称SBF)CEO。彼は160億ドル(約2兆2400億円)の個人資産を数日で失い、米史上類を見ない富の消失が世界を仰天させています。

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FTXがどうやって崩壊したか
Video: Wall Street Jornal/YouTube

そんななか、11日金曜の破産宣告直後にFTXのウォレットから何百億円ものお金がこつ然と消えていたことが判明し、外部の犯行を訴える経営陣の説明とは裏腹に、会社への信用を失った投資家の間では内部犯行説がまことしやかにささやかれている状態です。

タイムライン

異変が起こったのは11日午後のことでした。まず「FTXの金が消えている」とFTXアカウント所有者がTwitter上で騒ぎだします。

騒ぎを受けて、同日11:52PM、 FTX公式ページ管理者がTelegram上に不正侵入されたと発表。

「FTXがハックされた。ファンドはすべて消えた。

FTXアプリはマルウェア化してる。要削除」

「FTXのサイトには行かないこと。トロイの木馬がダウンロードされるおそれがある」

FTX法務最高責任者のRyne Miller氏も次の連続ツイートで混乱の収拾に努めました。

「ウォレットの不審な動きを現在調査中です。各取引所のFTX保有高の一本化に関連した動きと思われます。ほかの動きはまだわかっていません。詳細が入り次第シェアします」

「資金流出を食い止めるため、残るファンドはコールドストレージに移しました。これはオフラインのアカウントで、不正侵入から資産を守る仕様になっています」

で、いくら消えたの?

インターネット全般で暗号通貨の動きを追うElliptic社の発表によると、金曜夜、さまざまなトークンに形を変えて出金された金額は合計推定7億100万ドル(約982億円)です。うちFTX自身の手によるものは1億8600万ドル(約261億円)なので、残る5億1500万ドル約722億円)が盗難被害額。

同じくブロックチェーン解析を専門とするNansen社の見積もりでは、 金曜から土曜にかけてFTXから出ていった金額は6億5900万ドル(約923億円)とのこと。使用トークンはソラナ、イーサリアム、トロン、アバランチ、バイナンススマートチェーン(BSC)などでした。

消えたお金はどこへ?

流出資金は3つの異なるウォレットのアドレスに送られてから、少なくとも2億2000万ドル(約308億円)が分散型取引所にルーティングされていました。これは「盗んだ資産の強制差押えを回避するため窃盗犯がとる常套手段」だとElliptic社は話しています。

内部犯行説

ただ、盗難とはにわかに信じられないという人もいます。「米連邦破産法11条の適用を申請して事実上倒産してから24時間以内に盗難なんてタイミングよすぎない?」ということで、「ハッキングというのは真っ赤な嘘で、FTX社内の人間が顧客のお金に手をつけて持ち逃げしただけなんじゃ…」「裏で手を引いているのはCEOの一味」と憶測が憶測を呼んでいるのが今の状況です。サイトにもアプリにもアクセスできない状態で、会社の説明をうのみにできない気持ちはわかります。

負債7兆円。エンロン倒産の倍を軽く超えてる

FTXといえば、暗号通貨業界でもっとも将来性がある企業だと期待されていました。米政権とのパイプも太く、孫正義のビジョンファンドもだいぶ入れ込んでるみたいだし、大丈夫でしょ?と感じていた人も多いはず。トム・ブレイディ、ステフィン・カリー、大坂なおみ、大谷翔平らもPRのアンバサダーに代々的に起用されていたFTX。それが泥人形みたいに消えてしまうんだから、クリプト世界のもろさを感じずにはいられません。

米連邦破産法第11条の適用を申請したのはFTX日本法人を含む世界134のグループ会社で、負債額は全体で最大500億ドル約7兆108億円)。エンロンの230億ドル(約3兆2265億円)の倍を超える大型倒産です。

関連会社に動かした顧客資金もビリオン(10億円)単位で消える

サム・バンクマン・フリードCEOは系列会社のアラメダリサーチ(SBFの元彼女がCEOを務める投資会社でアグレッシブな運用で知られる)に100億ドル(約1兆4000億円)もの顧客資金を密かに移しました。そのうち10億ドル(約1400億円)から20億ドル(約2800億円)相当のお金がどこかに消えてることがわかると、バイナンスによる10億ドルの緊急融資&事業買収話が吹っ飛び、資金繰りに行き詰ってCEOを辞めたわけですが、消えたお金の使途については、ロイター社の調べでも明らかになっていません

ロイター社の取材に応じた2人のFTX元上級幹部によると、この使途不明金の穴は、倒産前の日曜にCEOが公開した記録で明らかになったものらしいのですが…、本当に謎。米GizmodoからもFTXにコメントを求めておきましたので、回答があればまたアップデートします。

ちなみにCEOはバハマの海を一望する高級リゾートのペントハウスに腹心の若者10人で共同生活していました。みな過去に交際歴があったりする同士で、SBFの元彼女とされるアラメダリサーチのキャロライン・エリソンCEOはスタンフォード大数学部を出た才媛です。上の動画では「投資ではあんまり数学の出番ないかな。小学生レベルの数学が多くて、あとはリスクをとることね。ストップリスク…なんて選ばない。大損もあるよ。たとえば…やっぱり細かい話はやめとくね(笑)」と話していますよ。

こういう規格外の発想ができる若者が世界の富を動かしていくのかも…。

Source: Bloomberg, YouTube

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