Googleの新たな Cookie 代替ソリューション、PAIRとは:プライバシーを保護しながらファーストパーティデータの照合が可能に?

DIGIDAY

デジタル広告の基盤であるサードパーティCookieがまもなく終焉を迎えることになり、広告キャンペーンを通じてオーディエンスへの訴求を図る業界各社は難題をつきつけられた。

GoogleのChrome部門は2020年1月、ChromeブラウザにおけるサードパーティCookieのサポート終了計画を発表し、AppleのSafariなどの他ウェブブラウザと同様の方向性を示した。計画は再三延期されたが、2024年にはサポートの完全終了が見込まれている。

それから2年あまりのあいだに、米DIGIDAYの記者のもとへ、Cookie代替ソリューションを開発したと主張する多くの会社から広報宣伝メールが次々と送られてきた。数あるソリューションのなかで目を引いたのが、10月11日にGoogleが発表したパブリッシャー・アドバタイザー・アイデンティティ・リコンシリエーション(Publisher Advertiser Identity Reconciliation:以下、PAIR)だ。以下、PAIRについて、できるだけわかりやすくまとめてご紹介しよう。

PAIRとは? その重要性は?

サードパーティCookieサポート廃止の発表以来、オンライン広告ターゲティングを継続したいマーケターにとって、ファーストパーティデータの重要性がにわかに高まってきた。しかし、最近の調査では、データの大規模な収集・運用の難しさが浮き彫りになっている

PAIRは、広く使われているデマンドサイドプラットフォーム(DSP)であるGoogleのディスプレイ&ビデオ360(Display & Video 360:以下、DV360)上で機能する最新の通信プロトコルで、広告主が自社保有のファーストパーティデータとパブリッシャー保有のファーストパーティデータを相互参照して得た情報を、広告キャンペーンのターゲティングに利用するためのソリューションだ。

Googleのグローバル広告部門バイスプレジデントを務めるダン・テイラー氏によると、PAIRのワークフローを利用すれば、広告主とパブリッシャーが「それぞれの公式サイトを訪れたオーディエンスのプライバシーを保護しながらファーストパーティデータを照合できる」という。

Googleとパートナー(当事者の広告主とパブリッシャー)間で共有される個人識別情報を保護するため、ファーストパーティデータの照合は集団レベルでおこなわれる。通信の内容が中間事業者(Googleも含む)に漏洩しないよう、データは暗号化される。

「広告主は購入意向の高いオーディエンスを対象に関連性の高い広告を表示できるようになる。このソリューションは、広告パフォーマンス向上とマーケティング目標達成の一助となる」と、テイラー氏はGoogle公式ブログ記事で述べている。

PAIR運用の実際は? 「データクリーンルーム」が必要になるのか?

この質問に対しては、「どちらともいえない」と答えるしかない。以下、PAIRの技術についてもう少し詳しく説明しよう。

PAIRは、ウェブサイト上の共通データポイントをもとにブランドと消費者のあいだの橋渡しをする。テイラー氏はあるシューズブランドの例を挙げているが、この企業は、自社のCRMデータベースからアップロードしたデータを、メールアドレスをキーにパブリッシャー側のデータと照合し、そこから得たオーディエンス情報を利用した広告を配信している。

当然ながら、大半のマーケターは「プールされたオーディエンスデータ」のターゲティング目的での利用に対して懸念を抱くだろう。その懸念をやわらげるため、Googleは、PAIRでは広告主とパブリッシャーの自社データ所有権と管理権の維持を保証するとしている。

ここで関わってくるのがデータクリーンルームだ。PAIRは、DV360を介してデータクリーンルームと連携する手段として使われる。

従来の手法との違いは?

以下、PAIRの仕組みの説明としてワークフロー図を示す。


Image credit: Google

テイラー氏によるとPAIRは「ファーストパーティデータを暗号化し、広告主とパブリッシャーを情報漏洩から守る」役割を果たすという。「広告主キー、パブリッシャーキー、広告主/パブリッシャー共有キーという3種類の暗号鍵を使い、データを3回暗号化する」。

また暗号化にあたっては、処理1回ごと、当事者同士の関係ごとに一意のキーを必要とするため、当事者もデータの逆暗号化やユーザーの特定ができない仕組みになっている。「データクリーンルームによる暗号化と照合のあと、広告主とパブリッシャー双方に対し、オーディエンスリストの一致率データが送信される」とテイラー氏はつけ加えた。

利害関係者は?

前述したとおり、PAIRはGoogleがカスタムツールとして開発したもので、DV360などのGoogleマーケティングプラットフォーム上で運用されるソリューションだ。それゆえ、最大手DSPとの取引を望むアドテク企業やサプライサイドプラットフォーム(SSP)事業者の多くに影響を与える可能性がある。ちなみに、PAIRのワークフローでは、個人識別情報はDV360やSSPと共有されない。

またGoogleは、初期テスト段階のデータクリーンルーム事業者として、ハブ(Habu)、インフォサム(InfoSum)、ライブランプ(LiveRamp)の3社を指名した。「今後、システム連携可能なデータクリーンルームが増えるにつれ、パートナー企業にとっての選択肢が広がっていく」とテイラー氏は述べ、Googleによるもうひとつのソリューション、アズデータハブ(Ads Data Hub)をPAIRと統合する計画も進行中だとつけ加えた。

[原文:Inside Google’s new PAIR workflow for advertisers, publishers

Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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