広告機能がない ビーリアル が抱える大きな課題:いかに長期的な収益化につなげるのか

DIGIDAY

業界のマーケターたちは写真共有アプリのビーリアル(BeReal)がオーディエンスを獲得したと確信している。

同アプリの背景にある重要なメッセージは「今この瞬間に、ただ存在する(Be present)」ことにある。アプリを使っていると、ユーザーたちはその瞬間に何をしているのかを共有することを促され、多くの人々がスマホを片手に自分たちの飾らない瞬間を、フィルターなしでシェアしている。しかし、広告主6社がDIGIDAYに語ったところによると、少なくとも現時点では、同プラットフォームが広告の機会を開くまで、マーケターはこのアプリに関しては様子見の状態のようだ。

世界的な不況が予測され、実験的な広告費は凍結されつつある。マーケターが興味を持つような独自の機能をビーリアルが素早く提供しない限りは、マーケターたちから継続して収益を得る可能性を失ってしまうかもしれない。

初期のYoutubeとの類似性

洗練されたコンテンツばかりが投稿されるその他多くのプラットフォームと比較して、このアプリはクリエイターや、より一般的にはZ世代からあらゆる種類の注目を集めている。同アプリが持つ嘘のなさ、リアルであるという野望に魅了されているようだ。

グリーム・フューチャーズ(Gleam Futures)のマネージング・パートナーであるメラニー・ケンティッシュ氏は、その「嘘のなさ」がユーザーに受け入れられていると述べた。また人々がとにかくコンテンツをアップロードし、誰がそれを見るかをあまり考えていなかった初期のYouTubeとの類似性を指摘した。「(初期のYouTubeにおけるクリエイターは)コンテンツ戦略を必要としなかった。インターネットが純粋に楽しかった時に、彼らはただ遊んでいただけだった」とケンティッシュ氏は述べた。

模索中のマーケターたち

フィルター無しの定期的な写真投稿という独自の方針を持つビーリアルは、有望なチャネルとしてマーケターの関心を集める可能性が高いと考えられた。リスクが限られている点も、それを後押しした。そこに投稿されるブランデットコンテンツはオーガニックで、有料で表示させる形式ではないのでコストは比較的低い。

同アプリでのマーケティングを、マーケターたちは試している最中だ。

「私たちのクライアントのひとつ、e.l.f.コスメティックス(e.l.f. Cosmetics)は、ビーリアルで広告展開をした最初のビューティブランドだ。TikTokがそうだったように、我々はビーリアルの動向をフォローし、観察し、教育している」とクリエイティブスタジオのムーバーズ・アンド・シェイカーズ(Movers+Shakers)の共同創業者兼CEOのエヴァン・ホロウィッツ氏は述べている。

長期的な収益化には懐疑的

しかし、広告主たちからの初期段階での関心は存在していても、ビジネスの長期的な収益化にはつながらないだろう。

パリに拠点を置くビーリアルは現在、外部の投資家グループの支援を受けている。テッククランチ(TechCrunch)によると、このアプリは2021年6月にアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)とアクセル(Accel)が共同で主導したシリーズAラウンドで3000万ドルを確保し、今年初めにシリーズBの資金調達ラウンドを6000万ドルで完了した。当時、同社の評価額は6億ユーロ(約5億9200万ドル)超だったと言われている。

無料でダウンロードでき、利用できる同アプリに広告もないとしたら、同社が調達した資金を使い尽くしたときにどうするのだろうか。ビーリアルはコメントの求めに応じていない。

最近の報道が示唆しているように、もし広告の導入が予定されているのであれば、彼らには広告ビジネスを立ち上げるチャンスが存在する期間は短いものだろう。あまりにも長く決断を渋ると、大手の競合他社が模倣しようとする可能性がある。実際、TikTokは先月、ビーリアルのクローンである「ティックトック・ナウ(TikTok Now)」を発表した。このプロダクトは「(ユーザーにとって)最も重要な人々と、本物の瞬間を共有するための日々の写真と動画体験」であるとTikTokは述べている。

その後、TikTokは広告代理店にこのプロダクトの売り込みを始めている。クリエイターおよびコンテンツマーケティング代理店のラウンド(Round)の主任であるサイモン・フレンド氏は、数週間前にすでにTikTokからサービス開始に関するメールを受け取ったという。

確信を持てないふたつの理由

今のところ、ビーリアルはソーシャルプラットフォームというよりはソーシャルネットワークであり、ここでは広告は歓迎されない。

「ブランドがインフルエンサーとパートナーシップを結ぶのに適した場所とはまだ言えない」とザ・ソーシャル・スタンダード(The Social Standard)の創設者兼CEOであるジェス・フィリップス氏は述べた。「今のところ、ブランドがそこに参入することを奨励するつもりはない」。

つまり、マーケターは、ふたつの理由から同アプリの使い方について確信を持てていない。ひとつはアプリのユーザーが、コンテンツの嘘のなさ、を好んでいること。この点は広告にとって有利ではない。ふたつ目の理由はさらに重要だ。利用可能な広告機能がないのだ。

「広告の可能性やアプリの明確な位置づけが行われていないため、そこにブランドを置くスペースはない」と、クリエイティブエージェンシーのブーメランFT(Boomerang FT)のタレント部門の責任者であるディーン・クーマン氏は説明した。しかし、彼は現在、同エージェンシーが将来的にソーシャルポートフォリオ内で使用する可能性についてクライアントに話しており、チームはその間、同アプリの進捗とオーディエンスを観察していると述べた。

迫る景気後退の影響

たとえビーリアルに広告が入ってきたとしても、すぐに成功するとは限らない。広告を展開するのに必要な資金と事業知識を別にしても、迫り来る世界的な不況という問題を考える必要がある。景気後退が発生するたびに、マーケターたちは厳しい予算のなかで、ROIが保証されたプラットフォームに戻る傾向がある。新しいことを実験する時間はほとんどない。

センサータワー消費者インテリジェンス(Sensor Tower Consumer Intelligence)によると、今年に入ってアプリストアとGoogle Playで同アプリが世界で5300万回以上ダウンロードされた一方で、2022年第3四半期にビーリアルの全世界のAndroidユーザーのうち、毎日アプリを開いているのはわずか9%だった。これを聞いて一時急激に人気になったアプリ、クラブハウス(Clubhouse)を思い出す人もいるだろう。

と言うと、評価としては手厳しすぎるかもしれない。ビジネス・オブ・アプリ(Business of Apps)は、モバイルアプリ分析会社アプトピア(Apptopia)のデータを引用し、ビーリアルの全世界のユーザー数が2021年の71万人から2022年8月までに1000万人に増加したと発表した。

成長に関係なく、ユーザーの楽しみと同社が抱える資金が尽きてしまう前に、ビーリアルはZ世代を満足させるためにも、長期的に収益化する最善の方法を見つける必要がある。

「(広告主は)ビーリアルを意識している」とウェアリズマ(Wearisma)のCEOであるジェニー・チャイ氏は述べた。「マーケターたちの頭のなかには存在していると思う。まだ黎明期ではあるが、注目すべきプラットフォームである」。

[原文:BeReal is challenged to keep marketers’ attention without robust advertising offerings

Krystal Scanlon(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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