「リトリートを日常に上手に取り込もう」。お前、何を言っているのか全然わからん、とご指摘を受けると思います。疲れた日々の英気を養うのはどうしたらよいのか、いろいろ考えていました。どこかに行くのは気分転換になりますが、人込み、金がかかる、疲れるなどネガティブなコメントも多いと思います。ならば日常生活にリゾートやリトリートのコンセプトを取り込めないかと思ったのです。
リゾートという言葉は巷でよく耳にします。厳密に言えば「しばしば通うところ=Re(再び)とフランス語のsortir(通う)」の組み合わせでフランス人のバケーションをイメージしたらよいのでしょう。フランス人はどうやってバカンスを過ごすのか、といえば避暑地や田舎でのんびりし、その時にその時の楽しみ方を時の流れに任せるような過ごし方です。ケセラセラ(Que Sera Sera=なるようになる)という感じでしょうか?
私がベトナムのハノイに行ったときは、観光も一生懸命せず、街中の喧騒とB級グルメの世界に接しながら午後はホテルの屋上のプールでのんびりしていました。プールの周りには白人しかいません。アジア人は一生懸命観光やショッピングに勤しんでいるのでしょう。「Youは何しに旅行へ?」と言われればのんびりしに来たのです。別にハノイの全てを知り尽くし、見つくし、食べつくす気など毛頭ない訳です。旅行とは非日常の世界を平時のライフと物理的に距離を取ることで気分転換を図ったりしてエネルギーの充電を図ることだろうと思います。あとは個人それぞれの定義で楽しめばよいわけで旅行はこうしなさい、という決まりは何一つありません。
リゾートを日程的に短くしたのが「リトリート(retreat, retreatment=リセット、リフレッシュ) と称されるもので疲れた自分を癒すというコンセプトです。週末とか数日間と言った短いもので例えば会社の会議などをさほど遠くないリゾート地で実施し、気分転換を図ることで何か新しいアイディアを生み出すという場合にリトリートするなどと言います。また週末別荘などはその典型的な手法の一つです。
一方、日本はリゾートと称するところがあまりに混んでいたり、「行くぞ!」と気が張って日常以上に疲れることになりやすい気もします。例えば「東京ディズニーリゾート」と銘打っていますが、私の定義では逆立ちしてもあれはリゾートではなく、気力と体力と財力を十分に確保して「えぃやー!」で行く覚悟が必要なのです。沖縄もハワイもあまりにも喧騒の渦でわざわざそこに行こうという感じにはならないのです。私がリゾートを感じたのはドミニカやメキシコの田舎でゴルフしたりプールサイドでビール飲みながら読書をするといった時間の無駄遣いが出来た時でしょうか?
最近、日本のBBQが進化していると言われていますが、聞くところによるとバンクーバーの日本人社会のBBQもとんでもなくハイレベルだそうで、料理店の料理並みのクオリティだ、という話も聞きました。一方、ローカルの方のBBQは概ね、ホットドックとかステーキで食べることが自体がメインにならないんです。集まってだべって好き勝手なことをしてのんびり過ごす、という感じでしょうか?
つまり、日本人は頑張り過ぎてしまうのです。だから真の意味でリラックスできない、そんな気がするのです。だったらもっと自分の時間をうまく活用しながら週末リトリートが出来ればと思うのです。
例えば私がバンクーバーにいる時は週末は自転車に乗り、ハイキングに行ったりしますが、それでもせいぜい3-4時間でそれで一日のエネルギーを全て消化するようなことはしません。山の空気を吸ったり、海沿いの道を自転車で疾走し、シャワーを浴びてビールを飲み、読書をし、適当に食べる、その間メールもスマホも原則スルーです。なので私に週末にメールやテキストをしても緊急もの以外は月曜まで返事をしません。
東京にいる時は荒川土手のサイクリングコースまで片道25分ですのでそこで自分をリセットすることが多いです。特にサイクリングの途中でいつもごろんとなる「自分のベンチ」が岩淵水門のあまり目立たないところにあるのです。そこが自分が小学校に上がる前からの思い出の場所で、荒川と墨田川の分岐点で広々としていて自然豊かな私の隠れ場所なのです。暖かい日はそこで小説を読んだりするととても気分転換になるのです。
リゾートもリトリートも別に何か新しいことをする必要はないのです。そして有名な観光地に行く必要もないのです。いつものお気に入りの喫茶店で一人、お気に入りのBGMを聞きながら雑誌をめくる、でもいいし、東京ならば都電荒川線沿いを街探訪して素敵なランチ処を探すといったのもありでしょう。大事なのは自分の逃げ場、隠れ場なので行きたいときにいつでも行ける気軽さが必要だと思います。そういう自分だけの場所を作れば非日常や充電を通じた気分転換は案外、簡単にできたりするのではないかと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年11月6日の記事より転載させていただきました。