日本でも解雇は「原則自由」である

アゴラ 言論プラットフォーム

ツイッター社の突然の解雇が話題を呼んでいるが、今回のようなケースは海外では珍しくない。事前に通告すると社員が企業秘密を持ち出すおそれがあるので、予告なしに解雇するのが普通だ。SNSへのアクセスも止められ、自分のオフィスに戻ることも禁止され、机に入っている私物は段ボール箱に入れて自宅に送ってくる。

日本の法律でも、解雇は原則自由である。日本の解雇規制は、OECDの基準でも平均よりややゆるやかで、民法627条では「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる」と解雇自由の原則を定めている。これは「契約自由の原則」という民法の大原則である。

労働基準法では30日前までに予告するよう定め、組合活動などによる不当解雇を禁止しているだけだが、労働契約法16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と定めている。これは過去の判例を立法化したものだ。

さらに判例では、解雇の具体的な要件が決まっている。特に1979年の東京高裁判決の整理解雇の3要件が法律と同等の拘束力をもち、会社がつぶれるまで解雇できない。

  1. 事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむを得ない
  2. 従業員を他の事業部門に充当する余地がない
  3. 具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づく

雇用流動化の障害は「解雇規制」ではない

しかし現行法でも、従業員が同意すれば自己都合退職だから、規制の対象にならない。「希望退職」はこれに当たる。外資系企業では、退職金を割り増しして同意を得る金銭解雇が普通である。

人事部が従業員と話し合って「訴訟を起こさない」という同意書を書かせれば、日本でも金銭解雇できる。中小企業では、日常的に解雇は行われている。大企業の経営者が「評判」を恐れて解雇しないだけである。

要するに、雇用を流動化する上で「解雇規制」は大した問題ではないのだ。終身雇用にせよ年功序列にせよ、法律で決まっているわけではなく、正社員という暗黙の規範で決まっているだけだ。これにも法的根拠はなく、民法627条で定めるように、無期雇用の労働者の解雇は自由である。

ただ判例は厳格に労働者を保護しているので、法律で金銭解雇を認め、整理解雇などの判例を上書きする必要がある(労働契約法16条は廃止すべきだ)。もっと重要なのは昔ながらの「企業は一家」という労働倫理を変えることである。

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