公共交通機関のジャンクフード広告を規制したおかげで約10万件の肥満が防止され約370億円もの費用削減につながったという報告

GIGAZINE
2022年11月03日 22時00分



近年はジャンクフードが健康にもたらす悪影響が問題視されており、スペイン政府は子ども向けのチョコレートやアイスクリームなどの広告を禁止すると発表したほか、ロンドン地下鉄などを運営するロンドン交通局は、2019年2月から交通機関におけるジャンクフードの広告を規制しました。ロンドン交通局のジャンクフード広告規制について調査したところ、約10万件の肥満防止や2億1800万ポンド(約370億円)の支出削減といった効果があったことが判明しました。

The health, cost and equity impacts of restrictions on the advertisement of high fat, salt and sugar products across the transport for London network: a health economic modelling study | International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity | Full Text
https://doi.org/10.1186/s12966-022-01331-y

Junk food advertising restrictions prevent almost 100,000 obesity cases and is expected to save the NHS £200m | LSHTM
https://www.lshtm.ac.uk/newsevents/news/2022/junk-food-advertising-restrictions-prevent-almost-100000-obesity-cases-and

肥満は2型糖尿病や心血管疾患、慢性腎臓病、がんなどさまざまな病気のリスクを増加させることが知られており、肥満の防止が世界各国で課題となっています。イングランドでは男性の27%と女性の29%が肥満であると推定されているとのことで、ロンドン交通局は砂糖や脂肪のカロリー、塩分などが多い食品の広告を制限する施策を2019年から導入しました。

ロンドン交通局のジャンクフード広告規制は小児肥満に対処することが目的でしたが、この介入によって成人の行動にも変化がもたらされた可能性があったとのこと。そこで、シェフィールド大学やロンドン大学衛生熱帯医学大学院の研究チームは、広告規制がもたらした影響について研究を行いました。


研究チームはロンドンおよびイングランド北部の約2000世帯世帯を対象に、購入して家に持ち帰ったすべての飲食物について記録した調査結果を基にして、ロンドン交通局の施策前と施策後の長期的な傾向を調べました。

調査の結果、ロンドン交通局の施策が始まった後、各世帯が購入する食品の総カロリーは1週間あたり1000kcal減少したことが判明。このカロリー削減の影響をモデルに当てはめて分析したところ、ジャンクフード広告規制によって肥満の件数が9万4867件減少し、糖尿病の症例は2857件、心血管疾患の症例も1915件減少したと推定されました。

さらに、ジャンクフード広告規制は人々の健康状態にメリットをもたらしただけではありません。イギリスの国民保健サービス(NHS)が将来的に負担するコストを試算したところ、症例数の減少によってNHSの支出額が2億1800万ポンドも削減されると研究チームは報告しています。


論文の筆頭著者であるシェフィールド大学のクロエ・トーマス氏は、広告は人々が購入するものの選択に強く影響していると指摘。「今回の研究は、人々がより健康的な生活を送ることをコストをかけずに助ける上で、広告規制がいかに重要なツールであるかを示しました」「肥満および肥満によって悪化する病気の予防におけるポリシーの大きな利点を実証することで、広告規制が全国規模で展開され、人々の命を救うと共にNHSの予算を節約できることを願っています」とコメントしています。

また、ロンドンのサディク・カーン市長は、広告は健康的でない食品の消費を促進・奨励するものであり、子どもの肥満を防ぐためにも広告規制は重要だとする見解を示しています。「私はロンドン市民の健康を改善し、医療サービスに対する過度な負担を一部軽減することで、すべての人にとってよりよいロンドンを構築するために、このポリシーを継続することを決意しています」と述べました。

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