スマートフォンの普及により、食事や旅行先の写真を撮って保存したりネットにアップロードしたりするのが当たり前になりましたが、あまり大量のデータを保管しているとすぐにストレージが一杯になってしまうので、たまに整理する必要があります。しかし、中にはデータをなくすことが怖くてなかなか削除できず、病的なほど大量のデジタルコンテンツをため込んでしまうという人も。そんな「デジタル・ホーディング(デジタルため込み症)」についての調査結果を、情報技術の専門家が解説しました。
Modern-day hoarding: A model for understanding and measuring digital hoarding – ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.im.2022.103700
With seemingly endless data storage at our fingertips, ‘digital hoarding’ could be an increasing problem
https://theconversation.com/with-seemingly-endless-data-storage-at-our-fingertips-digital-hoarding-could-be-an-increasing-problem-190356
近年、ごみや不要な家具などをため込んでしまうごみ屋敷やペットを無秩序に殖やして管理できなくなってしまう多頭飼育崩壊(アニマル・ホーディング)などがよく社会問題としてニュースになりますが、これらの問題の原因には精神医学の分野で「ため込み症」や「強迫的ホーディング」と呼ばれている精神疾患があると言われています。
デジタル・ホーディングはため込み症のデジタル版のことで、必要でもないデジタルコンテンツを大量に取得してためこんでしまう症状を指します。デジタル・ホーディングでは特に、物理的な物品とは違ってデータは直接目に見えず、場所をとらないことが問題をより複雑にしています。
データの保存コストが限りなくゼロに近くなった弊害として急速に問題化しつつあるこのデジタル・ホーディングについて、オーストラリア・サザンクロス大学の情報システム学教授であるDarshana Sedera氏らの研究チームは、846人を対象者としたアンケートを実施しました。
その結果、デジタル・ホーディングをする人はそうでない人より不安感のレベルが高いことがわかりました。具体的には、うつ病・不安症・ストレスに関する尺度で測定された不安レベルの37%がデジタル・ホーディングで説明がつくものだったとのこと。調査で見つかった事例の中には、ストレージデバイスに保存している写真やソーシャルメディアにアップロードしたものも含めると合計で40TBものデジタルコンテンツをため込んでいる人もいました。
とはいえ、映像コンテンツを作成しているクリエイターや業務データの管理を仕事にしている人など、大量のデータを保有しているからといって病的とは限らないケースもあります。
そこでSedera氏は、デジタル・ホーディングの定義として「デジタルコンテンツを恒常的に取得している」「データ破棄が困難」「データの散乱」の3つの基準を設定しました。
1つ目の「恒常的な取得」とは、データの価値や目的を考えずに常にデジタルコンテンツを集めていることを指します。現代では電子的なコミュニケーションが当たり前なので、デジタル・ホーディングの人でなくても電子メールや画像、動画などを「念のためとっておこう」と保管しがちです。しかし、保管したデータを捨てることに大きな抵抗を感じてなかなか削除できない場合は2つ目の基準である「データ破棄が困難」に該当してしまう可能性があります。
また、貴重な資料や旅行先で撮った記念写真など、簡単には手放せない大切なデータはファイル名や保存先などできちんと整理されているものですが、デジタル・ホーディングによって手当たり次第に収集されたデータは、乱雑に保管されっぱなしになっています。これが、3つ目の「データの散乱」です。
by Wikissed
インターネットが普及した現代社会の生活は、デジタルコンテンツとは切っても切り離せません。しかし、デジタルコンテンツを抱え込みすぎてデジタル・ホーディングになってしまうと、精神衛生に深刻な影響が出る可能性があります。
そのため、Sedera氏はついデータをため込みがちな人に以下の4つのアドバイスをしました。
・年に1回はデジタルコンテンツの大掃除をする習慣をつけてデータを断捨離できるようにする。
・不要なデジタルコンテンツは減らすよう心がける。
・写真やメディアファイル、電子メールなどを管理する自分なりのやり方を見つける。
・漫然と参加しているソーシャルアプリのグループなど、SNSの重要性を見直して自分に必要なものだけを残す。
これらのデジタル・ホーディング対策に困難さを感じたり、多すぎるデータに息苦しさを感じたりした場合は、メンタルヘルスの専門家や医師に相談するのを検討してみて欲しいと、Sedera氏は述べました。
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