娯楽用大麻が合法化された地域では交通事故死者数が平均10%増加するという研究結果

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近年は娯楽用大麻の解禁が進む国や地域が増えており、アメリカでは記事作成時点で22の州と3つの海外領土、そしてワシントンD.C.で娯楽用大麻が合法化されています。しかし、大麻の服用は認知や知覚の変化をもたらすことが知られています。新たに、娯楽用大麻の合法化と交通事故死の関連について調べた研究で、「娯楽用大麻が合法化された州では交通事故死者数が平均10%増加する」という結果が示されました。

The impact of recreational cannabis markets on motor vehicle accident, suicide, and opioid overdose fatalities – ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2023.115680


Legal cannabis markets linked to increased motor vehicle deaths | School of Public Health | University of Illinois Chicago
https://publichealth.uic.edu/news-stories/legal-cannabis-markets-linked-to-increased-motor-vehicle-deaths/

大麻は他の規制薬物と比べると依存性や身体への害が小さいともいわれていますが、幻覚作用を有しており人間の認知に大きな影響を与えます。そのため、大麻を服用した状態で車を運転することが、交通事故のリスクを高めるのではないかという懸念の声も上がっています。

イリノイ大学シカゴ校公衆衛生学部の研究者であるSamantha Marinello博士は、「これまでの研究で、大麻は運転能力を低下させることが分かっています。また、大麻常用者の間ではハイになった状態での運転がかなり一般的であることも判明しています」と述べています。そこでMarinello氏らの研究チームは、娯楽用大麻の合法化と自動車事故や自殺、オピオイド(鎮静剤)の過剰摂取が関連しているかどうかを分析しました。


研究チームは、すでに娯楽用大麻が合法化されているアラスカ州・カリフォルニア州・コロラド州・マサチューセッツ州・ネバダ州・オレゴン州・ワシントン州で、2009年~2019年に提出された死亡診断書を収集しました。

さらに、娯楽用大麻が合法化された州の比較対象として、娯楽用大麻市場はないものの包括的な医療用大麻プログラムがあり、対象となった州で娯楽用大麻が合法化される以前の死亡率で同様の傾向がみられた州を選出。対象となった7州で娯楽用大麻が合法化される前後で、自動車事故・自殺・オピオイドの過剰摂取による死亡率がどれほど変化したのかを分析しました。

分析の結果、娯楽用大麻が合法化された州ではコロラド州で16%、オレゴン州で22%、アラスカ州で20%、カリフォルニア州で14%も交通事故死者数が増加していることがわかりました。また、研究チームは娯楽用大麻が合法化されたことで交通事故死者数が7州で平均10%増加したと報告しています。

研究チームは、「この結果は娯楽用大麻市場の意図しない結果として、大麻中毒での運転と交通事故死が増加する可能性があることを示しています。そのため、大麻の影響下での運転を減らすことに焦点を当てた政策の、潜在的な必要性を示唆しています」と述べました。


なお、娯楽用大麻の合法化が自殺率に影響を与えたという証拠は発見されず、オピオイドの過剰摂取については平均で11%減少したとのこと。Marinello氏は、「本研究は政策立案者が娯楽用大麻市場を合法化する際に考慮すべき、潜在的な利益と害の両方に関する証拠を提供するものです」と述べました。

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