金沢工業大学は、株式会社ヨシカワ、NTTコミュニケーションズ株式会社と共同で実施した、5G通信を活用した重機の遠隔操縦実験の結果を公開した。5Gにより低遅延での通信が可能なことで、重機を目視できない遠隔地においても円滑な操作ができると実証されたとしている。
3者は、2020年8月より5Gを活用した重機の遠隔操作に関する共同研究を実施している。2019年に金沢工業大学が白山麓キャンパスで開催した「KIT地方創生イノベーションシンポジウム」にヨシカワが参加し、遠隔操縦している無人の重機どうしの衝突防止や、5Gを活用した遠隔操作について相談したことが、きっかけになったという。
今回の実験で使用したシステムは、既存の遠隔操縦機能付き重機に、自由視点の俯瞰映像システム、映像伝送システムを組み合わせ、直接目視が難しい遠隔地からでも重機の周囲の安全を確認できる機能を付加したもの。既存の重機を生かして比較的安価に、直接目視できない遠隔地からの遠隔操縦を実現したとしている。
自由視点の俯瞰映像システムには、沖電気工業株式会社のリアルタイムリモートモニタリングシステム「フライングビュー」を実装。映像伝送システムは株式会社ソリトンシステムズ社製の映像コミュニケーションシステム「Zao-S」、5G回線は白山麓キャンパスに設置された株式会社NTTドコモのものを使用した。重機オペレータは、重機を自由視点から見下ろした全方位360度の映像、前方映像、後方映像の3つの映像を確認しつつ、遠隔地から操作できる。
実証実験は、9月12日~14日に、金沢工業大学白山麓キャンパスのコテージ前の実験フィールドで実施。重機にカメラを含むデバイスを搭載し、キャンパス内の実証実験用施設「イノベーションハブ」から遠隔操作を行った。また、通信にWi-Fiを使用した実験も行い、双方の結果を比較した。
実験の結果、重機の俯瞰映像をNTTドコモの5G回線により低遅延で伝送することにより、重機をまったく目視できない遠隔地においても、円滑に操縦できることが実証されたとしている。5Gを使った通信に関してはWi-Fi通信による操作と比べても遜色がなく、支障のないレベルでの遠隔操作が可能。また、目視を伴う遠隔操作と比べ、自由視点の俯瞰映像システムのおかげで重機の周囲の状況が把握しやすいというメリットがあることも分かったとしている。
使用した回線の通信速度は、5Gが上り平均77Mbps、下り平均759Mbps。Wi-Fiは上り下りともおよそ150Mbps程度。なお、映像の伝送にはおよそ20Mbps程度の通信速度が出せれば問題なく、低遅延で操作の反応が速いことが重要だという。
今後は、人が立ち入れない危険な現場や災害現場などでの活用が期待されるとしている。また、遠隔操作の実現により、重機オペレータの安全性の向上、作業効率の向上などが予想でき、生産性向上と働き方改革にも資するとしている。