パナソニックエレクトリックワークス社（EW社）は2021年6月、より演色性が高く、人やモノをより明るく鮮やかに照らせる「映光色」を実現したLED照明をビルやテナントなど業務用向けに発売。その映光色のLED照明をいち早く採用した事例として福田学園の見学会を開催した。
大阪市北区にある福田学園は大阪保健医療大学や大阪リハビリテーション専門学校などをグループに持つ学校法人。2017年の1号館LED化に続いて、2021年に2号館をLED化した
低コストで勉強にも最適な高演色の明かりを実現
「映光色」とは「明るさと色の再現性」と、より「手軽な導入コスト」を両立したパナソニックの照明技術のこと。一体型LEDベースライト「iDシリーズ」「スクエアシリーズ」において映光色タイプを用意している。
一般タイプと高演色タイプの間を埋める「映光色」
一般的なオフィスや工場などで採用されるLED照明は主に明るさとコストが重視される。それに対して病院や博物館、美術館などは、人やモノの見え方を重視し、高演色のLED照明が採用される。店舗や学校などでも、高演色の照明が求められていたが、コスト面で導入することが難しく一般タイプを採用することが多かった。「映光色」は一般タイプと高演色タイプの間に位置する新しい製品だ。
映光色はコロナ禍で来客数が減り、インターネット上での買い物の割合が増加する中で、より手触り感のある、魅力的な店舗、空間づくりをしたいというニーズに答える形で開発された。
パナソニックEW社ライティング事業部の西岡英士氏は映光色について「コンセプトはモノや人を美しく、鮮やかに映える明るいベースライト。特徴は3つあり、1つは高い演色性を実現していること。2つ目は明るく省エネでしかもお手頃価格。3つ目はベースライトだけでなく、四角いタイプなどもラインアップしていること」だと語る。
パナソニックエレクトリックワークス社 ライティング事業部マーケティングセンター 非住宅推進部西日本営業推進課の西岡英士氏
照明機器の光の人やモノの見え方を評価する指針となるのがRa（演色評価数）で、100に近いほどより自然な色で見えるということ。一体型LEDベースライトであるiDシリーズの場合、一般タイプがRa85なのに対して、映光色タイプのベースライトはRa93を実現しており、より高い演色性で、人やモノをより明るく鮮やかに映せるというわけだ。
「映光色」では演色性が高く、より明るく鮮やかに空間を照らせる。さらに「JIS Z 8726」に掲載される特殊演色評価数R15においても85と肌の色や顔色をより健康的に再現できるという
実際に比較用の機器で一般タイプ（左）と映光色（右）の違いを確かめた。毛玉の色の濃さに違いがはっきりと出ている
1号館のLED化で省エネ効果を実感
福田学園は2017年に1号館のLED化を実施。省エネ効果を体感できたとして、2021年の2号館LED化もパナソニックに依頼することになった。もともと、2号館は大学と夜間の専門学校が共同で使っているため、朝8時から夜22時まで開校しており、電気代を始めとした経費の削減が急務となっていたそうだ。
その中で「他の学校と差別化を図るためにも、学校環境にあったLED照明を提案してほしい」と言われたことで、パナソニックEW社 マーケティング本部の佐藤拓氏は、発売したばかりだった演色性の高い映光色のLED照明を提案したという。
パナソニック エレクトリックワークス社 マーケティング本部近畿電材営業部電材営業開発部の佐藤拓氏
LED化によって2号館は大幅なコストダウンを実現している
そうして、2号館のLED化において、約1400台のLED照明のうち、教室や職員室などに使うLEDとして約800台の映光色タイプが採用された。このLED化により、消費電力は約53.2％削減。また、ランニングコストは61.2％削減され、CO2の排出量も85トンの削減を実現している。
映光色のベースライトを採用した教室。一般タイプのLEDを採用した廊下と比べると明るさが異なっていた
映光色の採用は、多くの効果があったと福田学園 学園本部の溝畑允康氏は語る。「特に夜間の学生から建物自体が新しくなったように感じるという声がある。また、コロナ対策でパーテーションを机に置くのですが、従来の照明では影ができるのに対して、映光色だと明るいので授業がやりやすいと聞いている」
学校法人福田学園 学園本部法人室課長の溝畑允康氏
LED照明の違いを知らなかった生徒さんも、「2号館は明るくプリントなどが見やすいと思っていた」そう
学生ラウンジでは特別に4000Kにカスタマイズした映光色のベースライトを採用する
福田学園は今回の2号館のLED化に関して約2600万円の工事費用がかかったそうだが、省エネ化により、約5年で回収できる見込みだという。
2025年度に18万台の導入を目指す
パナソニックEW社では、この福田学園での導入事例をベースとして、映光色のLED照明の営業先を近畿地方の学校施設をメインに据えるという。販売目標は2025年度に約18万台。近畿地方ではまだ学校のLED化が進んでおらず、近畿2府6県の約6200校の1割に、1校あたり300台導入する計算だ。そして、近畿地方での導入事例をモデルケースに日本全国に広げて行く。
一般タイプと高演色タイプのベースライトの価格差は一つあたり約4000円と大きく、なかなか高演色を導入してもらうのは難しかった。しかし、映光色タイプなら価格差を半分に抑えながら明るく映し出すことができる
2025年度で18万台の導入を目標にすすめて行く
この取り組みにより、近畿地方の学校施設を皮切りにオフィスや病院、商業施設の照明は、今後順次、映光色に切り替わって行くことになりそうだ。
