DIGIDAY的「 TV業界 」 用語集 2022年版:FASTとAVODを使い分けたいあなたに

DIGIDAY

米DIGIDAYは1年前、TVやストリーミング、デジタル動画の業界人が使うキーワード、そしてしばしば間違って使われるキーワードの用語集を公開した。

あれから1年、これらキーワードの多くはいまも使われている。そして残念なことに、間違って使われてもいる。そこで米DIGIDAYは、業界の未来についての会話で起きる混乱を防ぐべく、新語をいくつか追加して、この用語集の2022年版を発表することにした。

■CTV

何の略?:コネクテッドTV(Connected TV)

どんな意味?:ネットに接続されたTVスクリーンのこと。独自のOSが組み込まれたスマートTVのこともあれば、Apple TVボックスやRoku(ロク)ストリーミングスティック、Chromecast(クロームキャスト)ドングルなどのネット接続デバイスにつながれた、「スマートではない」普通のTVのこともある。ポイントは、CTVはTVをNetflixやディズニープラス(Disney+)などのストリーミングサービスを利用するためのデバイスとして扱っている点だ。CTV=ストリーミングではない。

使い方:ネット接続デバイスとしてのTVスクリーンに対して使う。または、ネットに接続されたTVスクリーンを通してアクセスできるオーディエンスや番組、広告に対して使う。いうなれば、TV業界にとってのCTVとモバイル業界にとってのスマートフォンは似たようなものだ。

例文:『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』なんだけど、パソコンじゃ見る気にならないから、HBO MaxのCTVアプリでストリーミングするよ。

■OTT

何の略?:オーバー・ザ・トップ(Over the top)

どんな意味?:ケーブルボックスや衛星アンテナの枠外で(つまり、それらを「飛び越えて」)テレビ番組を配信する手法のこと。少なくとも、これが元々の意味だった。この頭字語は、ウェブサイトなどのデジタルプロパティでも番組を視聴できるようにしているTVネットワークを説明するために導入された。やがてその輪にHulu(フールー)も加わった。Huluはパイオニア的存在のストリーミングサービスのひとつで、おそらくはHuluが大きなきっかけとなって、OTTとストリーミングが同義となり、CTVと融合するようになった。

使い方:使わないほうがいい。繰り返すが、OTTという言葉は使わないほうがいい。かつては問題なかったが、そんな時代は過ぎ去った。先ほども述べたように、いまではOTTとストリーミングは同義になった。だったら「OTT」ではなく「ストリーミング」を使おう。そのほうが、家族や友人にも話の内容を理解してもらいやすいだろう。

例文:OTTって言っていた頃のことを覚えてる? いまは皆がストリーミングと言うようになって、本当によかった。

■FAST

何の略?:無料の広告付きストリーミングTV(Free Ad-supported Streaming Television)

どんな意味?:決められた番組スケジュールに基づいて24時間放送のチャンネルを運営しているという点でリニアTVと類似する。無料で視聴できるが、プログラムの途中で広告が入るストリーミングプロパティのこと。

使い方:DVR以前のブロードキャストTVを模倣する、広告付きストリーミング市場のサブセクションに対して使う。FASTという言葉は、そのサービス自体に使ってもいいし、それが抱える個々の24時間チャンネルに使ってもいい。

例文:何を見ればいいのか。とりあえずFASTの料理チャンネルのどれかにして、食べ始めよう。

■AVOD

何の略?:広告付きビデオ・オン・デマンド(Ad-supported Video On Demand)

どんな意味?:テレビ番組や映画などの、いつでも見られる動画番組のこと。無料のものと有料のものがあり、プログラムの前・中・後に広告が流れる。AVODの売りは、視聴者が特定の時刻にチャンネルを合わせるのではなく、番組を「オンデマンド」で視聴できる点にある。

使い方:使う際には注意が必要だ。FASTサービスが台頭する前は、AVODは広告付きストリーミングとほぼ同義だった。その後、FASTサービスが登場し、広告付きストリーミング市場を二分した。ちょうど、従来型TVがリニアチャンネルとオンデマンドに二分されたのと同じように。

しかし、AVODとFASTの境界線はあいまいだ。

バイアコムCBS(ViacomCBS)のプルートTV(Pluto TV)をはじめとするFASTの多くは、オンデマンドで視聴できる広告付き番組をサービスに加えている。一方、AmazonのIMDb TVや、Rokuのザ・ロク・チャンネル(The Roku Channel)といった、元々はAVODだったサービスは、オンデマンド番組ライブラリーと並んで、FASTチャンネルもラインナップに加えている。要するに、AVODという言葉を使ってもいいのは、広告付きストリーミング市場のサブセクションの話をしているときに、FASTと区別する必要がある場合だけということだ。両者を区別する必要がない場合は、総称の「広告付きストリーミング」を使おう。

例文:AVODのインベントリー(在庫)を買うことしか頭にないよ。AVODの視聴者のほうが、ちゃんと広告を見てくれる確率が高いことがわかっているから。

■TV

何の略?:テレビジョン(Television)

どんな意味?:(1)視聴者の自宅にある大型スクリーンのこと。スポーツの生中継やホームコメディ、映画、ネコの動画など、さまざまな動画番組がこのスクリーンで視聴される。(2)スクリーン(自宅の大型スクリーン、ただしこれに限定されない)で視聴される動画番組のこと。

使い方:従来型TVとストリーミングをまとめて表現したいときに使う。プログラムがTVのスクリーンで視聴できる場合、それはTVだ。TVでプログラムや広告を見る人は、TV視聴者であり、TVの画面に流れる広告は、TV広告ということになる。

TikTok(ティックトック)からCTVアプリが登場し、ショートフォーム動画もTVとみなせるようになったが、TVという言葉を従来の定義の枠外に広げるには、まだ時間がかかる見込みだ。しかし、2021年のアップフロント交渉が何かの暗示であるとするなら、その意味の広がりは勢いを増しつつある。特に、YouTubeなどのデジタル動画プラットフォームが、NetflixとTV視聴時間で張り合っているという現状が、これを如実に物語っている。

例文:さて、TVでも見るか。

■通貨(カレンシー)

どんな意味?:広告バイヤーとセラーによる取引の基盤として使われる、測定基準のこと。これまでは、通貨といえば、何人がTVでブランドの広告を見たのかを測定する、ニールセン(Nielsen)のGRP(Gross Rating Point)のことだったが、他のタイプの測定に使ってもかまわない。たとえば、クリック単価ベースで検索広告を販売するGoogleなら、クリックが検索広告の通貨になる。

使い方:ある測定が広告主とメディア企業またはテックプラットフォームのあいだでやりとりされる金額を決定する指標である場合にのみ、使用すること。

例文:何人が広告を見たかなんて、どうでもいい。広告を見たうちの何人が、この商品を買ってくれたか? その方が重要だと思う。だから、このキャンペーンの通貨には、セールスリフトを使用しよう。

■ショートフォーム動画

どんな意味?:TikTokやインスタグラム・リール(Instagram Reels)、YouTubeショート(YouTube Shorts)などの縦型動画プラットフォームで配信される、10分以下の動画のこと。ほとんどの場合は。正確さを欠く話に聞こえても無理はない。ここで、この短くまとめられた動画のカテゴリーについて、少し説明しておこう。

何年ものあいだ、「ショートフォーム」という言葉は30分枠のTV番組よりも短い動画に対して使われており、通常、ショートフォームといえば、10分以下のYouTube動画のことだった。その後、クリエイターたちが10~20分のYouTube動画をつくりはじめると、「ミッドフォーム動画」という言葉が生まれた。さらにその後、Snapchat(スナップチャット)が10分以下の縦型動画の市場を生み出すが、この市場も、TikTokが60秒以下のバーティカル動画をローンチすると、一気に縮小した。

事がそう簡単に運ぶはずもなく、動画の尺をTikTokが10分に、リールが15分にのばしたことで、ショートフォーム動画の定義はさらにあいまいになっている。「どうでもいい。どれも同じ動画じゃないか」と言って、さまざまな動画フォーマットを描写する略語を犠牲にするのではなく、10分という昔からの目印を使い続けながら、フィルターとして縦型フォーマットを取り入れようではないか。

使い方:説明を添えて使うこと。まだ理解できないという人のために言っておくと、「ショートフォーム」という言葉は相対的なものだ。TVやストリーミングの番組プロデューサーなら、YouTube動画なら何でもショートフォームと思い込んでいるかもしれない。反対に、TikTokクリエイターなら、ロングフォームと思い込んでいるかもしれない。なので、「ショートフォーム動画」という言葉を単独で使うのではなく、同時に例をあげて説明するといいだろう。

例文:TV番組やYouTube動画からクリップを切り出し、それを縦型フォーマットに直して、TikTokに投稿する。これが現在の我が社のショートフォーム動画戦略だ。

■ロングフォーム動画

どんな意味?:YouTubeやFacebook、ストリーミングサービスなどの横型動画プラットフォームで配信される、1分以上の動画のこと。基本的には、ショートフォームに分類できない動画なら、何でもこれに該当する。

先ほども述べたように、ロングフォーム動画は何年ものあいだ、TV番組と同等かそれ以上の長さの動画のことを暗に意味していた。その後、Vine(バイン)やSnapchat、TikTokなどのプラットフォームがその対極を目指すようになると、10分の動画はやや長く感じられるようになった。一部のTikTokクリエイターは、尺が60秒を超える動画はすべてロングフォームとみなしてさえいる。また、この傾向はTikTokのクローンであるYouTubeショートにも見られる。YouTubeショートの尺の上限は60秒であり、これはつまり、ショートフォームと非ショートフォーム(ここではとりあえず「ロングフォーム」と呼んでおこう)の境目を、YouTubeは60秒とみなしているということを暗に意味している。

使い方:説明を添えて使うこと。両者は別物であるが、これについてはショートフォーム動画も同じである。

例文:私のロングフォーム動画戦略は、まず自分でつくったTikTok動画をまとめて1本の動画にする。次にそれを拡大して、画面いっぱいに横に広げる。そうすれば、TVやYouTubeの番組っぽく見えるから。

[原文:Future of TV Briefing: The 2022 glossary

Tim Peterson(翻訳:ガリレオ、編集:黒田千聖)

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