P&G 、メディアプランニングとバイイングの内製化で約84億円の経費を削減

DIGIDAY

プロクター・アンド・ギャンブル(Procter&Gamble、以下P&G)のアンドレ・シュルテンCFOによると、同社が米国で展開するファブリックケアブランドは、メディアプランニングとメディアバイイングの機能を内製化することにより、1年間でざっと6500万ドル(約84億4792万円)の広告費を削減した。

「ファブリックケアについていえること、それはどんな人間も洗濯をするということだ」。1月19日にウェブキャストでおこなわれた第2四半期の決算説明会でシュルテン氏はそう語った。

「つまり、リーチすべきターゲットの幅が著しく広い。米国のファブリックケア部門はメディアのプランニングとバイイングをインハウスでおこない、P&G独自のアルゴリズムを開発して、テレビ番組中の広告配信を改善することにした。その結果、フリクエンシーを増やす一方で、1年で6500万ドル(約84億4792万円)のコスト削減を達成した」。

インハウスの能力強化に今年も投資

P&Gにとって、こうした社内機能の強化は複数年にわたるプロセスだ。これ以前にも電通カラットが担当していた一部のブランドのメディアプランニングとバイイングを社内のチームに移管した経緯がある。

さきの決算説明会でシュルテン氏が語ったところによると、同社は今年も引き続きインハウスの能力強化に注力するようだ。なお、米DIGIDAYがおこなった補足質問に対して、P&Gは回答を差し控えた。

シュルテン氏はさらにこう述べる。「米国内では多くのカテゴリーがこうした相乗効果を促す独自のアプローチを模索している。米国の外でも同様だ。我々P&Gは独自機能の整備をすでに進めているが、こうした内製化の動きは全世界で進行している。長期的な生産性向上を担保する重要な能力として、独自機能の開発には今後も投資を継続する考えだ」。

広告予算は削減せず

P&Gは通年の売上予測を上方修正するかたわら、日用品価格の高騰で販売数量が落ち込み、利益を圧迫していると警告する。それでも、同社は広告予算の削減を表明していない。それどころか、今後も自社のブランドを「全面的に支援する」と述べている。

P&Gは広告支出にまつわる数字を開示しておらず、よって自社のブランドを引き続き「全面的に支援する」というのが具体的に何を意味するのかは不明だ。しかしシュルテン氏によると、「直近の四半期に、広告費が前四半期比で1億4000万ドル(約181億9426万円)増加した」という。追加的な情報提供はなく、増加分がどこに、あるいはどのように使われたかは明らかでない。

マーケティングの専門家集団でブランドコンサルティング業を営むメタフォース(Metaforce)の共同設立者であるアレン・アダムソン氏は、P&Gが進めるインハウス化についてこう語る。

「消費者とブランドのあいだで機械的なインタラクションが増えている。さらにメディア業界では、デジタルメディアに比べて従来メディアの重要性が低下している。メディアバイイングや戦略策定を外部のエージェンシーに頼る必要がなくなれば、外部のエージェンシーは不要になる」。

不況下でも消費者はイノベーションに好意的

1月19日の決算報告によると、第1四半期の売上は6%減少しており、ここ数年で最大の落ち込みとなったが、これはインフレ価格によるものと思われる。P&Gの5つの主要事業部門も、この四半期は軒並み売上減。ただし、P&Gの当期の値上げは10%程度にとどまり、為替変動の影響とM&Aの影響を除いた有機的な売上増は5%だった。

2022年は、洗濯用洗剤のタイドをはじめ、生活必需品が一様に値上がりした結果、消費者の買い控えが起こり、四半期の利益と販売高を押し下げる要因となった。シュルテン氏は洗濯用消臭機能付き柔軟剤の「ダウニー・リンス・アンド・リフレッシュ」と食器用洗剤の「ドーンパワーウォッシュ」の成功に言及し、パワーウォッシュのような高価格帯の商品でも、消費者は革新的な新製品にはやはり興味がそそられるようだと話した。

P&Gのジョン・メラーCEOによると、「パワーウォッシュの発売以来、ドーンシリーズは50%の成長を遂げ、カテゴリー成長の90%を牽引してきた」という。「繰り返しになるが、ドーンパワーウォッシュはプレミアム価格帯の商品だ。経済的に厳しい時期に単体ブランドとして発売され、このカテゴリーで三番目に大きなブランドに成長した。米国の消費者が不況下でもイノベーションに対して好意的な反応を示すことの一例であり、P&Gはこれからも革新的な新製品を数多く発売していく予定だ」。

[原文:P&G looks to replicate $65M success after taking media planning, buying in-house in fabric care

Julian Cannon(翻訳:英じゅんこ、編集:島田涼平)

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