Qualcomm、PC向けにArmではない自社開発CPUを投入すると明らかに。5Gbps超のWi-Fi 7のデモも実施

PC Watch

Wi-Fi 7のデモを行なうQualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏

 9月2日よりドイツ共和国ベルリン市にあるベルリン・メッセで開催されているIFA 2022の開幕基調講演に、QualcommのCEO クリスチアーノ・アーモン氏が登壇し、同社のソリューションなどを紹介した。

 この中で同氏は、次世代のPC向け製品として、QualcommがデザインするSoCを用意していることを明らかにし、性能面でリーダーシップを取れる高さを訴えた。

 これは、同社が昨年(2021年)の投資家向け会議で発表したAppleのMシリーズに対抗できるような高性能を実現したと謳う次世代SoCのことで、Qualcomm自社開発のCPUがPCに搭載されることを明らかにした。

 また、アーモン氏はQualcommが開発しているWi-Fi 7(Wi-Fi 6の後継となる次世代Wi-Fi)のデモを行ない、160MHz帯を2つ束ねることで5Gbpsを超える帯域幅を実現できることをアピールした。

次世代PC用SoCはQualcommデザインのCPUを採用。一方ArmはQualcommとNuviaを米国地裁に提訴

Qualcomm CEO クリスチアーノ・アーモン氏

 Qualcommは近年、スマホ向けに開発した技術を、自動車やPCなどに展開する戦略を採っており、まずはスマホ向けに最新の技術を搭載し、そこからしばらくしてからPCや自動車、XRなどのIoTに展開するかたちになっている。

 PC向けの製品も実は例外ではなく、昨年の12月に発表されたスマホ向けSoCとなる「Snapdragon 8 Gen 1」では、Armが開発した最新のクライアント向けIP「Cortex-X2」を採用しているのに対して、同時に発表されたPC向け「Snapdragon 8cx Gen 3」ではArmの1つ前の世代の製品となる「Cortex-X1」がCPUのIPデザインとして採用されている。

 このため、性能に関しては、以下の関連記事でも紹介したように、x86プロセッサ製品などには敵わないという状況が続いている。

 そうした経緯から、Qualcommが昨年の11月に存在を明らかにした「Apple Mシリーズに匹敵できる性能を持つ次世代PC向け製品」に注目が集まっているのだが、今回の基調講演でそのヒントがもう1段階垣間見えたと言える。

Snapdragon 8cx Gen 3をWindows 11向けに提供、来年に向けて搭載製品が増えるとアーモン氏

 アーモン氏は「PC向けの次世代製品として、QualcommがデザインしたカスタムCPUのSoCを用意している。これはPC市場において性能でリーダーになれる製品だ」と述べた。

 次世代のPC向け製品は、Armが提供しているIPライセンスではなく、Qualcommが自社でデザインしたカスタムCPUを採用することを公式に明言したかたちだ。

 Qualcommは2021年1月に、独自にArm CPUのデザインを行なっていたNuviaを買収している。そのため、QualcommがデザインしたArm CPUというのは、Nuviaが開発したCPUだと考えられている。

 もともとNuviaはそのCPUをサーバー市場に投入する計画だったが、Nuviaを買収したQualcommはサーバー製品を持っていなかったことから、それをクライアント向けに活用するのだと考えられてきたからだ。その意味で、アーモン氏の言う自社デザインのCPUの性能はかなり期待できる可能性が高い。

 ただし、そのArmは8月31日(米国時間)に米国デラウェア州の地方裁判所に、QualcommとNuviaがArmのライセンス契約に違反しているとして提訴している。

 内容としては、QualcommがArmに許可なくNuviaのArmライセンスを自社のものとしたとしており、Nuviaに与えられていたライセンスは2022年3月で終了しているため、QualcommとNuviaがArmのライセンスを持っていない状態にあると主張している。

 Armの主張の是非は裁判所が決めることだが、仮にQualcommにとって不利な判決が出た場合、アーモン氏の言う次世代製品に影響が避けられない状況になるため、裁判の行方にも注目が集まるところだ。なお、今回の講演中にアーモン氏はこの件に関しては何もコメントしなかった。

5Gbps超のWi-Fiを実現する「Wi-Fi 7」。HBSマルチリンクを利用して5GHzと6GHzの160MHz2つを束ねる

アーモン氏が行なったWi-Fi 7のデモ

 アーモン氏は講演の中で、同社が2月に行なわれたMWCで発表したWi-Fi 7コントローラ(Qualcomm FastConnect 7800 Wi-Fi 7)のデモも行なった。

 このデモは、HBS(High Band Simulteneous)マルチリンクと呼ばれる320Hzの帯域を束ねるWi-Fi 7のもので、5GHzの160Hz、6GHzの160Hzという2つの帯域をCA(キャリアアグリゲーション)して320MHz帯として利用した。

 Qualcommによれば、5Gbpsを超える速度をWi-Fi 7だけで実現できるとし、今回このデモは初めて公共の場で行なわれたという。

Source

コメント

タイトルとURLをコピーしました