韓国大統領選挙

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ウクライナ問題が主要メディアのヘッドラインを占拠しているため、数々の注目すべきその他ニュースを見落としがちです。ウクライナの状況も重要ですが、国内外共、様々なことが他にも起きている中でバランス感覚を持った情報収集を心がけることは重要ですね。

さて、韓国の大統領選が3月9日に迫り、4日からは期日前投票が始まるというこのタイミングで野党候補の尹錫悦(ユン ソクユル、国民の力)が第三勢力とされた安哲秀(アン チョルス 国民の党)との間で尹候補一本化で話がまとまりまりました。今回の選挙で何度となく噂された野党候補一本化ですが、投票が始まる直前のこの時期に決めたというのは政略という打算の産物なのかもしれません。

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これにより実質的に与党候補、李在明(イジェミョン 共に民主党)氏と尹氏の一騎打ちの構図となりました。候補一本化直前の3月2日発表のメディアリサーチによる世論調査では李氏45.0%、尹氏44.9%と出ており、その差が0.1%とほとんど並んでいます。野党としては候補一本化で勝負をつけたいということなのでしょう。

この世論調査は6社ぐらいで同時に行っており、リアルメーターの3月3日版は尹氏45.1%、李氏40.6%と最大格差です。調査機関によるばらつきがありますが「誤差の範囲内」という点では事前予想しにくいものでした。ここで一本化により安氏の支持率約5-7%がどう流れるかですが、尹氏に全部流れることはなく、私は6-7割程度だろうと推測しています。それでも尹氏が接戦を制する公算は高くなりました。

では尹氏が当選した場合のシナリオです。まず、尹氏も最近はやりの「政治家経験なし」です。トランプ氏、ウクライナのゼレンスキー氏らが話題の政治経験なしトップですが、今の時代、それを要件としなくなっている点は新しい流れだと思います。むしろ日本も見習わなくてはいけないかもしれません。

次に尹氏の明白なポイントは北朝鮮政策が文大統領とは一線を画すこと、中国に向けたTHAADをもっと装備すること、米韓関係を強化すること、日韓関係は改善の機運ができることが外交的な展開になるとみています。経済政策、国内政策については李氏、尹氏ともにこれといった話題がでてきておらず、両候補同士のネガティブキャンペーンに終始してしまいました。韓国系メディアは今回の選挙戦は質が低く、今までで最低と伝えるところもあります。

日本にとっては尹氏の方が与しやすいのですが、あくまでも比較論で実際に大統領になってからどのような個別政策を出してくるかはふたを開けてみないとわかりません。ただ、バイデン大統領が日本に来日した後、韓国に立ち寄り新大統領との会談が予定されており、米韓の関係強化を再確認するとともに日米韓の連携を進めることを後押しすることが予想されます。

よってあくまでも先方の出方次第ですが、山積したまま一歩も動かない日韓の各種問題について日本側も交渉のテーブルに着く準備はした方がよいのだろうと考えています。

これは個人的な感覚論ですが、尹氏は非常に強い性格でリーダーシップを取りながらも自分に敵対する者を排除するタイプです。ある意味、安倍氏に似ているところが見て取れます。よって尹氏のリーダーシップが国内外で強く発揮できた場合、不満が鬱積している韓国内ムードが一気に反転し、日本の2013年のような事態になることも想定した方がよいとみています。

特に経済についてはサムスンが半導体で引き続き絶好調であるほか、自動車の現代グループ(ヒュンデ)が私は侮れないと思っています。電気自動車についてもいち早くEV専用のシャシーを作るなど非常に積極的で、GMと組むLGのバッテリー開発も含め自動車産業で明らかに強い攻めに転じるとみています。私はこの数年、韓国の自動車のデザインが大変あか抜けてたと思っており、消費者にブランドネームを隠した目隠しテストがあり得るなら日本は負けると思っています。カナダは韓国車が歴史的に非常に多い国ですが、街中での存在感という点では相当目を引いているのが事実です。

日本は韓国と疎遠を貫いていますが、私はゲームチェンジが起きる可能性は否定していません。数々の停滞する交渉の多くは日本側が譲歩する余地が全くない正論そのものですが、交渉をする気なら何かで花を持たせる交渉上手さも見せたいところです。

徴用工や慰安婦問題は問題の本質が明らかに賞味期限切れであり、今後、あれを新たに持ち出しても「それしかカードがないのか?」という墓穴を掘ることになるでしょう。その点からも尹候補が勝利するならばいみじくも安倍氏がかつて言った未来志向の日韓関係構築にフォーカスすべきかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年3月4日の記事より転載させていただきました。

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