Amazonアグリゲーター「急成長の時期が終了」:Amazon以外のチャネルでのブランドの成長を支援

DIGIDAY

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Amazonアグリゲーターは、この分野全体にわたる成長鈍化に対処するため、協力するブランドをより厳選するとともに、世界最大のeコマース企業であるAmazon以外のマーケットプレイスとの連携を作り上げはじめている。

アグリゲーターの市場は、パンデミックのあいだに急速に成長した。マーケットプレイスパルス(Marketplace Pulse)のデータによると、これらの持ち株会社は2020年以降、150億ドル(約2兆円)以上の資金を集めてきた。しかし、今年になって記録的なインフレと潜在的な景気後退によって消費者からの需要が軟化したのを受け、アグリゲーターは、困難状況に備え、社員の削減と整理に焦点を移すようになってきた。

Amazon以外での販売チャネル開拓を支援

ブラックラベルアドバイザー(Black Label Advisor)の創設者でCEOを務めるジョン・エルダー氏は「アグリゲーターは、協力するAmazonブランドの種類をより厳選するようになってきた」と述べている。「ブランドの急速な買収から、すでに保有しているブランドへの注力、社内スタッフによる自社商品ラインの拡大へと、注目が移行してきた」と、同氏は付け加えている。同氏はAmazonのサードパーティー出品者向けのコンサルタントで、クライアントがマーケットプレイスからのエグジットを検討するとき、ヒーローズ(Heroes)、フォーラム(Forum)、ベニタゴ(Benitago)、セラシオ(Thrasio)などのアグリゲーターと協力できるように指導している。

エルダー氏は、これらの企業の多くはこれまで、AmazonとAmazonのフルフィルメントサービスにのみ依存するブランドを買収してきたという。しかし現在のアグリゲーターは、「Amazon以外にも多様な収益源を求めている。そのブランドは、Shopify(ショッピファイ)やウォルマート(Walmart)などのプラットフォームでも堅調に売り上げていることが期待される。FBA(フルフィルメント by Amazon)のみに頼ったビジネスは、もう高い倍率を引き出すことができない」と同氏は述べる。

アグリゲーター企業であるのひとつであるフォーラムブランズ(Forum Brands)は、同社の戦略は、販売チャネルの多様化を重視していると語る。共同創設者で共同CEOを務めるブレントン・ハウランド氏は、「当社はほかのマーケットプレイス全体にわたって意識的に後押しを行い、最終的にD2Cのプレゼンス、および顧客との直接接触ポイントをより増やせるようにし、さらに実店舗が有意義な状況なら、実店舗への拡大を行えるようにしている」と、米モダンリテールのインタビューで語った。

ハウランド氏は、同社がターゲット(Target)のeコマースマーケットプレイス(ターゲットプラス[Target+またはTarget Plus]と呼ばれている)との提携を「発表したばかり」だという。「このパートナーシップは、より厳選された品を揃えるということで、多少異なっている。このため出品者の数も少なく、戦略も多少異なる」と、同氏は述べている。さらにフォーラムブランズは、ウォルマートのマーケットプレイスでの販売も開始した。

「需要の空白部分を見つける」

犬用リードのブランドであるリーシュボス(Leashboss)が、「フォーラムブランズで販売および配送する」商品のリストは、ターゲットのウェブサイトでリアルタイムで参照できる。同社が獲得したブランドには、ペット用商品小売のボンザ(Bonza)や、エコフレンドリーなベビー用品企業のシムカローズ(Simka Rose)などがある。

アグリゲーターは、このようなAmazonの枠を超えた拡大により、より多くの収益を得るとともに、リスクを軽減することをめざしていると、専門家たちは合意している。「当社にとって、Amazonは長いあいだ、単なる入り口でしかなかった。Amazonは消費者向け経済でもっとも豊富なデータを持ち、もっとも動的なクリエイターや起業家の集まりで、非常に優れたビジネスを作り上げたが、それでも小売の合計売上高の一部でしかない」とハウランド氏は述べている。

実際のところ、Amazonは米国におけるオンライン市場の39.5%のシェアを占めている。ハウランド氏によれば、これは、「需要の空白部分を見つけ、消費者に対応し、当社がごく健全なビジネスモデルとブランドを生み出せるような機会がほかにも多く存在する」ことを意味している。

「需要が軟化するにつれて、Amazonマーケットプレイスの四方を囲む壁の外側にも多くの市場が存在するということを、当社は認識するようになった」と、同氏は付け加えている。

アグリゲーターは、これらのチャネルを構築するため「出品者が大変な作業を行う」ことに依存し、その後、アグリゲーターがそれを次の段階に進めると、エルダー氏は言う。「これは、アグリゲーターにとって非常に賢い選択だ。しかし、買収の可能性があるブランドの数はこれによって減少する」と同氏は付け加えている。

無数の取引が保留に

6月に開かれたフォルティアグループ(Fortia Group)のアグリゲーター向けイベントで紹介されたデータは、アグリゲーターの評価額が平均で30%以上も低下していることを示していた。フォルティアグループが35社の買い手企業を調査した結果では、アグリゲーターの30%が今年の第2四半期の取引フローのペースが第1四半期と比べて10%減少したと回答したことが示されている。

グラフ出典:2022年6月に開催されたフォルティアのウェビナー(*画像クリックで拡大)

「世界的な不確実性と景気後退の拡大への懸念から、全体として、無数の取引が保留になってきた」と、ブラックラベルアドバイザーのエルダー氏は述べている。

フォーラムブランズのハウランド氏は、今年はブランドの買収を中止していないが、昨年の同時期と比べて、価格が約20〜30%低下すると予測しているという。同社は、報告された年間売上高が500万ドル(約6億6500万円)から1500万ドル(約20億円)の出品者との取引を求めている。同社の従業員は90人ほどだが、今年後半にはパーソナルケアカテゴリーをより深く掘り下げてブランドを獲得するために、一致団結して作業を進めると語る。

「当社は過去18カ月に締結した取引において、極めて節度を守った価格を維持してきた。その結果、当社は現在、市場全体が存在した時期と同じくらい魅力的なアセットへの投資に傾注できる、非常に優位な立場になった。過去には使用できなかったような方法が現在では使用可能になっている」とハウランド氏は述べている。

急成長の時期は終了した

アグリゲーターの注目が完全に最大手ブランドに移行したのは最近になってからだと、エルダー氏は語る。「以前は、アグリゲーターは潜在的な可能性を持つブランドを求めていたが、業界全体にわたってすでに大きな業績を挙げているブランド追い求める方向にシフトした」と、同氏は付け加えている。

マーケットプレイスパルスによれば、業界が得られた教訓や失敗をもとに再調整を行っているあいだも、ブランドの獲得は行われている。「ある企業は買収を一時停止し、ある企業は市場が不安定ななかで、買収を加速させた。また、資産だけを購入するのではなく、創業者やそのチームを残すことを考える企業もある」と、同社が6月に投稿したブログに記されている。

エルダー氏は、アグリゲーターが「AmazonとShopifyの収益が75対25の割合のビジネスを買うこと」しか求めていないと語る。「そのようなブランドがエグジットを行うには、Amazonの外にも強力なプレゼンスがあり、強力なメールのリストがあり、ソーシャルメディアでフォロワーが激増していることが必要だ」と同氏は述べている。

しかし依然として、アグリゲーターが今年採用しているもっとも一般的なコスト削減戦略は、社員の削減と整理だ。セラシオは5月、成長の鈍化を受け、マーケティング、クリエイティブ、ブランド運用チームで勤務している自社の社員の約20%をレイオフすると語った。

「急成長の時期が終了し、アグリゲーターは社員の数が多すぎる問題に気づき、契約が枯渇した状況において社員の削減を余儀なくされている。なかにはブランド獲得チーム全体を切り捨てた大手アグリゲーターもいる。世界的に景気が冷え込むなかで、さらに社員の削減が進むことが予測される」とエルダー氏は述べている。

フォーラムブランズのハウランド氏は、同氏の最優先事項のひとつが、「ここから利益ある成長のために投資すること」だと述べている。

[原文:Amazon Briefing: Aggregators search for growth in other marketplaces with a selective deal strategy]

著者:Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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